侍JAPANのトップチームは、台湾との強化試合を戦い、4-2で勝利した。ルーキー2投手の好投が光った。
4者連続、4回8奪三振
JAPANのユニフォームを着て、第1戦の先発マウンドに登ったのはルーキー・小川泰弘投手(東京ヤクルト)だった。今年ルーキーイヤーで16勝を挙げて最多勝のタイトルを獲得した右腕は初回、先頭打者にヒットを許すと、2三振でアウトとしたものの、四球でランナーを進め、タイムリーヒットを浴びてしまう。「初回は絶対、無失点に抑えたかったが、久しぶりのマウンドで自分の投球ができなかった」と重圧というよりは、登板間隔があいてしまっていたためと話し、持ち前の気持ちの強さを見せた。
しかしここからがちがう。2回は3者三振、3回4回も2三振を奪い、4回で8奪三振を記録した。コントロールされたスライダーでストライクを奪って追い込むと、最後は145km/h前後の伸びるストレート、または沈む球で空振りを奪った。ボール球も外角高めのバットを出しそうな所にキッチリと投げていた。
井納翔一投手は150km/h速球で1回3奪三振
日本代表は2010年中日ドラフト1位の大野雄大投手が2番手で登板すると、3回を投げて1安打3奪三振も2四死球で1失点と制球力に課題を見せる。しかし140km/h後半のストレートと鋭いフォークボールを投げる左腕投手は貴重な存在で、もっと磨いて日本を代表する左腕になれる素材を持っている。
そして8回は2012年横浜DeNAドラフト3位のルーキー・井納翔一投手が登板した。井納投手は最速150km/hの速球で、見逃し、空振り、そしてファールで追い込む力強い投球を見せる。先頭打者には追い込んでから甘くなったフォークをヒットされたが、その後はスライダーやストレートで三者三振に斬って取った。
井納投手はルーキーではあるものの1986年世代で嶋基宏捕手(1984年世代)に次いで2番目の年長者ではあるが、まだまだ成長を見せている。小久保監督が気に入っているという右腕は大舞台で実力を見せた。リリーフとしての可能性も示し、今後も侍JAPANのトップチームに呼ばれるような成績を残しそうだ。
”ルーキー”と呼ばれる最後のピッチング
2013年のドラフト会議も終わり、後輩が入ってくる。小川投手の16勝をはじめ、東北楽天・則本昂大投手の15勝と日本シリーズでの投球、巨人・菅野智之投手の13勝とCSでの完封と、日本シリーズで田中将大投手に黒星をつけた投球、さらに高校生ルーキーの阪神・藤浪晋太郎投手の10勝と、2012年のルーキー投手は本当に素晴らしかった。ダルビッシュ投手などエースと呼ばれる投手が次々とメジャーに渡って行き、停滞気味となりそうだったプロ野球界に新しい風を吹かせてくれた。先輩投手も野手も目が覚めた事だろう。
プロに入ればルーキーも先輩も同じスタートラインに立つといわれるが、ルーキーはルーキーとして特別に注目もされる。しかし、”ルーキー”と呼ばれる事はもう無い。今後はリベンジを狙い目を光らせた先輩選手と対戦し、新にルーキーと呼ばれる後輩もポジションを奪おうと挑戦してくる。本当の意味での戦いが始まる。
小川のこん身の投球に、台湾打線のバットが次々と空を切った。初回に1点を失ったが、2回以降は一人の走者も出さない力強い投球を披露。2回の6番・張進徳から4者連続で三振を奪った。ルーキーながら16勝を挙げて最多勝に輝いた右腕が、小久保ジャパン初陣のマウンドで4回を2安打1失点。8奪三振の快投に「2回以降は低めが良かった。1球1球、責任を持って投げることができました」と、心地良さそうに汗を拭った。
初回を終えて、直球を狙われている、と判断。2回から変化球主体の投球に変えた。「初球から相手がフルスイングしてくるので、変化球で三振が取れた。すぐ切り替えられた」と納得の表情だ。10月8日の巨人戦(東京D)以来となるマウンド。登板間隔が空いたうえ、秋季キャンプでの走り込みの影響で体はパンパンに張っているが、大舞台でも普段通りの強気の姿勢は忘れなかった。
「プロで活躍して、いつかは代表に選ばれるような選手になりたい」。ヤクルト入団後、そう夢を語っていた右腕。創価大4年時、台湾での世界大学野球選手権に出場する大学日本代表に選出されることが確実視されていたが、参加国不足のため大会自体が中止。今まで「日の丸」に縁がなかった。今回の初代表にうれしさと、責任を感じていた。
「初回は絶対、無失点に抑えたかったが、久しぶりのマウンドで自分の投球ができなかった」と反省したものの、初の国際大会で将来性を感じさせた。17年のWBCに向け、エース候補が上々のスタートを切った。
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