第74回全日本大学野球選手権大会では、史上初の3連覇を狙う青山学院大学(東都大学)が奈良学園大学(近畿学生)に5-0で快勝し、ベスト8進出を決めた。今秋ドラフト1位候補のエース・中西聖輝投手(4年=智弁和歌山)が先発し、7回を1安打無失点、8奪三振と圧巻の投球で、王者のエースの貫禄を見せつけた。ネット裏に集結した12球団のスカウト陣もその実力を高く評価した。
自己採点70点も圧巻の7回1安打無失点、進化見せた151キロ
雨天で登板が2日順延となる難しい調整となったこの日の先発だが、中西聖輝投手は「僕自身は難しさはなかった」とマウンドの上がる。課題とする立ち上がりでは、初回1死からヒットとエラーで一、二塁のピンチを招いたが、「これで緊張がとけた。自分のボールを信じて投げるだけでした」と後続を打ち取り無失点で切り抜けた。これで波に乗ると、2回には得意のフォークを決め球に3者連続空振り三振。2回以降は一人の走者も許さないパーフェクトピッチングで7回を投げきり、7回1安打8奪三振無失点と圧倒的な内容で奈良学園大を封じた。最速は151キロだった。
それでも中西投手は「それなりに投げられたけど、70点。初回が課題と言われているのに改善点はたくさんあります」と話し満足した様子はなかった。東都リーグ5連覇を達成した後も筋力トレーニングに励み、約2週間で体重を2キロ増やしたという。この日は最速151キロを記録したが、全体的にリラックスして投げ、140キロ後半の伸びのある球を見せていた。「球速が少し上がった分、ファウルになったり空振りになったりがある。首を振って真っすぐを投げることができている」と、その手応えを語った。安藤寧則監督も「一球一球丁寧に投げてくれた」とエースの投球を称えた。
「安心してみていられる」スカウト絶賛
東都ナンバーワン右腕の快投に、ネット裏のNPB12球団のスカウト陣も唸った。
オリックス・牧田編成副部長:「勝ち方を知っている。真っ直ぐの質、うまくバッターを見ながら変化球を投げられる。安心してみていられる。エースの素質を兼ね備える魅力ある投手。
福岡ソフトバンク・福山アマスカウトチーフ:「投球パターンを複数持ち、完成度が高い。リリースに力を集約でき、出力も高く投げられている」
東京ヤクルト・小川GM:「ボールの質と球の力と制球力。試合を作ることもできる。投手としての資質が備わる。能力的に評価は高い」
巨人・水野雄仁編成本部長代理:「素晴らしい。投球がいつも落ち着いている」
阪神・吉野誠スカウト:「リーグ戦と変わらず良い。直球も力が強く、フォークで空振りが取れている」
北海道日本ハム・坂本スカウト:「全国大会であろうと、いつも通りに投げることができるのはさすが。トータルバランスで勝負するスタイルは、菅野投手に似ている」
中日・松永スカウトディレクター:「安定した投球ができている。勝てる投手」
他のドラフト上位候補がその素質について評価される中で、中西投手は投球内容やエースの資質といった物を評価されており、投手としての完成度ではやはり一歩先を進んでいる。東都でこの春に6勝のエースは、やはり格が違う。
史上初の3連覇へ「涙を流して終わりたくない」
昨年、大学4冠を達成したチームでも、中西投手はエース格として奮闘した。そして今年は最上級生となり、「俺たちの代でもう1度、同じことをやりたいなと話した。それを思い出せば、どんなに苦しくても気持ちを切り替えられる。逃げない、いや、逃げるつもりもないですけどね」と話し、王者として戦う中でもチャレンジしていく思いう強くしている。
周囲からの史上初の3連覇への期待にも「特に何も感じてません。一戦一戦勝つだけ」と話す。それでも、「東都の代表として出場している以上、涙を流して終わりたくない。日曜日は全力で押し込みたい」と、決勝の舞台で頂点に立つことを見据えている。「今日から4連戦を駆け抜けたい」。大学日本一のエースへ、中西聖輝投手の挑戦は続く。
中西聖輝投手 プロフィール
- 氏名:中西 聖輝(なかにし まさき)
- 生年月日:2003年12月18日
- 出身地:奈良県
- 経歴:KGヒーローズ(小1) – 橿原磯城シニア(光陽中) – 智弁和歌山高校 – 青山学院大学(4年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:182cm・90kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速151キロのストレートとフォークを武器にする今秋ドラフト上位候補右腕。2025年全日本大学野球選手権2回戦の奈良学園大戦で7回1安打無失点8奪三振の快投。巨人、阪神、中日など12球団のスカウトから高評価を受ける。2025年東都大学野球春季リーグでは最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインを受賞。青学大では2年春にリーグ戦デビュー。








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