創価大・田中正義投手の名前は、多くのプロ野球ファンにも知られる事になった。2万人以上が詰めかけた神宮のマウンドで、田中正義投手は最速153km/hのわかってても打てない直球を武器に4回を投げてパーフェクト、8奪三振、若手とはいえプロの打者も打席で苦笑いをするだけだった。
大谷・藤浪世代の大物
速くて重く、伸びてくる直球があり、大学生の打者では打てない直球を投げる。相手を見下ろして投げた時はストライクゾーンでどんどん勝負し勢いに乗ると手がつけられなくなる。その直球の威力は同学年の大谷翔平投手や藤浪晋太郎投手に匹敵すると評価される。ではなぜそんな投手が高校時代にプロ入りしなかったのかというと、田中正義投手は高校時代は故障などもあって投手から外野手に転向しており、逆にホームランバッターとしてプロのスカウトから注目をされていた。
大学に入り再びマウンドに登ると、昨年の大学野球選手権では最速155km/hの速球で山崎康晃投手の亜細亜大などをねじ伏せベスト4に進出し、投手として2016年のドラフトの超目玉という評価を確実にしている。しかし、わかっていても打てない直球を投げるものの、制球に課題を見せる試合もあるし、フィールディングやけん制などの課題を見せる時もある。
この試合ではプロを相手にどんなピッチングを見せるかがポイントだったが、相手を完全に見下ろし、直球をストライクゾーンに投げ、フォークやスライダーで遊ぶ球も投げた。こうなるとバッターは田中投手を打てなくなる。4回を投げ7者連続を含む8奪三振、また課題のフィールディングなどもプロをパーフェクトに抑えてしまい、機会すら与えなかった。
プロ選手・スカウト絶賛
対戦したプロ野球の打者もお手上げだった。
○オリックスの武田健吾選手:「正直、初球を見た瞬間にこれは打てないと思った。プロでも絶対通用する」
○西武・石川貢選手:「フォークが素晴らしく、フォークを意識すると真っすぐに遅れる」
○巨人・岡本和真選手:「全球真っすぐでした。速かったけど打ちたかった」
○東京ヤクルト・谷内亮太選手:「直球が武器になる投手ですね」
○北海道日本ハム・清水優心選手:「初速と終速の佐賀小さくて、球を話した瞬間に届く感じ」
またスタンドには12球団60人を超すスカウトが視察、スカウト陣やフロント陣も絶賛の嵐だった。東北楽天でドラフト会議で脅威の手を持つ東北楽天・立花陽三社長は「すごいな、あれは。来年絶対取るよ。スカウトも満場一致、名前も田中だし絶対行く」と早くも来年のドラフト1位指名を決定した。
他球団にとって恐れる存在が1位指名宣言をしたが、他球団も黙ってはいない。
○巨人・山下スカウト部長:「3年生だけど、現時点でもプロのローテーションでやれるくらいの即戦力でしょう。来年の本物の目玉になる。これだけ素晴らしいボールを投げていたら、ケチを付ける部分がない」
○広島・苑田スカウトグループ長:「今年一番でした。最高のピッチング。制球も直球も今の時点で即戦力。直したい所は見当たらないし、文句のつけようがない」
○北海道日本ハム・大渕スカウトディレクター:「日本のレベルでこれだけのことができると分かった。世界大会でどれだけ活躍できるのか。1年後た楽しみです。」
来年の目玉・田中正義投手が超目玉へと変わった日だった。
手がつけられない。4回完全、8奪三振の圧巻の投球。150キロ台の速球でプロの打者をなで斬りにした。どよめきに包まれた神宮。スタンドの視線を一身に集めた田中は「こんなたくさんの観衆の前で投げるのは初めて。緊張した」と話しながらも「いい結果で終われてよかった」とうれしそうに笑った。
1メートル86の長身と長い手足。しなやかな腕の振りでプロの打者を完璧に封じた。3回に2番手で登板した直後は緊張で制球は乱れたが、4番・山川穂をオール直球で左飛に仕留めた。「先頭をアウトにできて乗れた」と次打者・武田の初球で自己最速155キロにあと2キロと迫るこの日最速の153キロをマークし、ここから5回2死まで7連続奪三振。「追い込んでから甘くならないように、それだけを考えた」。直球だけでなく変化球の制球も抜群で、フォーク、スライダー、カーブと投じた変化球全てを決め球にして三振を奪った。
球場表示は最速153キロだったが、ロッテスカウトが持参したスピードガンでは何と、154キロを計測。だが、光ったのは直球だけじゃない。3回2死の石川貢には138キロの高速フォークで空振り三振に。「ヤンキースの田中選手や広島の前田選手の軌道を参考にしている。ストレートだと思わせたら勝ちと思っています」という勝負球はプロの打者をも幻惑した。
ネット裏には、マリナーズなどメジャー複数球団や編成幹部クラスを含めた国内12球団60人超のスカウトが大集結。巨人・山下スカウト部長は「3年生だけど、現時点でもプロのローテーションでやれるくらいの即戦力でしょう。来年の本物の目玉になる。これだけ素晴らしいボールを投げていたら、ケチを付ける部分がない」。始球式に登板後、視察した侍ジャパントップチームの小久保監督も「一番印象に残った選手。あんな投手がおったんかという感じ」と絶賛した。
三回一死から7者連続を含む計8奪三振。最速153キロの直球を軸に真っ向勝負を挑み、4回をパーフェクトに抑えた。相手は2軍選手が主体とはいえ、数百万円以上もの年俸を手にするプロ集団。それを“上から目線”で押さえつけたのだ。
スタンドはプロ野球公式戦と見まがうほどの2万649人のファンで埋まった。「K、K、K…」と続く結果に驚きの声があがった。
東京・創価高1年の夏はエースだったが調子を落とし、創価大入学まで外野手で「投げるより打つ方が好きだった」。大学入学後に投球を再開し、昨春のリーグ戦(東京新大学)は初登板で154キロ。大学選手権でも活躍し、その名が一気に全国に広がった。
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