2024年もありがとうございました。今年の個人的なドラフト10大ニュースです。
第1位 佐々木朗希以来Sランク選手2人がドラフト1位指名
ドラフト会議ホームページでは、ドラフト候補一覧や、ドラフト候補とみんなの評価のページで選手に「特A」「A」「A-」・・・というようにランク付けをしているが、「S」というランクがあることを知っている方は少ないのではないかと思う。この15年でこのSランクを付けたのは2019年の佐々木朗希投手だけだから。
そして今年、このSランクを付けた選手が二人登場した。明治大の宗山塁選手と関西大の金丸夢斗投手。近年のドラフト候補の傾向からいくと、体のサイズなどスペック的に高いということは無いのだが、ともに今年のプロ野球でもトップクラスだと思う。非の打ち所がない。
そんな二人も今年は万全ではなかった。宗山選手は春先から骨折が相次ぎ、金丸投手も春のリーグ戦途中に腰を痛め、ともに故障の影響でフルシーズンを戦えたわけでなく、手が届きかけていたリーグの主要な記録にも届かなかった。
しかし、ドラフト会議では当然のように1位指名は集中し、宗山選手には5球団、金丸投手には4球団が1位指名をした。話はそれるがこの内訳に特徴がでており、宗山選手には西武、楽天、広島、日本ハム、福岡ソフトバンクが、金丸投手には中日、DeNA、阪神、巨人と、宗山選手には広島以外はパ・リーグが、金丸投手にはセ・リーグのみ4球団が指名をした。
ドラフト会議で宗山選手は東北楽天が、金丸投手は中日が交渉権を獲得し中断が決まった。ともにチームを変える力があり、リーグの勢力図を変える力があると思っている。そしておそらく来年1年で結果を残し、2026年3月のWBCのメンバーに入ってくるのではないかと思う。怪我なく戦って欲しい。
第2位 1位公表は広島のみ、1位指名の決定は直前に
ドラフト1位指名選手は、2022年はドラフト前までに9球団が1位指名を公表していたが、昨年は4球団、そして今年は広島1球団のみだった。阪神の岡田監督が1位指名を公表するのは面白くないという持論を話しており、それが広まったわけではないが、ドラフト1位指名を事前に公表するという流れが徐々に減っている。
1位指名を公表することは、他球団に先んじて行うことで、他の選手に指名を仕向けることができるかどうかという事とともに、ドラフト1位指名選手との縁を結ぶためという思いもあったりするが、今年は宗山選手、金丸投手を公表したとしても他の球団がそれによって指名を避けるような状況ではなく、1位指名を公表するメリットが少なかった。
また、ドラフト1位指名の決定が、以前は10月の上旬には各球団の首脳クラスの中ですでに決まっているような事が多かった。それだけスカウト部長やGMがその決定権を握っていたのだが、今は例えGMでも、そこまでの権限はないのではないかと思う。また、以前よりも現場の意見を汲み取るようになっており、監督人事の決定の時期も影響しているようにも思う。そのため、全体的にドラフト1位指名の決定はドラフト会議前日のスカウト会議で決まるような形になっている。
第3位 高校生投手に明暗、成長カーブを意識
毎年注目の高校生投手たち、今年は福岡大大濠の柴田獅子投手、神戸弘陵の村上泰斗投手がドラフト1位で、東海大相模の藤田琉生投手と報徳学園の今朝丸裕喜投手が2位で指名された。
世代を代表する投手として注目されていた今朝丸投手は、春のセンバツでも活躍を見せており順当に上位で指名されたが、一方で2年時の時点で注目投手だった川勝空人投手は日本ハムの育成ドラフト1位、神戸国際大付の津嘉山憲志郎投手は福岡ソフトバンクの育成ドラフト7位で指名された。
