第72回春季高校野球東北大会が10日に開幕する。今春の宮城県大会を制した仙台育英は、最速145キロ左腕のエース・吉川陽大投手、打線を牽引する4番・川尻結大捕手、そして大型スラッガーの高田庵冬内野手がドラフト候補として注目される。
毎年注目される仙台育英のエース、今年は145キロ左腕・吉川陽大投手
仙台育英といえば、毎年、夏に向けて一気に注目されていくチームだ。東北という地域のこともあり、また春季東北大会の日程が全国で最も遅い事もあり、春先は他の地区の選手が注目される。しかし、各地区の春季大会が終了した後に行なわれる東北大会で、仙台育英が満を持して登場するが如く、その圧倒的なチーム力と、冬に成長した選手が現れるのだ。
そして毎年140キロどころから150キロの投手を複数そろえてくる。昨年も武藤陽世投手、佐々木広太郎投手といった140キロ投手陣を揃えており、山口廉王投手が急成長して151キロを記録するとオリックスにドラフト3位で指名をされた。一昨年も高橋煌稀投手、湯田統真投手、仁田陽翔投手の150キロトリオを形成し、初夏から夏の話題を掻っ攫った。
そして今年、エースとしてマウンドに君臨するのは吉川陽大投手。春は右足首捻挫で出遅れたものの、「下半身のトレーニングなど、できることをやりました」と地道な努力を重ね、復帰後は圧巻の投球を披露する。宮城県大会では2試合に登板し、計8回2/3を3安打12奪三振無失点。昨秋の宮城県大会から公式戦では28イニング連続無失点を継続している。
冬は「とにかく投げ込んだ」と話す。週2回ブルペンに入って120球を投げ、「ストレートの強さを意識しつつ、コースに投げ分けてきたので、バッターの左右関係なく投げられる実感は湧いてきました」と球速と制球力をアップさせた。球速は145キロまで伸ばしている。そして今年3月に関西遠征をすると、大阪桐蔭、京都国際、智弁学園といった強豪校と対戦し、「久しぶりにどれだけ修正しても全部打たれて、ぼこぼこにやられました」と打ちのめされた。「真っすぐだけでは通用しない」と痛感し、新たにカーブとチェンジアップを習得。直球や落差の激しいスライダーに加え、緩急をつけた投球を身に着けた。
目標とするのはヤクルトの高橋奎二投手で、「ストレートで押しながらも、チェンジアップやカーブでカウントを取っているので、すごく参考にしています。もっとチェンジアップとカーブの質を上げて、球速も上げていきたいです」と話し、高校卒でプロ入りすることを決め、ドラフト会議での指名に向けて148キロを目指すと話した。
4番・川尻結大捕手、「仙台育英近年No.1右打者」の呼び声高い強打の司令塔
打線の中心を担うのは、4番に座る川尻結大捕手だ。長打力と対応力を兼ね備え、広角に打ち分ける技術も持つ。「昔からバッティングは得意でした」と話し、仙台育英の須江航監督も「どっちにもホームラン打てますし、150キロでも、110キロでも打てます。仙台育英の中では、近年ナンバーワン右バッターです」と絶賛する。
今年4月には侍ジャパンU18日本代表候補選手強化合宿に参加。右肩に痛みがあり本調子ではなかったが、「それぞれの投手が自分を持っていて、セオリーみたいなものがありました」と、大阪桐蔭・森陽樹投手や明徳義塾・池崎安侍朗投手などの投手の球を受け、気付きが多かったと話す。
捕手については、高校1年の6月に内野手から捕手に転向した。チームには最速150キロ超えの仁田投手などがおり、球を受けるのも「怖くてしょうがなくて。とにかく球を受けて慣れました」という状態だった。しかし、2年春には捕手としてスタメンの座を掴んだ。「練習してもうまくならないですし、ブロッキングで当たって痛いのに、パスボールをしてしまって。何のためにやっているんだろうと思っていました」と捕手としての苦労をしながらも、「ここに来たからには、やるしかない」と話し、「さらに上の舞台でも通用する4番捕手を目指し、守備を極め抜く」と、強打で主軸を打つ捕手としての成長を誓った。
大型スラッガー高田庵冬内野手、走攻守三拍子揃ったロマン砲
