埼玉西武ライオンズの育成出身・佐藤爽投手(23=星槎道都大)が、プロ野球界に大きな衝撃を与える勝利を飾った。ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦で、支配下登録からわずか1日後のプロ初登板初先発ながら7回9奪三振無失点の快投。育成ドラフト入団の選手として球団史上初となる初登板初勝利を挙げた。150キロ台の剛速球が主流となった令和のスカウティング戦線において、制球力を求めた西武フロントによる1勝とも言える。
「コントロールは後からつかない」、広池本部長が語る逆転の発想
昨今のドラフト戦線では、150キロを超える出力を持つ素材が最優先される傾向にある。しかし、埼玉西武のフロントは2024年のドラフト会議で、佐藤爽投手の指名を巡って議論を交わしてきた。広池浩司球団本部長は、その指名に至る思想の転換について、「昔はよく、コントロールは投げ込めばついてくると言われましたが、実はもともとコントロールがあった方がいいよね、後からつきづらいよねと、私たちは考え直しました。」(日刊スポーツ)と話した。
以前はブルペンでの投げ込みが練習の主流で、それにとって制球力を向上させる投手も少なくなかった。しかし現在は、高い出力が必須という状況の中で、肩や肘の消耗を考慮されている。逆に球速はトレーニングで上げることができ、高校、大学、社会人でも150キロ前後の球を見るようになってきている。
打者の手元で狂わない繊細な感覚は天性、あるいは幼少期からの積み重ねによるもの。西武は、現在の投手のトレーニング法だからこそ、この「後天的に獲得困難な技術」を持った選手を獲得する方針で、育成4位という下位指名ながら、他球団が球速の物足りなさで見送った佐藤投手を獲得した。
スカウトが惚れた「無駄のないフォーム」
この指名を現場で主導したのは、担当の水沢英樹スカウト(現国際・育成コーディネーター)だ。星槎道都大時代の佐藤投手は、140キロ前半の直球を軸にするタイプであり、ドラフト候補として大きく取り上げるような投手ではなかった。しかし、水沢スカウトは「今の主流のタイプじゃない。でもムダのないフォームから制球が抜群。これだけで十分でした(日刊スポーツ)。」と話すように、フォームの良さと制球力の高さを評価した。
出力重視の2024年において、水沢スカウトは「負けない投手」の条件としてフォームの再現性を重視した。指名がなければ父親の仕事を手伝う決意を固めていた佐藤投手にとって、この制球力を評価した西武の眼力が、プロへの扉をこじ開けた。昨季、2軍で4勝、防御率2.05という圧倒的な安定感を残したことは、スカウティングの正しさを早々に証明していた。
19mの強風でプロ初勝利、プロ野球とドラフト会議に新風を吹かせる
この日のマウンドで佐藤投手は、まさにフロントが期待した投球を披露した。初回1死一塁、強風により制球が乱れやすい状況下で、低めに集めて併殺打に仕留める。直球は140キロ前後にとどまりながらも、風の影響で不規則に変化するチェンジアップを自在に操り、2回と7回には三者連続三振。102球の投球は、球速に頼らずとも打者を制圧できることを雄弁に物語った。
佐藤爽投手も「マウンドさばきも、制球力もいい場面があった。強風を利用できた。出来過ぎかなと思います。継続していきたい。」と話す。憧れた石川雅規投手(ヤクルト)のように、高い制球力を武器に打者との駆け引きを楽しむ事、それを磨いていくことで、将来に向けても投げる度に経験という貯蓄ができる。
今の時代だからこそ、制球力を評価する。プロ野球もMLBも、その時代のトレンドがあり、ドラフト会議での指名にもそれが影響する。150キロ時代のドラフト会議において、また新たな風を佐藤投手が巻き起こすのではないか、この日のZOZOマリンの強い風を見てそう思えた。
【佐藤 爽】 プロフィール
- 氏名: 佐藤爽(さとう・そう)
- 所属: 埼玉西武ライオンズ(2年目)
- 出身: 北海道(札幌山の手高-星槎道都大卒)
- ポジション: 投手
- 投打: 左投左打
- 身長・体重: 178cm、82kg
- 主な特徴や実績: 2024年育成ドラフト4位。2026年4月30日に支配下登録。翌日のロッテ戦でプロ初登板初先発初勝利(球団史上初)。「コントロールは後からつきづらい」という球団方針のもと指名された。卓越した制球力と強風を味方にする高い修正能力が武器。








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