第98回選抜高校野球大会では、春夏合わせて全国最多更新となる12度目の甲子園制覇を狙う名門・中京大中京(愛知)が出場する。チームの主将で4番の荻田翔惺選手(3年)は、昨秋の公式戦15試合でチーム最多の14打点を叩き出し、5年ぶりの明治神宮大会とセンバツ出場をバットで手繰り寄せた大黒柱で、元中日の名手・荒木雅博さんから授かった「宿題」を胸に、憧れの聖地の打席へと向かう。
1年生でのベンチ入りから「不動の4番」へ、挫折を乗り越えた進化
荻田翔惺選手が甲子園の土を踏むのは、1年生だった2024年の夏以来、3季ぶりのこととなる。当時は唯一の下級生としてベンチ入りを果たしたが、出場機会はなく、「自分はベンチから見ていただけ。やっぱり打席に入ってみたい気持ちはあった(中日スポーツ)。」と、悔しさを滲ませていた。その後、新チームでは中軸を任されるようになったが、2年春から夏にかけては極度の打撃不振に陥り、スタメンを外れるという苦い経験も味わった。
その転機となったのが、昨年12月まで中京大中京の臨時コーチを務めていた元中日の荒木雅博さんによるマンツーマン指導だった。荻田選手は、特に打席でのタイミングの取り方に苦戦していたが、荒木さんから伝授されたスポンジボールを使った特訓によってその壁を克服した。夏休み期間中、毎朝欠かさず自主練習に励んだ成果は、秋の公式戦での勝負強さとなって現れた。主将として、そして4番として、苦しい時期を乗り越えたからこそ手に入れた「揺るぎない自信」が、今の荻田選手の背中には漂っている。
荒木雅博さんからの宿題は「甲子園でホームラン2本」
今年1月、中日球団の本部長補佐に就任するためにチームを離れた荒木雅博さんは、教え子である荻田選手に「ホームラン2本打ってこい」と、甲子園で2本塁打を放つようにと残した。荻田選手は、「それくらい、いったる。という気持ちで甲子園に臨みたい(中日スポーツ)。」と笑みを浮かべた。
言葉だけではない。昨秋には84キロだった体重を、冬の徹底したトレーニングと食事によって93キロまで増やし、パワーアップに成功した。身長180センチの恵まれた体格に、厚みを増した肉体が加わり、スイングの鋭さは一段と増している。中京大中京という名門の4番としての重圧を、荒木さんからの激励を力に変えて跳ね除けようとしている。三重県度会町出身の17歳が、名古屋で磨き上げたそのスイングで、甲子園の夜空に白球を叩き込む準備は整った。
旧友との再会、横浜高・小野舜友選手と競う「春の日本一」
荻田選手にとって、今大会は特別な再会の舞台でもある。中学時代の東海中央ボーイズで全国制覇を共に成し遂げたチームメイトたちが、今や全国の強豪校で活躍している。特に、今大会に出場する横浜高(神奈川)の主将を務める小野舜友選手(3年)は、かつての戦友だ。昨春のセンバツ決勝では、荻田選手の中学時代の仲間3人が横浜高と智弁和歌山に分かれて出場しており、その活躍を荻田選手は刺激として受け取ってきた。かつてのライバルたちと甲子園という最高のステージで相まみえ、その頂点に立つ。それが主将として掲げる最大の目標だ。
全国最多12度目の制覇へ、伝統のユニフォームで挑む「春に咲く」物語
中京大中京の歴史は、そのまま高校野球の歴史にもなる。昨秋は愛知大会、そして東海大会を制し、明治神宮大会を経験した。しかし、明治神宮大会では思うような戦い方ができずに、0−7と大敗を喫して初戦で姿を消した。全国の舞台で強く弾き返されたチームが、春にどんなチームへと変わっているか注目したい。
【荻田 翔惺】 プロフィール
- 氏名: 荻田翔惺(おぎた・しょうせい)
- 所属: 中京大中京高校(3年)
- 出身: 三重県(度会中・愛知東海中央ボーイズ出身)
- ポジション: 外野手
- 投打: 右投右打
- 身長・体重: 180cm、93kg
- 主な特徴や実績: 名門・中京大中京の主将で4番。昨秋の公式戦で14打点を挙げ、チームを5年ぶりのセンバツへ導いた。元中日の荒木雅博氏から指導を受け、打撃が飛躍的に進化。高校通算10本塁打を誇る、新3年生の右の強打者。








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