183センチ90キロの恵まれた体格からのパワーを見せるのが高田庵冬内野手だ。今春宮城大会までに高校通算28本塁打を記録しており、「バッティングは自分の取り柄であり、ずっと自信を持っています」と話す。昨秋の宮城県大会では両翼100メートルの球場でレフトへ場外ホームランを放つなど、その長打力に須江監督は「歴代で1番」と話す。
しかし、高田選手の魅力は打撃だけではない。この大きな体で50メートル走6.1秒の俊足を持ち、今春の宮城県大会ではスタメン3試合で6盗塁を記録した。遠投も中学引退時で105メートルと強肩も兼ね備える、走攻守三拍子揃ったスラッガーだ。
昨秋までは主に一塁を守っていたが、昨年冬から三塁手に挑戦している。もともと三塁手の経験はあったものの本格的な練習は昨年11月からで、「自分には技術がないので、とにかくノックで数をこなして差を埋めました」と、午前8時から午後1時まで守備練習に明け暮れるなど努力を重ね、この春にはスタメンの座を掴んだ。
課題は「甘い球をファウルにしてしまったり、捉えきれないところがあります」と話し、打撃練習で「1球に意識を集中してファウルにしない、確実に捉えるようにしています」と、集中力を高めて打撃をする練習に取り組む。高田選手も将来的にプロの世界で活躍するために、走攻守すべて磨いていく。
また東北大会から夏の話題を席巻していくかもしれない仙台育英、その話題の中には進路についても話題となる。2年前は150キロトリオがプロ志望届を出さずに大学に進学すると決断して話題となった。今年、東京六大学を制した早稲田大のエース・伊藤樹投手も高校時代にドラフト指名確実と言われたが大学に進学をしている。吉川投手はプロ志望を明らかにしており、進路についても注目される。
吉川陽大投手 プロフィール
- 氏名：吉川 陽大（よしかわ あきひろ）
- 生年月日：2007年12月28日
- 出身地：神奈川県横浜市（出生は広島県広島市）
- 経歴：茅ケ崎エンデバーズ（小3） – 横浜都筑シニア（中学） – 仙台育英高校（3年）
- 投打：左投左打
- 身長・体重：176cm72kg
- ポジション：投手
- 主な特徴や実績：最速145キロの左腕。今春宮城県大会では2試合8回2/3を投げ12奪三振無失点。公式戦28イニング連続無失点継続中。カーブとチェンジアップを習得し投球の幅を広げる。目標とする投手はヤクルト・高橋奎二投手。高校卒業までに148キロ到達とプロ入りを目指す。好きな芸能人は箭内夢菜。
川尻結大捕手 プロフィール
- 氏名：川尻 結大（かわじり ゆいと）
- 生年月日：2007年8月6日
- 出身地：愛知県名古屋市
- 経歴：ツースリー大府少年野球クラブ（小2） – 愛知名港ボーイズ（中学） – 仙台育英高校（3年）
- 投打：右投右打
- 身長・体重：172cm84kg
- ポジション：捕手
- 主な特徴や実績：仙台育英の4番。長打力と対応力を兼ね備え、広角に打ち分ける技術を持つ右打者。須江航監督からは「仙台育英の中では、近年ナンバーワン右バッター」と評される。2025年4月に侍ジャパンU18日本代表候補選手強化合宿に参加。高校1年6月に内野手から捕手に転向。50メートル走6秒5。好きなアーティストはAimer。
高田庵冬内野手 プロフィール
- 氏名：高田 庵冬（たかだ あんと）
- 生年月日：2007年12月12日
- 出身地：滋賀県彦根市
- 経歴：多賀少年野球クラブ（小1） – 滋賀野洲ボーイズ（中学） – 仙台育英高校（3年）
- 投打：右投右打
- 身長・体重：183cm90kg
- ポジション：内野手（三塁手、一塁手）
- 主な特徴や実績：高校通算28本塁打（今春宮城大会まで）を誇る右の大型スラッガー。須江航監督から「長打力に関しては、歴代で1番」と評される。50メートル走6.1秒の俊足も併せ持ち、今春宮城県大会では3試合で6盗塁。遠投105メートル。仙台育英では1年春からベンチ入り。好きな野球選手は巨人・岡本和真。
コメント