高校生、大学生、社会人の中で、あえて社会人から2013年のドラフトの行方を見てみる。
投手の候補
2010年の大学生ドラフト候補だった選手が解禁となり、多くの有力選手が社会人に進んでいる。筆頭格は愛知学院大時代に150kmの速球を武器に全日本選手権などでも好投を見せていた浦野博司投手だった。しかしセガサミーに入り登板はしているのだが、投球内容も迫力もいまいちという印象を受ける。大学時代からパワーアップした投球を見たかったのだが残念だ。
その中で、日大時代に4年生秋で開花したJR東日本・吉田一将投手が1年目から素晴らしいピッチングを見せ、ドラフト1位候補に名乗りを挙げた。191cmの身長から投げられる150kmの速球と変化球はすばらしい。しかし、社会人野球で完投することはなかなか難しいのだが、6回くらいから球威が落ちるなどスタミナに課題もありそうで、そこを克服できるかどうかとなる。
その他、法大でドラフト上位候補に挙げられていたJX-ENEOS・三上朋也投手は今年前半は良いピッチングを見せていたが、都市対抗などでは調子を崩して登板機会が少なかった。復活すればこちらも190cmの大型投手だけに上位に上ってきそうだ。桐蔭横浜大の大エースだった富士重工の東明大貴投手も躍動感のあるフォームから140km後半の速球を投げている。一発を浴びるなど失投を減らすことが課題だが、楽しみな選手。
注目したいのは3年目となるパナソニック・秋吉亮投手。サイドスローからの140km後半のストレートは評価は高いままで固まっており、ドラフトの指名は間違いない。また、七十七銀行・相原和友投手にも注目。186cmの大型左腕投手で球速は141kmとまだまだだが、フォームが素晴らしく130km台のストレートでもバッターは差し込まれる。オリックススカウトも球威が増せばドラフト上位候補と評価しており、来年の成長に注目したい。
野手の候補
野手では何と言っても目立つのはJR東日本・田中広輔選手。ヒットの打球も強く、塁に出れば盗塁を決めてチームの勝利に貢献するリードオフマン。高校時代のプレー映像が出回っており良くない印象ももたれるが、あれから東海大、JR東日本とプレーの内容も精神的にも確実に成長している。日本生命では同志社大時代にドラフト上位候補ながらドラフト1位以外なら社会人と宣言した小林誠司捕手が社会人でも実績を積んでいる。日本生命では広本拓也捕手という1年先輩のプロ注目の強肩捕手がおり、競争しながら成長している。打撃はたまに出るホームランが社会人でも健在だ。即戦力捕手の欲しいチームはドラフト1位で狙ってくるかもしれない。
また日本生命では中大時代に長打力と確実性のあるバッティングで沢村拓一と共に注目された井上晴哉選手がいる。今年は春先にホームランを連発し、先日の台湾で行われたアジア選手権でも代表入りした。他にも同志社大でエースとして活躍した藤井貴之投手、大阪教育大時代に152kmを記録した山本翔投手など、日本生命に注目選手が多い。
今年都市対抗・日本選手権を連覇したJX-ENEOSでは、前述の三上投手のほかに、MVP男・大城基志投手がプロを熱望している。130km台のストレートにスクリュー、スライダーのコンビネーションはプロのスカウトも評価が難しかったのだが、今年の実績でドラフト指名に背中を押しそうだ。そのためにも来年、この調子を維持し続ける必要がある。がんばれ!
JX-ENEOSでは他にも中日がドラフト指名を考えながら「下位指名では失礼」と指名しなかった田畑秀也外野手、北海道日本ハムがリストアップしていた優勝請負人・渡邉貴美男内野手、スラッガー候補の井領雅貴選手などが揃う。チームは来年、慶大・山崎錬選手など有望大学生を補強しており、多くの選手がドラフトで指名されることを織り込んでいる。
都市対抗、日本選手権と2大会連続でJX-ENEOSvsJR東日本となり、今年はこの2チームがすば抜けていたと言っていいだろう。来年はこの2チームの独走を許してはいけない。日本の経済状況は良くないものの、日本生命やトヨタ自動車、東芝などの名門チームの逆襲に期待したい。
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