夏の高校野球、甲子園大会は7日目、済美vs三重戦で注目の2年生・安楽智大投手が登板した。
安楽投手は初回から150km/h前後の速球を記録していたが、タイムリー3ベースヒットなどで2失点し、不安の残る立ち上がりを見せた。しかし2回以降はランナーを許しながらも、最速155km/hを記録した速球で詰まらせて打ち取り無失点を続け、6回から8回まではノーヒット、8回まで6安打7奪三振で球数も110球に抑えていた。
しかし9回、3連打に死球のあとタイムリーヒットを続けて浴びるなど5安打で5失点し9-7と2点差まで迫られた。結局、9回を11安打7奪三振で7失点、球数は137球を費やした。
安楽投手は「申し訳ない気持ちです。調子は良くなくて厳しい展開になるとは思っていました」と話し、開会式の前に発熱するなど万全の状態ではなかったようだ。しかし、それでもストレートは常時140km/h後半を記録し格の違いを見せ付けた。プロのスカウトも以下のように評価している。
○オリックス・古谷編成部国内グループ長:「春よりも方の可動域が広くなった印象で、故障しにくくなった感じがある。ただ、今日は指のかかりが良くなかったのかな。」
○オリックス・長村編成部長:「2年生で150km/h台を出すこと自体が凄いこと。駆け引きを覚え、変化球の精度が上がればもっと良くなる。
○千葉ロッテ・松本編成部統括:「マー君クラスでしょう。いう事が何もない。言葉が出ない。直すところが無い。」
○中日・中田スカウト部長:「モノは違う。ただ、序盤はムキになっていた。打者ではなくスピードガンと勝負していたね」
○巨人・山下スカウト部長:「体調が悪いと聞いていたが、九回はそれが出たのかもしれない。スケールの大きい怪物だね」
○東京ヤクルト・鳥原チーフスカウト:「能力が高いし、160キロが出てもおかしくない。来年になったらどんな球を放っているか楽しみ」
○東北楽天・早川スカウトグループマネジャー:「ストレートにこだわりすぎて空振りが取れていないが、変化球を増やせば、もっと楽に投げられる」
○横浜DeNA・吉田孝司スカウト部長は「点は取られたけど、マウンドで自信を持って投げられている。強気な面もいい」
○北海道日本ハム・山田GM:「立ち上がり、体の開きが早かったようだが、すぐに修正できていた。心配はけがだけ」
○北海道日本ハム・芝草スカウト:「あの投球フォームであれだけの球が投げられるのは、他の投手に無い大きな武器。春に比べてバランスも良い。」
メジャーリーグのスカウトもぴたりとマークする安楽投手には今年のドラフト会議が終わって早々にも、どこかの球団が1位指名を公表するなど駆け引きがあるかもしれない。それはメジャー流出を阻止するという意図もあり、他球団をけん制すると言う事になる。駆け引きが楽しみだ。
一回に155キロ。九回に失点…。まるでジェットコースターに乗っているような、安楽の初戦突破だった。
「直球のスピードが乗っていたので、自己最速を出せるかなと思っていました。監督さんから155キロと伝えられて、調子は悪くないなと…」
2失点した一回二死。島田を二ゴロに打ち取った直球が155キロ。2007年夏の仙台育英・佐藤由規(現ヤクルト・由規)の甲子園最速に、いきなり並んだ。
愛媛大会で157キロをマーク。甲子園では最速記録更新を狙うだけに「少し抜けていたので空振りを取れなかった」と笑顔はない。それどころか単調な直球勝負を狙われた。9-2の九回、直球ばかり5安打されて5失点。「情けない。(100点満点で)10点くらい」。11安打7失点に肩を落とした。
「愛媛大会が終わってからは肩、肘、腰がパンパンに腫れていて、満足に練習ができなかった」と上甲監督。甲子園入りした6日に冷房で体を冷やしすぎて発熱。センバツでは5試合で772球を投げ、投球過多は日米で話題になり、夏も体調に不安を残したまま迎えた。まずは9回を投げきり、済美を2005年以来8年ぶりとなる夏の初戦突破に導いたことが収穫だった。
しかしプロ各球団スカウトの高評価は変わらず。DeNA・吉田孝司スカウト部部長は「点は取られたけど、マウンドで自信を持って投げられている。強気な面もいい」とし、ヤクルトの鳥原公二チーフスカウトも「160キロは夢ではない。来年になったらどんな球を放っているか楽しみ」とまだまだ球速は上がるとコメント。巨人・山下哲治スカウト部長も「体がまた大きくなった。スケールの大きい投手で楽しみな素材」と話した。
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