2014年ドラフトストーリー ~その7:晴れのち曇り~

有原航平, 山崎康晃, 石田健大, 山崎福也, 松本裕樹, 安楽智大, 小島和哉

 ドラフトストーリー、その7は2013年のセンバツから、大会の後に日本だけでなくアメリカでも議論を呼ぶ大会となりました。

甲子園の壁

 2013年、第85回記念選抜高校野球大会は3月22日に開幕した。この年に3年生になる選手達と2年生になる安楽智大達がしのぎを削る。しかし練習試合もスタートして時間も無く、まだ寒いこの時期に、自信やチームの力が手探りの状態で戦う選抜大会は過酷だと言える。

 初出場の春江工は初日の第3試合に登場、4番を打った栗原陵矢は初回にヒットを放つが、肝心のリードで常葉菊川に序所にペースを握られて得点を奪われていく。6回には同じ2年生の桑原樹に2ランホームランを浴びる。9回まで9失点、初出場の甲子園は、怖さも感じる事なくあっという間にだっただろう。

 大和広陵の立田将太も3日目の尚志館戦、最速149km/hの評判とは裏腹に、打たせて取るピッチングを続けていく。8回まで1-0でリードで白星を手にしかけるが、9回に連打と四球からタイムリーを浴びて逆転で敗れる。しかし、同じように評判とは違い打たせて取るピッチングを見せた盛岡大付の松本裕樹が初戦を突破すると、浦和学院の小島和哉は8奪三振完封で初戦を突破して実力を見せつける。

 そして大会5日目、いよいよ安楽が登場した。安楽は噂通りにこの時期にもかかわらず150km/hを越す速球を投げ、広陵打線を力で押さえつける。打球を右手に受けるアクシデントもあるが8回まで無失点と、圧巻の怪物登場かと思われた。しかし9回、3本のヒットに死球などで3-3の同点となる。簡単に勝利を得られないと甲子園の魔物が安楽にささやいた。

 それでも安楽は力で魔物もねじ伏せた。10回から13回まで再び広陵打線を無失点に抑えると、13回にサヨナラで勝利した。

 

772

 3回戦、浦和学院の小島は8回を1失点、済美の安楽も9回7安打8奪三振1失点で勝ち上がる。初戦を突破すると以外と勝てるのだろうか。続く準々決勝、小島は7回1安打のピッチングを見せると安楽は3点を奪われたもののこの日も138球を費やし完投勝利で勝ち上がる。準決勝、小島は強打線・敦賀気比戦で5安打1失点で完投勝利、安楽も高知高校を6安打7奪三振2失点に抑えて完投した。ここまで安楽は一人で投げ抜いていた。

 そして決勝、安楽は4回までは無失点に抑える力投を見せたが、ストレートの最速は142km/hもほとんどは120km/h台で、もう安楽の球ではなかった。そして5回、6連打を浴びて7点を失うが上甲監督は交代をさせない。そして6回も2つの死球などで2失点しここでついに安楽が降板した。この大会で安楽が投げた球は772球を数えていた。

 試合は17-1と大差がついた。で浦和学院が優勝、小島は決勝も1失点で完投し2年生が頂点に立ち終わった。

 しかし、この大会の安楽の772球はアメリカでも伝えられ、投げ過ぎという批判が巻き起こる。日本でも議論が巻き起こり、上甲監督が批判される事もあった。しかし安楽は上甲監督と甲子園で優勝を約束したことを話し、夏は決勝でも150km/hを投げるようにしたいと2年生の高校生が、世間の批判を跳ね返すようにコメントをしていた。

 甲子園の疲労を取るため1ヶ月のノースローから5月の連休には再び春季大会で投げる安楽投手の姿があった。

 

3年生台頭

 4月、大学リーグが開幕すると、3年生達が共演した。関西六大学リーグの大商大・金子丈は4試合連続完封を記録、188cmからの大きなフォークボールにスカウトが注目する。関西学生リーグでは京都大の田中英祐が今度は立命館大と近畿大から白星を奪う。京都大の投手がリーグ2勝を記録した。

 関甲新リーグでは上武大・大谷昇吾が飛び出す。開幕戦でサイクルヒットを記録すると、次の日は2打席連続ホームランを放つ。結局、このシーズンで5本塁打を放ちプロが注目する選手の一人となり、上武大に勢いを付けていた。

