東都大学野球春季リーグの開幕週で中央大(中大)が国学院大に10-4で快勝、投のヒーローは、先発マウンドを託された3年生右腕の東恩納蒼投手(3年=沖縄尚学)だった。1年生の春以来、実に2年ぶりとなるリーグ戦勝利。2回に本塁打を浴びて先制を許したものの、7回を投げて5安打2失点9奪三振という堂々たる内容で復活を印象づけた。1年秋の右肘手術、そして苦しんだ昨年の不振。高校時にドクター0と呼ばれた投手が帰ってきた。
スライダー封じを打破、チェンジアップ、フォークの落ち球で9K
東恩納蒼投手にとって、この日は新たなスタイルを証明する舞台だった。高校時から高く評価されていた切れ味鋭いスライダーだが、レベルの高い東都のバッターはその変化球を狙ってくる傾向があり、この冬は特に左打者への対策として落ちる系の変化球の精度向上に心血を注いできた。その成果は、この日は9つの奪三振という数字になって現れ、「自分の強みのスライダー以外にも、左バッターに対して落ち球系を今回練習してきて、うまく使うことができました。1、2年生で投げてなかった球。収穫がありました。要所、要所でしっかり抑えることができた。(後半は)自分のピッチングがどんどんできてきた。」と話した。
打者がスライダーを待っているところで、チェンジアップやフォークを効果的に織り交ぜる。持ち前の高い制球力があり、低めへの真っ直ぐは140キロ台後半、ブレーキの利いた変化球のコンビネーションに、国学院大打線は的を絞りきれなかった。「本調子とまではいかなかった」と振り返るが、さすがにゲームメイク力に、中大首脳陣の信頼は厚い。
右肘手術の暗闇を抜けて、清水監督が託す「中大の新エース」への期待
ここまでの道のりは平坦ではなかった。沖縄尚学高時代には、2023年夏の甲子園でエースとしてベスト8進出に貢献、侍ジャパンU18代表ではU18W杯で5回完全試合も達成するなど、ドクター0として注目された。大学入学直後の1年春にはいきなり2勝を挙げて脚光を浴びたが、高校時からの負荷の蓄積もあって1年秋に右肘を痛め、クリーニング手術を受けた。「そこから1年ぐらいは思うようにできなかった(サンケイスポーツ)」と話し、リハビリ期間を経て昨年春に復帰したものの、本来の投球を取り戻すまでには至らなかった。
「去年は万全な状態でマウンドに立つことができなかった。今年は練習からケガに対する取り組み、ケガをしない体作りを意識してやってきた結果が、開幕戦につながった(日刊スポーツ)。」と話し、オフに行った様々な改善が、開幕戦勝利へとつながる。そして、今季は東恩納投手が名実ともに投手陣の柱として期待されている。清水達也監督(61)は、「昨年の4年生が抜け、東恩納が中心にならなければいけない。それを考えれば、いい1勝になったと思う(スポーツ報知)。」と話した。
「フルシーズン完走」を誓う春。目指すは優勝マウンドでの雄叫び
久しぶりの勝利の味を噛み締めつつも、東恩納投手の瞳はすでに先を見据えている。1勝で満足するような段階ではないことを、本人が一番よく理解している。今春の目標は「不敗」でのリーグ制覇、そして全日本大学選手権の舞台だ。
「この1勝で満足することなく、これから1勝ずつ積み重ねて、優勝っていう形で最後、マウンドに立てるように頑張っていきたい。まだ始まったばかり。フルシーズンしっかり完走できるように。」
2023年のドラフト会議でDeNAに5位で指名された石田裕太郎投手が、プロでローテーション投手として活躍している。石田投手は大学時に、エース・西舘勇陽投手と共に主に2戦目の登板をしていたが、大型でもなく、制球力や変化球を活かした投球を見せていた。東恩納投手は石田投手と同じかそれ以上の精密さを持っており、このまま勝ち星を重ねてゆけば、来年は実戦派投手として即戦力で注目されそうだ。
【東恩納 蒼】 プロフィール
- 氏名: 東恩納蒼(ひがしおんな・あおい)
- 所属: 中央大学(3年)
- 出身: 沖縄県(那覇市立仲井真中-沖縄尚学高卒)
- ポジション: 投手
- 投打: 右投左打
- 身長・体重: 172cm、75kg
- 主な特徴や実績: 2023年夏の甲子園8強のエース。大学1年春にリーグ戦2勝を挙げるも右肘を手術。リハビリを経て3年春の開幕戦で2年ぶりの白星をマーク。切れのある直球とスライダーに加え、新たに習得したチェンジアップ、フォークを操る本格派。2027年ドラフト注目候補。









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