2020年の北海道日本ハムのドラフト戦略を分析します。
北海道日本ハムのドラフト指名の特徴と傾向
〇タイプ:その年のNO.1選手、育成だが即戦力型
〇監督:野手出身、対応型
〇決定者:吉村浩GM
〇補強ポイント:エース、リリーフ投手、核心的内野手、外野手
北海道日本ハムの指名の特徴
北海道日本ハムはその年のNO.1の選手を指名する。ドラフト1位でダルビッシュ有投手、中田翔選手、大谷翔平選手や有原航平投手、清宮幸太郎選手などを獲得し、その選手をしっかりと結果を残すように育て、その選手を中心としたチーム作りをしてきた。しかし、その戦力を保ったまま連覇をしていくのではなく、育った選手はメジャーやFAで放出をする。そのため、優勝争いをする2,3年と、4位前後になる年と成績の波があるが、若い選手が再び芽を出し成長することで、チームの活性化を図っている。
チームは高校生の指名も多く育成型と言えるが、吉村GMは高校生でもファームで長い期間いる選手より、2年目には成績を残す選手が1軍で活躍するという分析をしており、「2年目にはファームで主力になると判断できる選手」を獲得している。ただし高校生の指名が目立つものの、ポイントで即戦力投手をはさみ、高校生出身で育った選手と即戦力選手のバランスが良く、リーグ戦でも結果を残していた。
また、もう一つの特徴として、ファームで選手が全選手が試合機会を得られることを重要と考えており、球団の保有人数を65人前後にして、育成選手をほとんどとらない時期が続いた。
ただし、2018年のドラフトではやや変化が見られた。持っている素質は十分だがやや育てるには時間がかかりそうな選手の指名もあった。そして球団として初めて育成ドラフトに参加し、海老原一佳選手を獲得した。プロのイースタンリングも100試合以上あり、保有人数が少ない中で、主力が故障してファームにいる状態だと、実際にファームの試合でプレーできる選手が少なくなり、このことに吉村GMも頭を痛めていた。
そして2019年のドラフトではさらに変化が起きる。佐々木朗希投手の指名はこれまでの方針通りだが、河野竜生投手、立野和明投手の社会人投手を1,2位で指名し、その後も鈴木健矢投手、望月大希投手と即戦力投手の指名を続け。日本ハムのドラフトでは無いような印象を与えた。これは2015年から2018年にかけて、特に即戦力として期待をした投手が伸び悩み、2019年シーズンにチームは先発投手不足に陥ってリーグ5位に沈んだ。シーズン終了後に吉村GMは「栗山監督に申し訳ない」とチームバランスが悪くなったことを謝罪しており、それを反映する形で即戦力投手を一気に補強するという大胆なものだった。
そして育成枠では3人を指名した。日本ハムはファームで社会人や大学などアマチュアとの試合も多くなっており、他球団も3軍制をとるチームがあるが、アマチュアや独立リーグと試合をして、試合の機会を確保していることを鑑み、保有人数を他球団並みに増やしてきている。吉村イズムも少しずつ変化をしてきている。
2020年は2019年のようにチームの状況によって即戦力を、という事はなさそうで、基本的はこれまでのように2年以内で出てきそうな高校生を中心に、即戦力を織り交ぜた形に戻るのではないかと思われる。
フロント・監督のビジョン
栗山監督は2020年で監督として9年目となる。チームの保有人数が少ない中で、若い選手をうまく起用しながら、中心となる選手を育ててきた、そしてその選手を中心に、投手中心、野手中心と柔軟にチーム作りをしてきた。これまでも大谷翔平投手がメジャーへ移籍し、糸井選手の放出、小谷野選手、大野捕手、陽選手、増井投手など主力クラスが移籍する中で、ガタガタにならずに多くの選手を巧みに起用し、大谷選手が抜けた2018年も3位に踏みとどまるなど力を見せていた。
外野手出身だが基本的には広い札幌ドームという事もあり、投手力を中心としたチーム作りを目指してきた。新球場のサイズなどがまだ分からず、それによってスタイルも変わってくるかもしれない。2019年は金子選手を獲得し、投手陣に厚みを増してシーズンに臨んだ。しかし、中田選手とともに主軸を形成する選手が、外国人、若手で出てこなかった。結果が出ているのは中田選手やレアード選手といった主軸が活躍しており、まずはこの打撃陣の不振が大きかった。そして投手については期待された上沢投手がケガで離脱するなど苦しく、シーズン終盤には先発陣の層の薄さを露呈した。
