ドラフト総決算2011 ~第5章~

 夏の甲子園は好投手、好打者の競演となった。金沢・釜田佳直は153kmをマークすると、唐津商・北方悠誠も負けじと153kmをマークする。聖光学院・歳内宏明は1回戦で16奪三振で勝利すると、英明・松本竜也は1回戦1失点完投、1年生から140km中盤のストレートと特大ホームランを放ち注目されていた開星・白根尚貴も完封勝利を挙げると、東洋大姫路・原樹理も安定した投球で勝利を挙げた。

 そんな中、一人の怪物が甲子園のマウンドに登る。帝京・伊藤拓郎。1年生で148kmをマークしてから2年後のピッチング。当時期待された成長した姿ではなく、3回2/3を投げて8安打5失点でノックアウトという内容。
 しかし伊藤の顔には笑顔があった。現在の力を出し尽くしてノックアウトされ自分の力を思い知った。その瞬間、常に比較されてきた1年生の時の自分と完全に別れることができたのだろう、ようやく地に足が着き、ようやく第1歩を踏み出せる、そういう顔だった。

 スラッガーも活躍を見せる。日大三・畔上翔が1回戦でホームランを放つと明徳義塾・北川倫太郎は2試合連続ホームラン、光星学院・川上竜平は1試合2本塁打記録、帝京の松本剛もホームランを記録し、ドラフトでの評価に繋がっていく。

 2回戦注目は釜田佳直と歳内宏明の対戦、150km台のストレートで力で抑え込む釜田に対し、140kmのストレートと伝家の宝刀・スプリットで対抗する歳内、勝利したのは14奪三振を挙げた歳内ではなく、釜田だった。昨年の夏、2年生で活躍を見せた歳内宏明は2試合で30奪三振を記録し甲子園のマウンドから清々しく去っていった。甲子園の申し子は再び甲子園に戻ってくることになる。

 甲子園の決勝は日大三と光星学院の対戦、日大三はエース吉永健太朗が抜群の投球を見せる。準々決勝・習志野戦で完封するとその勢いで決勝でも川上竜平など強打者の並ぶ光星学院打線を完封、伊藤拓郎から始まり、釜田佳直、歳内宏明、原樹理、松本竜也などが競った高校NO1投手の座は、吉永健太朗投手が手にしたのだった。

 続いて行われたアジアAAA選手権、メンバーには釜田佳直、松本竜也、歳内宏明、原樹理、吉永健太朗、北方悠誠の豪華投手陣に北川倫太郎、畔上翔、横尾俊建など甲子園で活躍を見せた選手達が名前を連ねたが、その中に全国大会で経験の無い東海大甲府・高橋周平の名前があった。木製バットで行われたこの大会で甲子園でホームランを放ったスラッガー達が苦戦する中、予選で敗れた後にプロを見据えて木製バットで練習を重ねてきた高橋周平が決勝の韓国戦で横浜スタジアムのスタンドにホームランを叩き込んだ。このホームランで東京ヤクルトが高橋周平の1位指名を決定する。
 甲子園優勝投手、吉永健太朗は決勝の韓国戦でも5回までノーヒットノーラン、9回を1安打1失点という圧倒的なピッチングでアジアNO1投手となり、その進路に注目が集まる。

 注目は高校生の進路へ、釜田佳直、歳内宏明がプロ志望を表明、原樹理は付属の東洋大への進学を決める。ドラフト候補のそろった日大三高だが、吉永健太朗が早大進学を決めると、横尾俊建は慶大へ、畔上翔、高山俊も進学を決め4人の指名があるかと思われた日大三はまさかのドラフト指名0という事になる。

BIG3最終決戦へ

 野球雑誌では、藤岡貴裕、野村祐輔、菅野智之をBIG3と扱い、対談などの特集で顔を合わす機会が増える。東京六大学、東都、首都と別々のリーグで戦うエースは最後のシーズンに対戦することを誓う。東都では藤岡貴裕が6勝1敗、防御率0.93でリーグ1位の活躍を見せるも、2012年のドラフト注目選手である東浜巨投手を要する亜大が優勝、最後のシーズンに全国へ出場することができなかった。
 首都リーグでも東海大の菅野智之が150kmのストレートを封印しスライダーなど変化球中心のピッチングで勝敗にこだわった投球を見せると、5勝0敗、防御率0.57の活躍を見せて優勝を果たす。しかし関東地区代表決定大会(横浜市長杯争奪大会)の準決勝で桐蔭横浜大・東明大貴と対戦、1-0であと1アウトで勝利する場面で逆転サヨナラの2ベースヒットを浴び、人前にも関わらず号泣を見せた。持ち前のストレートを抑え、悲願の全国優勝だけを目指した戦いだった。
 東京六大学では明大・野村祐輔が6勝1敗を記録し優勝し、高校生の時に手の届かなかった全国制覇に向けて勝ち上がっていった。

社会人唯一の全国大会

 震災の影響で日本選手権が無くなり、秋に延期されていた都市対抗野球大会がドラフト直前に開幕した。候補にとっては最初で最後の一発勝負のアピールできる大会となる。1回戦のホンダ戦でJR東日本・十亀剣投手が8回2/3を8奪三振で無失点に抑える好投を見せた。十亀投手は春より急激に成長を遂げプロからは社会人唯一のドラフト1位投手と評価されていた。
 またJR東日本東北の森内壽春投手が初戦の三菱重工横浜戦で完全試合を達成、ドラフト直前での猛アピールとなった。

プロの動き

 ここまで、読売、広島東洋、千葉ロッテが1位指名を決めていたが、他の球団もリーグ戦が終了しチーム状況からドラフト候補選手を決定していく。まず阪神が最終判断を下す。秋のリーグでも復活することができなかったが当初の方針通り慶大・伊藤隼太選手の1位指名を決めた。

 リーグ戦で上位チームとなった東京ヤクルトと中日は高橋周平の指名を決定し、福岡ソフトバンクは地元・武田翔太投手の1位指名を決定、将来性を見越した余裕のあるドラフトとなる。

 下位に沈んだチームでは、身売り騒動でチームの方針が決まらなかった横浜や5位に終わった東北楽天はチーム状況から先発候補の藤岡貴裕投手、野村祐輔投手を最終候補に残した。 オリックスは岡田監督の内野手が不足しているという方針を受け、即戦力として評価した高橋周平選手に社会人NO1遊撃手の安達了一、守備力NO1の遊撃手、JR東日本・縞田拓弥らをリストアップした。

 埼玉西武はシーズン序盤に最下位に沈んだ戦いを重視し、投手力の強化をポイントに挙げJR東日本の十亀剣投手をリストアップした。

 パリーグ2位となった北海道日本ハムは例年通りドラフト指名選手だけでなく方針すら報道されない徹底した隠密ドラフトだった。ダルビッシュ投手のメジャー入りが噂される中、ドラフト前日には候補を2人に絞ったとコメント、スポーツ紙などは藤岡貴裕か野村祐輔と報道したのだった。

続く


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