川勝投手は3年時は本調子でない状態が続き、村上投手との直接対決となった練習試合で大勢のスカウトの前で勢いの違いを見せつけられた形となり、津嘉山投手は肘を故障し高校生でトミー・ジョン手術に踏み切った。
以前のように1年生で怪物として注目された投手が、3年まで投げきれるような時代ではなくなった。150キロ級の球を3年間投げ続けるのは現実的ではない。逆に東海大相模の藤田投手のように3年の5,6月から頭角を表すような選手が結果として上位で指名された。
2025年も健大高崎の佐藤龍月投手がトミー・ジョン手術を受け、復帰は来年夏となる。大阪桐蔭の森陽樹投手も1年時の怪物級の球を今年はあまりミラ得ていない。健大高崎の石垣元気投手は150キロ超の球を投げ続けているが、来年の秋の時点で最も高く評価される高校生投手は誰になるだろう。
第4位 社会人野手にプロ側も指名の工夫
今年はヤマハの宮崎竜成選手が千葉ロッテのドラフト2位で指名されると、日本生命の石伊雄太捕手が中日の4位、三菱重工Eastの山中稜真選手がオリックスの4位、日本生命の立松由宇選手が千葉ロッテの6位で指名された。
社会人野手の指名自体は昨年は4人が指名されており、今年は5人と1人増えただけだが、昨年は度会隆輝選手や津田啓史選手は事前に上位指名候補としてかなり注目されていたが、宮崎竜成選手を上位で指名するという情報はあまり聞こえて来ておらず、意外な指名と思った人も多いのだろうと思う。
また、山中選手は一塁で出場しているが、オリックスは捕手として指名し、立松選手は大学卒4年目のベテラン選手で、ドラフト指名時には日本生命での昇給かプロ野球の選択を迫られるほどだった。
この感覚は2023年に巨人が佐々木俊輔外野手を3位で、泉口友汰内野手を4位で指名したのと似た感覚があり、これからも社会人野手をより評価していく必要がある。
第5位 独立リーグ旋風止まらず
2023年のドラフト会議では独立リーグから23人が指名され、ドラフト2位で2投手が指名されるなど大旋風となった。今年はその反動も心配されたがそんな事はなく19人が指名された。
また支配下指名は6人から7人に増えており、東洋大を退学して徳島インディゴソックスでプレーした加藤響選手がDeNAの3位で、同じく徳島の中込陽翔投手が楽天の3位で指名され、高知の若松尚輝投手がDeNAの4位、BC埼玉の町田隼乙捕手が阪神の4位、愛媛の矢野泰二郎捕手がヤクルトの5位で指名された他、富山の佐野大陽選手が阪神の5位、茨城の陽柏翔選手が楽天の6位で指名された。
かつてはどちらかと言うと育成ドラフトでの指名ができない社会人選手支配下で、独立リーグの選手が育成でというイメージがあったが、その感覚は全くなくなった。高校や大学の有力選手が独立リーグに進んでおり、これからもこのような状況は続いていくだろう。
第6位 箱山選手、高尾投手、小川投手、正林選手など高校生指名漏れが相次ぐ
侍ジャパンU18代表にも選ばれた箱山遥人捕手と高尾響投手が、この世代を代表する選手だったことは間違いなく、作新学院の小川哲平投手も1年時から怪物候補と注目され、正林輝大選手も九州を代表するスラッガーだった。
しかしドラフト会議では名前を呼ばれなかった。結果として箱山選手と高尾投手はトヨタ自動車に進む事になり、トヨタ自動車による順位縛りも噂されるのだが、そういう話はあまり聞かれてこない。
小川投手はJR東日本、正林選手はHonda熊本と、ともに社会人に進むことになったのはもともと内定があったのか、それとも指名漏れによって3年でドラフト指名解禁となる社会人を選んだからなのか。
第7位 富士大から6人が指名
富士大から麦谷祐介選手がオリックスのドラフト1位で指名されると、佐藤柳之介投手が広島の2位、安徳駿投手がソフトバンクの3位、渡邉悠斗選手が広島の4位、坂本達也捕手が巨人の育成ドラフト1位、長島幸佑投手が千葉ロッテの育成ドラフト3位で指名された。