 東京六大学も3年生が台頭、既にエースとなっていた石田は4勝を挙げ、西浦直亨や大城戸匠理といった4年生の強打線にも支えられて首位を突っ走る。一方、明治大の山崎福也も関谷亮太の次の2戦目の先発を任され、無敗の法政大にぴたりとついていく。そしてシーズン終盤、早慶戦の前の優勝を決めるカードで二人は対戦する。

 初戦は石田が4回途中で降板する。疲労はピークに近づいているようだった。それでも強打線が明大を撃破し勝利し優勝に王手をかける。しかし2戦目は山崎福也が粘り引き分けに持ち込む。3戦目は疲れの見える石田が5回で降板し敗戦、そしてこのカード4試合目、6回から登板した石田と8回から登板した山崎が投げ合い、8回に明治大が勝ち越しの1点を奪う。この1点によって明治大が逆転優勝、山崎福也は6勝2敗の成績を収めベストナインとMVPを獲得する。疲労と土壇場での敗戦を喫した石田はこの後から調子を崩していくのだった。

 そしてもう一人、早稲田大の有原航平が1戦目の先発のマウンドに立つ。初戦の東大戦は7回2安打、140km/h後半の速球を連発する圧巻の投球を見せ覚醒した姿を見せた。しかし終盤には法大に敗れるなど3勝3敗、まだまだシーズンを通してエースの姿は見せられずにいた。

 

 東都リーグでは大エースの東浜が抜けた亜細亜大だったが、4年生の九里亜蓮と共に山崎康晃が先発に周り強さを見せた。特に山崎は九里が調子を落とすと生田監督が1戦目の先発を任すなど抜群の信頼を得て、4勝1敗、防御率1.10で最優秀防御率のタイトルを手にした。

 また亜細亜大では一人の投手が復活を見せた。5月14日の駒澤大戦、3-3の同点で9回裏、ピンチで登板したのは薮田和樹、188cmの大型投手で岡山理大付で期待されながらも故障により実践での登板がほとんど無かった投手だ。この日もサヨナラヒットを許してしまう。しかし続く3回戦に薮田はスタンドをあっと言わせる。5番手で8回に登板した薮田は、最速151km/hを記録、ストレートは抜群の球威とキレを見せていた。この投球を見た人は鳥肌を浮かべながら怪物の予感を感じていた。そしてプロのスカウトもまた、この投球の映像が瞳に鮮明に焼きついたのだった。

 一方、3年生で注目されていたのは中央大・島袋洋奨、2年春に故障をしたが今シーズンは初先発の青学大戦を完封すると、駒大に敗れたものの専修大戦では3安打13奪三振で再び完封をし、球速も150km/hの壁を突破していよいよ本格化した。2勝3敗だったものの、最後の亜大戦まで1戦目の先発を務めエースとして活躍したシーズンだった。甲子園春夏連覇のエースの姿があった。

 

本当の実力

 大学野球選手権、東京六大学と東都リーグの代表は常に優勝候補となり、トーナメントでは決勝で対戦する形となっている。今大会でも明治大と亜細亜大は優勝候補に挙げられ、山崎福也と山崎康晃の対決も予想された。

 序盤、東海地区代表の中部学院大は福岡大に敗れた。2年生の唐仁原志貴投手が5回から登板し2安打13奪三振を記録するのだが、この試合では3番の野間峻祥が2安打を放ち、大きな体だが力強い走塁と守備範囲の広さを見せ、プロのスカウトの注目を集めた。

 そして明治大と亜細亜大が登場する。初戦、明治大は創価大と対戦し、山崎福也が1失点で完投勝利で勝ち上がる。亜細亜大も近大工学部戦で山崎康晃が先発し完封で勝ち上がった。続く準々決勝で亜大の山崎康晃は得意のリリーフで2回2/3をノーヒットに抑えて2勝目を挙げていた。

 しかし準決勝、明治大が上武大に食われた。先発した山崎福也は6回まで1失点と好投するも7回に逆転され、上武大の横田哲に抑えられた。亜細亜大は日本体育大と対戦し山崎康晃が先発する。しかし3試合連投もあってか3回で降板すると総力戦を見せる。勝ち投手となったのは7回から2イニングを1安打1失点に抑えた薮田和樹だった。

 そして決勝は明治大を破った上武大と亜細亜大の対戦、4試合連投となった山崎康晃が先発し5回まで1失点に抑えたものの、6回に5点を失った。上武大は横田哲が完投して全国初制覇を達成した。

 山崎福也、山崎康晃共に同じように敗れ、本当の実力にはまだたどり着いていないことを知った。

 

つづく

 


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