全日本大学野球選手権の2回戦が神宮球場で行われ、関西六大学野球連盟代表の大商大が7対0の7回コールドで東日本国際大(南東北)を下し、3年ぶりとなるベスト8進出を決めた。この試合では、今秋のドラフト注目左腕のエース・星野世那投手(4年)が先発マウンドに上がると、中1日というスケジュールを感じさせない熱投で7回1安打無失点とコールド完封。打線ではプロ注目の右の大砲・春山陽登外野手(4年)が5回裏に特大の左越え2ラン本塁打を放つなど、投打の軸ががっちりと噛み合う力強い戦いぶりで大勝を飾った。
独自の「温めるケア」が3日間203球の粘投を支える、星野世那投手の1安打完封劇
先発マウンドを任されたエース・星野世那投手は、「序盤はちょっと浮足立った」(日刊スポーツ)と振り返る通り、2回までに4つの四球を与えるなど立ち上がりこそ制球に苦しんだ。しかし投げている球は1回戦よりも素晴らしく、3回表に2死一、二塁の場面を三振で切り抜けてからは本来の調子を取り戻すと、4回以降は一人の走者も許さない完璧な投球を披露。自慢の快速球と打者のタイミングを巧みに外すチェンジアップを武器に、わずか1安打、6奪三振に抑え込んで試合を作り上げた。
2日前の1回戦での登板を振り返り、「先制を許す形で、劣勢な形の試合を作ってしまった」(サンケイスポーツ)と反省を口にしていたが、「今日は必ず点は与えないと思いながら投げたので。結果ゼロになったので良かった」(サンケイスポーツ)と、見事なコールド完封劇に安堵の表情を見せた。
3日間で計203球を投げきった星野投手だが、疲労回復に一般的な「冷やすケア」とは真逆を行く独自の疲労回復法があった。試合後に肩や肘を冷やすピッチャーが多い中、アイシングを一切行わず、「自分はアイシングじゃなくて『温める方』をしていて。冷やすのは一瞬の炎症とかは抑えてくれるけど、自分は結構カイロを貼ったり、お風呂でしっかり熱いお湯につかったり。寝る時にカイロを貼って温めると血流が良くなるので、そっちの方が疲労の回復になると思ってます」(日刊スポーツ)と話した。
1年ほど前にその方法を教わり、実際に試したところ、「朝起きるとすごく体が軽くなっているというか、肩やひじの疲労感が全然違った。それからは毎日続けてます」(日刊スポーツ)と絶大な効果を実感。今大会の期間中も使い捨てカイロを箱買いしてバッグの中に常備しており、温熱によるセルフケアがマウンドでの快投を力強く支えていた。
近江高時代の同学年には、昨秋に高卒でプロ入りを果たした西武の山田陽翔投手がいる。偉大な同期と同じ舞台を志す星野投手は、「大学野球をしっかりやり切ってプロの世界に挑戦したい」と話し、頂点を目指す戦いの中でプロのスカウト陣に向けて自らの価値を強烈に証明してみせた。
巨人・榑松伸介スカウトディレクター:「力感なく投げている。真っすぐは元々素晴らしいが、加えて今日(10日)はチェンジアップ、スライダーといった変化球が切れている」
ロッテ・三家和真スカウト:「単純にボールが強いし手元が強いので、良い真っすぐを投げている。あとはチェンジアップが結構うまく扱えている」
とプロのスカウトもこの日の投球を高く評価した。
神宮のフェン直を越えた「30センチ」のリベンジ、春山陽登選手が特大弾
星野投手の好投に、大商大打線は初回から応えた。1回裏、2死二塁の好機で「4番・指名打者」を務める真鍋慧選手(3年)がライト前へ先制のタイムリー安打を放ち、幸先よく先制に成功。東日本国際大の先発左腕・岡本琉奨投手(2年)の立ち上がりを攻略した。
そして、1対0の接戦が続く中で迎えた5回裏、2死一塁の場面で打席に入ったのは、今秋のドラフト注目野手である3番の春山陽登選手だった。春山選手は、甘く入った初球の143キロ直球を一閃。凄まじいスイングスピードから放たれた強烈な打球は、一直線に伸びて神宮の左翼席中段へと突き刺さる大会第1号の豪快な2点本塁打となった。「打った瞬間行ったと思いました」と確信歩きを見せるほど完璧な一振りは、相手の意気をも完全に消沈させた。対戦相手の東日本国際大の藤木豊監督も、「狙って放り込まれました。あれで(試合は)“終わり”でした」(スポーツ報知)と、その驚異的な長打力に脱帽するしかなかった。