選手個々の成績を見るとそれほど悪くない状況だったものの、ドラフト会議でのくじ運がやや失われ、大谷翔平のようなチームの中心が作れず、その選手を中心に盛り上がっていこうという雰囲気が見られなかった。またこれまで、稲葉、金子、田中とベテランがチームを支えてきた所があるが、引退も続いて、肝心のところでチームを踏み止める選手が少なくなってきている。
球団のビジョンは前述のとおりだが、育成枠や保有人数を70人ギリギリまで増やすなど変化を見せ始めてから3年目のシーズンとなる。そして、西川、近藤、有原といった主力がFA権を取得し、有原投手はメジャー挑戦を表明している。これまでならば積極的に選手を放出し若手を起用していったが、その方針に変化はあるのか、そしてその結果が問われる年となる。
栗山監督は昨年、辞意を表している。今年は結果を出せない時には辞任するという意思は固いだろう。そして今年にかける思いは吉村GMも同様だ。
チーム状況
2019年の戦力と将来予想(投手)
2019年 | 5年後予想 | |
---|---|---|
先発 | 有原航平(27)15勝8敗 金子弌大(36) 8勝7敗 加藤貴之(27) 5勝7敗 上沢直之(26) 5勝3敗 杉浦稔大(27) 4勝4敗 上原健太(22) 1勝3敗 | 河野竜生(26) 加藤貴之(32) 上沢直之(31) 北浦竜次(25) 田中瑛斗(25) 吉田輝星(24) 立野和明(26) |
中継ぎ | 玉井大翔(27)65試合13HP 宮西尚生(34)55試合44HP 石川直也(23)60試合24HP 公文克彦(27)61試合19HP 堀 瑞輝(21)53試合 9HP | 玉井大翔(32) 公文克彦(32) 鈴木健矢(27) 堀 瑞輝(26) 杉浦稔大(32) |
抑え | 秋吉 亮(30)53試合25S | 石川直也(28) |
2軍 (3年目まで) | 北浦竜次(20)88.0回 田中瑛斗(20)84.2回 吉田侑樹(27)80.0回 福田 俊(23)68.0回 生田目翼(24)65.0回 吉田輝星(19)62.0回 柿木 蓮(19)43.2回 | - |
先発は有原投手、上沢投手に金子投手も加入し、有原投手は抜群の結果、金子投手も期待くらいの成績を残した。好調だった上沢選手のケガは残念だったが、年齢も力も悪くない投手陣にはなっている。ただし、有原投手がメジャー挑戦を意識しており、次のエース候補という存在が見えていない。
ただし、布石は打っている。ファームで北浦投手、田中投手、吉田投手が80イニングを投げており、次世代の先発として育てている。この3投手と今年から加わる河野投手、立野投手で、5年後に25歳前後の投手陣の形は見え始めた。あとは、大谷投手、有原投手のような「エース」の獲得が待ち望まれる。
リリーフは増井投手の移籍などもあり手薄な状態が続いた。井口投手、高良投手、西村投手、生田目投手と即戦力を期待した投手が思うような成績を残せない状況が続き、ベテランと他球団から獲得した選手で埋めようとしたものの、埋め切ることはできなかった。若い石川投手、堀投手などが力をつけており、鈴木健矢投手の指名など手を付けており、吉田投手など球威のある投手をリリーフに転向させる可能性もあるが、様々なタイプのリリーフ投手の獲得をしたい。1,2選手は指名が必要だろう。
2019年の戦力と将来予想(野手)
守備 | 2019年 | 5年後予想 |
---|---|---|
捕手 | 清水優心(23) 98試合、打率.259 | 清水優心(23) |
一塁手 | 中田 翔(30)124試合、打率.242、24本 | 清宮幸太郎(25) |
二塁手 | 渡邉 諒(24)132試合、打率.262、11本 | 渡邉 諒(29) |
三塁手 | 横尾俊建(26) 78試合、打率.188 | 野村佑希(24) |
遊撃手 | 中島卓也(28)120試合、打率.220 | 難波侑平(25) |
外野手 | 西川遥輝(27)142試合、打率.288 近藤健介(26)138試合、打率.302 大田泰示(29)132試合、打率.289、20本 | 近藤健介(31) 大田泰示(34) 万波中正(24) |
2軍・捕手 | 郡 拓也(21) 73試合、打率.252 | 【予想打順】 1西川 2難波 3近藤 4清宮 5太田 6野村 7万波 8清水 9渡邉 |
2軍・内野手 | 難波侑平(20)105試合、打率.158 今井順之助(21)89試合、打率.256、10本 野村佑希(19) 75試合、打率.245、5本 高濱祐仁(23) 59試合、打率.220、4本 | |
2軍・外野手 | 姫野優也(22) 98試合、打率.222 万波中正(19) 90試合、打率.238、14本 |
