済美・安楽智大投手が6回降板、772球を投げる。センバツの花はこれから試練も

高校野球ドラフトニュース 2014年ドラフトニュース

 高校野球センバツ大会決勝の浦和学院vs済美の試合は17-1という大差がつき、浦和学院が優勝した。済美・安楽智大投手は3連投となるこの日は、昨日までの疲れを感じさせない投球から一転し、最速は142km/hも球速は120km/h台まで落ち込み、守備でも足がもつれるなど、もう動くことはできなかった。

 5回に8本のヒットで7失点し力尽きていた。しかし6回も監督に志願してマウンドに登ると2つの死球を与えるなど2失点、ベンチに戻ると涙を流し降板した。

 センバツの花だった。今回のセンバツも良い選手はたくさんいた。しかし正直なところで評価を上げた選手というのはほとんど見当たらなかった。唯一と言っても良い安楽投手の投球に注目が集まった。しかしそれが安楽投手にも負担になってしまったかもしれない。

 ここまで5試合を投げて772球を投げた安楽投手、この疲れは相当なものになる。センバツの後に疲れから体のバランスが悪くなりフォームを崩すケースもある。また、これから体力強化と共に、長いイニングを投げきれるようなフォームに変えようともするだろう。しかし、それでフォームを見失って制球難になったりすることもある。怪物と言われた選手でもそうなってしまう。

 今のフォームは深く沈みこみ右足の負担が大きいフォームだとは思うが、それでもこれだけ投げられて球速は152km/hを出し、コントロールもそこそこ良くバランスが良いといえる。これから、夏そして来年とまだ時間はある。急に変えようとするのではなく、今のバランスを失わないようにゆっくりとゆっくりと変えていって欲しい。

 もういい。本当によく投げた。代えてあげてくれ―。同点とされた後の5回2死満塁から、安楽が5者連続で長短打を浴びた。人生初の1回7失点。152キロ右腕の信じられないシーンに、スタンドからは悲鳴があがった。「疲れは関係ありません。抑えられなかったのは自分の力不足」。16歳の怪物は、初めて味わう挫折にも言い訳は一切しなかった。

   初回から下半身は悲鳴を上げていた。4回までは2安打無失点に抑えたが、球速は142キロ止まり。2回、高田涼太のマウンド後方への打球(記録は内野安打)には足がふらつき、5回も三塁方向へベースカーバーに走った際に、足がもつれ尻もちをついた。

   4試合連続の完投勝利を挙げた前日(2日)の高知との準決勝後、部員らで宿舎近くの銭湯に行った際、湯船につかりながら「あー、きょうはしんどい」とポツリ。初めてナインの前で弱音を吐くなど、限界が近づいていたのは明らかだった。

 「力不足です。腕も振れず、ボールも垂れていた。夏へ向けて、3、4、5連投できる体力をつけないといけない」剛球が影を潜めた。自身初の3連投で粘りが利かなかった。最速は142キロ止まり。5回は5連打を含む8安打を浴び、7点を失った。1イニング7失点は初の屈辱。志願した6回のマウンドでさらに2点を失った。

   平井(オリックス)、福井(広島)らを育てた名将でさえ、育成に頭を悩ませた。「(これほどの大器に)今まで遭遇したことがない。どうこしらえていけばいいのか…」。高校進学時は全国の強豪23校から声がかかった。済美を選択したのは地元への恩返しと指揮官への信頼感だった。

   2人の絆は深く、固い。ある日の練習日。軽く投げろと言われていた二塁送球練習でめいっぱい投げたことがあった。すぐ怒声が飛んだ。「一度、肩肘を痛めると、おまえの夢であるプロは終わるんだぞ」――。深い愛を感じた。「監督さんについていけば間違いない」。160キロを目指す2人の挑戦が始まった。

   涙は乾いた。目標は定まった。「夏、春、夏とあと3回チャンスがある。浦和学院から優勝旗を取り返したい。3回のうちに上甲監督を胴上げしたい」。初戦の広陵戦で152キロを計測。済々黌戦では右手首に打球が直撃した。5試合計772球の力投。今大会の話題をさらった新怪物は胸を張って聖地を去った。

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