この特大弾は、春山選手にとってどうしても成し遂げたかった特別な「忘れ物」の回収でもあった。敦賀気比高の2年時に出場した明治神宮大会において、同じ左翼方向へ大きな打球を放ったものの、あとわずか「30センチ」高さが足りず、惜しくも左翼フェンスを直撃する二塁打に留まり、チームもそのまま敗戦するという悔しい経験をしていた。今大会を迎えるにあたり、「家族とも(大学選手権に)行くんやったら“忘れ物を取りに行こうよ”と話していた。運命ですね」(デイリースポーツ)と話し、ついに神宮のフェンスを遙かに越える一打でその悔しさを晴らした。春山選手は、「高校時代のフェン直を超えれて良かった。成長したかな」(サンケイスポーツ)と、満面の笑みで成長の証を実感していた。
視察したプロのスカウトも春山選手の打撃を高く評価する。
カージナルス・大慈弥スカウト:「打った瞬間、すごい飛距離で飛んだ。右打者では昨年の(阪神)立石と似て、とにかくパワーがすごい」
中日・永野アマスカウトチーフ:「軸がずれないし選球眼もいい。外寄りの球を持っていったパワーも魅力です」
巨人・榑松伸介スカウトディレクター:「(打球の)上がりかたもいいし、飛距離も。すごいホームランを見ました。スイングスピードも速く、ミート力もある。プロ野球に入っても上位クラスのパンチ力でしょう」
千葉ロッテ・三家和真スカウト:「遠くへ飛ばせる能力は魅力。スイングスピードや力があるから中段まで飛んでいる。長打を打てる右の外野手っていうのは貴重」
大勝で準々決勝に駒を進めた大商大。次は昨年覇者の東北福祉大との大一番となる。プロ注目の最速155キロ右腕・猪俣駿太投手との緊迫する対戦も見込まれる中、春山選手は、「猪俣君も打ちたいです。」(スポーツ報知)と力強く宣言をした。
【星野 世那】 プロフィール
- 氏名:星野世那(ほしの・せな)
- 所属:大阪商業大学(4年)
- 出身:滋賀県大津市(仰木スポーツ少年団野球 - 草津シニア - 近江高校出身)
- ポジション:投手
- 投打:左投左打
- 身長・体重:179cm、78kg
- 主な特徴や実績:自己最速151キロ。近江高時代は山田陽翔(現西武)とともに甲子園に3度出場し、3年春には準優勝の輝かしい実績を誇る。大商大進学後は4年春のリーグ戦で4勝を挙げリーグMVPを獲得。中1日のタフな神宮マウンドで7回1安打無失点完封を記録。使い捨てカイロや熱いお湯で血流を良くし体を温める独自の「温熱ケア」を日課とする、日米のスカウトが上位候補に挙げるポテンシャル抜群の実力派サウスポー。
【春山 陽登】 プロフィール
- 氏名:春山 陽登(はるやま・あきと)
- 所属:大阪商業大学(4年)
- 出身:奈良県大和高田市(高田イーグルス - 五條シニア - 敦賀気比高校出身)
- ポジション:外野手
- 投打:右投右打
- 身長・体重:177cm、92kg
- 主な特徴や実績:関西六大学リーグ史上初となる「1試合3本塁打」やリーグ通算10本塁打を記録する、侍ジャパン大学日本代表候補の超大砲。高校時代にフェンス直撃で悔し涙を流した神宮で特大の「リベンジ弾」となる大会1号2ランを放ち、プロでも上位レベルのスイングと力強さを証明。富山陽一監督から譲り受けた大きめのズボンを「勝負ズボン」として着用するユニークな一面を持ち、死球を受けても微動だにしない不屈の精神力を誇る。2026年ドラフト上位注目スラッガー。



















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