捕手は清水選手、郡選手と若手に良い選手がいる。育つのに時間がかかり、育てる際にチームにも多少の犠牲が必要なポジションだったりするが、とにかく経験を積ませたい。そして同じ世代に梅林選手、その下に田宮選手を補強し、捕手の育成期となっている。この競争に決め手がみられない時は、大野選手の1位指名の様に上位で即戦力と見る捕手の指名があるかもしれない。
中田選手はチームの中心であることは変わりないが、ポジションで清宮選手との起用で首脳が頭を悩ます所がある。清宮選手は手術を受けたが早い段階で受けたので今季の早いうちに復帰できそう。万全であれば20本は打てるのは間違いない。左右の大砲にもう一人いるとよい。レアード選手のような存在が必要だが、サードの横尾選手は昨年の成績は厳しい。野村選手の将来に託すものの、サードの長打を打てる選手は欲しい。
二遊間は渡辺選手は結果を残した。ベテランになる中島選手はやや物足りなさがある。そのポジションを平沼選手や難波選手が争うが、2018年にドラフト1位で根尾選手を指名し、昨年ドラフトで上野選手を補強しており、まだ次期主力と認められた存在はいない状態。高校卒選手を叩き上げて育ててきているが、セカンドも含めてこの辺で可能性のある選手で、即戦力で核心的な選手、できれば石井選手以上に活躍が期待できる選手を獲得したい。
外野手は現在の西川、近藤、大田の3人は12球団を見ても高い位置にある。しかし、近藤選手は現時点でFAの考えがないことを話すが、西川選手はメジャー挑戦の希望を話すなど、移籍の可能性は低くない。また大田選手もドラフト時から野心の強い所がありそうで、糸井選手の様な事もあるかもしれない。
その中で万波選手の成長は期待でき、外野の一角に入ってきそう、糸井選手や陽選手のような活躍が期待できる。能力の高い浅間選手、清宮選手の外野起用もあるが、ファームを見てもその後に続く選手が非常に少ない。片岡奨人選手、宮田輝星選手を補強したことでそれがうかがえるが、まだまだ少ない。
2020年のドラフト指名候補は?
2020年の補強ポイント
投手 | 捕手 | 内野手 | 外野手 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | ||
チーム・監督の方針から | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
2020年戦力から | △ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | △ |
将来のチームから | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
2019年の指名選手から | △ | ○ | ○ | △ | ◎ | ◎ | △ |
投手の数は少なくないので、投手で欲しいのはズバリ「エース」と「リリーフ」。先発ならば1位で指名する投手だけ、それ以外は球速がありリリーフに特化した選手の指名となりそう。
内野手は1位か2位で指名できる選手で、活躍の可能性が非常に高い選手を獲得したい。外野手は若い世代がいない。高校生を中心に可能性のある選手を2人ほど獲得したい。
1位、2位指名予想
1位 | 2位 | |
パターン1 | 佐藤輝明 近畿大 | 小郷賢人 東海大 森博人 日体大 |
パターン2 | 伊藤大海 苫小牧駒大 | 牧秀悟 中央大 |
パターン3 | 来田涼斗 明石商 | 木澤尚文 慶応大 |
パターン4 | 中森俊介 明石商 | 五十幡亮汰 中央大 古川裕大 上武大 |
パターン1は強打のサードを狙った形で、佐藤選手は今年のドラフトで最も良い選手となる可能性の高い選手。2位では球速のあるリリーフ投手を狙う。
パターン2はリリーフエースで地元・北海道の選手を優先した形。2位では難しいかもしれないが、牧選手は二遊間の核心的な選手で、ポジションをしっかり固められる。
パターン3は外野手を優先、足も勢いもある来田選手は中田、清宮とは守備も打撃もタイプが違う。ポスト西川として1番となり、核弾頭の活躍も期待できる。2位はリリーフ陣の中で慶応の木沢投手を選んだ。
パターン4はあくまでエースを望んだ場合、東海大の山崎伊織投手もいるが、高校生を選択した。2位ではポスト西川で足とセンターの守備で広い球場で威力を発揮する五十幡選手を指名、または今年のシーズンで捕手に物足りなさが見られた場合は上武大の古川選手を獲得してきそうだ。
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