富士大では7人がドラフト候補としてドラフト前にインタビューを受けるなどしていた。そうなると唯一指名漏れとなった佐々木大輔選手を応援したくなる。佐々木選手は3年春に打率.533、3本塁打を記録した遊撃手で3球団から調査書が届いていた。
佐々木選手は東邦ガスに進む。「プロに行きたいので1年目から注目されてドラフト1位候補と呼ばれるようになりたい。」と話している。応援したい。
第8位 森井選手がアメリカの野球へ
桐朋高校で恵まれた体のある大潟遊撃手で、打っては高校通算45本塁打、投げては153キロを記録した森井翔太郎選手が注目されていた。今年夏は良いところがなく初戦で敗退するなど、投打ともに粗さがあったものの、そのポテンシャルを高く評価した球団もあり、プロ志望をすればドラフト上位での指名の可能性もあったのではないかと思う。
その森井選手はプロ野球、またはアメリカの大学、大リーグ挑戦の道を模索し、結果としてメジャーに挑戦する決断をして、有望選手がアメリカに渡る。
昨年もドラフト1位候補だった佐々木麟太郎選手がスタンフォード大に進学したが、この時はアメリカの大学に進学ということでプロ志望届を出さず、NPBの球団は接触できないままアメリカへと渡った。森井選手に関してはメジャー挑戦でもプロ志望届を提出する必要があり、NPBも接触した球団は無くはないと思うので状況は違うが、このように将来有望な選手がプロ野球を経ずに米国に渡るというのは、NPBにとって大変な問題だと思わないと行けない。
もちろん、佐々木朗希投手のようにプロに進んでも5年でメジャーに渡ってしまう時代、プロ野球はどうなっていくのだろう。
第9位 高校生遊撃手に注目集まる
今年は高校生遊撃手に注目が集まった。花咲徳栄の石塚裕惺選手を筆頭に、金沢の斎藤大翔選手、健大高崎の田中陽翔選手、宮崎商の中村奈一輝選手、大阪学院大高の今坂幸暉選手、奈良大付の岸本佑也選手、愛工大名電の石見颯真選手、中央学院の颯佐心汰選手、専大松戸の中山凱選手、滋賀学園の岩井天史選手、京都国際の藤本陽毅選手、北海の幌村魅影選手、桐朋の森井翔太郎選手、そして早稲田実の宇野真仁朗選手や桐光学園の森駿太選手もショートを守った時期があった。
夏前のタイミングでこの高校生遊撃手の中で誰が良いのか、ドラフトファンの中でもたいへん盛り上がっていたが、最終的に石塚選手と斎藤選手が1位指名、田中選手が4位、そしてプロ志望届を提出した多くの選手が育成ドラフトまでに指名された。
第10位 150キロ高校生投手もプロ志望届け出さず
高校生も150キロ台を投げる投手が増える中で、今年も旭川実の田中稜真投手や青森山田の関浩一郎投手、仙台育英の武藤陽世投手、花巻東の小松龍一投手、専大松戸の梅澤翔大投手、近大高専の吉留勇太投手、大阪桐蔭の平嶋桂知投手、玉野光南の村上凌久投手、津久見の佐伯和真投手といった選手が150キロを出していたが、プロ志望届を提出しなかった。
2023年の平野大地投手や高橋煌稀投手、湯田統真投手といった150キロ投手陣が大学進学をしており、150キロを出す高校生はドラフト上位と言われていた時代から大きく変わった。
ただし高校で150キロを出していた投手は大学4年間で160キロを投げるかというとそうではなく、4年間を投げ続けるのは逆に負担となる事もある。4年間という時間を見て、目標をしっかりと持って成長をして欲しいと心から思う。
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最後に2025年も多くの選手の夢が叶いますように。
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