東京六大学リーグで強豪を相手に好投を見せる東京大の下手投げ右腕・渡辺向輝(こうき)投手(4年)が、プロ志望届の提出を決意したことが明らかになった。千葉ロッテで活躍した「ミスターサブマリン」こと渡辺俊介氏(48=現日本製鉄かずさマジック監督)を父に持ち、今秋のドラフト会議で支配下枠での指名がなければ野球を引退するという「支配下一本」の覚悟を示す。東大からのプロ入りとなれば、2017年に日本ハムに7位で入団した宮台康平投手以来、7人目。親子でのプロ野球選手誕生なるか、注目が集まる。
「支配下のみ」の覚悟、大学日本代表候補入りが後押し
この日の練習後に取材に応じた渡辺向輝投手は、「自分としてはしっかり出したいと思っています」と話し、保留していた進路について、プロ志望届を提出することを明らかにした。ただし、プロ入りをするには支配下枠での指名という条件をつけ、「これでドラフト指名されなかったとしても、それは野球で一つのケジメになる。選んでもらえたら頑張っていきたい」と話し、ドラフト会議で指名がなかった場合は野球をきっぱりとやめて、一般就職をするという。
プロ入りを目指す決断の大きな後押しとなったのが、大学日本代表選考合宿のメンバーに選出されたことだ。今年1月には「大学ジャパンの候補入り」することをプロ志望届提出の条件としていた。今春のリーグ戦は0勝5敗、防御率4.91と結果を残せなかった事もあり、代表候補入りもプロ入りも諦めかけていたが、「秋季リーグをやりきるために温泉に行ってオフを満喫するぞとか思っていたけど、選んでいただいて凄い衝撃とうれしさ」と、驚きの代表候補選出だった。
父とは違う道でプロへ
父の渡辺俊介氏も球界屈指のアンダーハンドピッチャーとして、日本代表としてもその変則フォームからの投球を見せ、注目される存在だった。その父がいる中で、向輝彼選手は父とは違う道を選択する。「私立だと頑張って受験しても裏ルートとか言われてしまうんです。大学は国立にと思っていました」と話し、回りの意見を許さないために、偏差値70とされる進学校・海城高校、そして現役で東大に合格し、親の七光りとという意見を払拭した。高校3年の夏休みには「3日間で2回しか寝ない」という独自の方法で猛勉強したという。
そして、社会人野球の新日本製鐵君津を経てプロ入りした父に対し、大学からのプロ入りを目指すことも、ある意味で父との勝負だという。地上約10cmから繰り出される唯一無二のサブマリン投法と120キロ台のストレートと、ソフトボールの「ライズボール」のように浮き上がる特殊なスライダーは父譲りだが、それを武器に今度はドラフト会議という舞台で、2000年にドラフト4位で指名された父へと挑戦する。
希少性の高いアンダーハンドピッチャーで、この春も明治大戦で9回7安打2失点と好投を見せた試合もあったが、リーグ終盤の法政大戦、立教大戦はやや疲労も見せていた。もし、社会人野球に進んで、プロ野球と近いレベルで結果を見せればプロ入りの可能性もあると評価できるかもしれないが、現時点で支配下での指名というのはやや厳しい条件だと思う。
ただし、侍ジャパン大学代表選考合宿で、立石選手など全国から集まる強打者を相手に結果を残し、そして代表として日米大学野球を相手に結果を見せるようになれば、評価は高まることになり、渡辺投手にとって、父との勝負に勝つための合宿となってくる。
渡辺向輝投手 プロフィール
- 氏名:渡辺 向輝(わたなべ こうき)
- 生年月日:2004年2月25日
- 出身地:千葉県
- 経歴:海城中学校 – 海城高校 – 東京大学(4年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:167cm・63kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:元千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介氏を父に持つサブマリン右腕。2025年大学日本代表候補。プロ志望届の提出を決意し、支配下指名以外の場合は一般就職する意向。東大に現役合格した文武両道の選手。東京六大学リーグでは通算21試合に登板し1勝9敗、防御率4.34。趣味はピアノで六大学の応援歌を弾くこと。



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