5年ぶり2度目出場の新田(愛媛)のエース右腕・築山朔弥投手(3年)が、全国高校野球選手権大会第5日の1回戦で、花巻東(岩手)に2―4で競り負け、初戦で姿を消した。最速144キロの右腕は8回111球を投げて8安打4失点。強打の相手に互角に渡り合ったが勝利には届かず、この秋のプロ志望届提出は見送る決断をした。「勝てる投手になり、プロ野球選手として甲子園に帰ってきます」と話した。
投手転向2年半、144キロ右腕が花巻東と互角の8回4失点
先発した築山朔弥投手は、186センチの長身から繰り出す140キロ台の直球と、縦に鋭く落ちるスライダー、チェンジアップ、カットボールなどを駆使して粘りの投球を見せた。初回は3者凡退に切って取ったが、2回に2安打を浴びて先制を許すと、4回には自身の暴投などから2点目を失う。6回にも2本の二塁打を浴びて3点目を献上した。それでも5三振を奪いながら要所を最少失点でしのぎ、8回まで投げ切った。
愛媛大会では4試合で25イニングを投げ、わずか3失点。春には四国大会で優勝をした右腕だったが、5季連続甲子園の花巻東打線は容易ではなかった。この日は2安打3得点の古城大翔内野手(3年)ら相手打線に苦しみ、8回には守備の一瞬のスキをつかれて4点目を奪われた。
相手の姿勢からは執念を感じ取っていた。「ランナーが出てからの小技だったり、つなぐバッティングなど、何としても1点をとるという気持ちが伝わってきた」。愛媛大会にはなかった重圧をマウンドで受け止めながら、「1つの失投だったり四球だったりが命取りになるなと。少しでも真ん中にいったら(打たれる)」と、全国の厳しさを実感した。「自分のピッチングをさせてくれないようなチームだった。1つの失投が命取りになる甘さが出た」と唇をかんだ。
打線も2度1点差に迫る粘り、守備陣も無失策で躍動
打線も食い下がった。2点の先制を許した新田だったが、愛媛大会5試合で49得点をマークした反撃力を発揮する。5回1死二、三塁から木下春空内野手(3年)の中犠飛で1点差に詰め寄ると、再び2点差となった6回2死一、二塁からは8番・DHの秋山祐太内野手(3年)の右前適時打で1点差まで追いすがった。花巻東の先発・萬谷堅心投手(3年)を最後までとらえきることはできなかったが、終盤まで粘りを見せた。
チームの持ち味である堅守も光った。愛媛大会5試合を無失策で乗り切った守備陣は、この日も失策0で聖地に立ち、再三の好守で築山投手を盛り立てた。最終回のマウンドは木下投手が無失点で締めくくった。岡田茂雄監督は「花巻東高校さんの隙のなさを試合を通じて感じた。細かい点が及びませんでしたね」と敗戦を受け止めつつ、「新田高校の形として、守備からリズムを作るっていう形でチーム作ってきましたので、その点に関してはグラウンドで表現できたかな」と穏やかな表情を見せた。
「プロとして帰ってくる」、社会人経てから夢へ
築山投手が投手となったのは体験入学で新田を訪れたときだった。中学まで捕手だったが、岡田監督に「高校では投手をやってみたいんです」と伝えた。勧誘を受けた全ての私学から野手として興味を示される中、唯一投手として入学を認めてくれた同校を選んだ。始動前には監督と「やる以上はプロを目指す」と約束を交わし、中3で183センチあった長身を生かしながら投手らしく変貌を遂げた。
2年秋は四国大会初戦で敗退し、選抜出場が絶望的となった。全国のレベルを知ろうと視察した近畿大会で目にした大阪桐蔭の投手陣は全員が140キロを超えていた。「こういう相手と甲子園で戦うのか…」。当時の自己最速は140キロ未満だったが、冬の体づくりで最速144キロまで伸ばし、スカウトからも注目される存在になった。そして迎えた聖地の舞台で、強豪と8回4失点の互角の勝負を演じてみせた。
「甲子園の結果次第で」と考えていた進路だったが、社会人でのプレーを選択する。「その上で社会人だったりもう一つステップを踏んでからプロを目指した方がいいかなと感じました」と話す。そして、「次のステージではこの悔しさを胸にやっていきたい」と前を見据えた。仲間との日々を「こいつらと野球ができてよかった。今のチームだからここまで来られた」と振り返った右腕は、こう誓った。「1回全てを見つめ直して、勝てる投手になってプロとして甲子園に帰ってくる」。投手転向から2年半、聖地のマウンドが夢への道を鮮明にした。
【築山 朔弥】 プロフィール
- 氏名:築山朔弥(さくや)
- 所属:新田高校(3年)
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 身長:186cm
- 主な特徴や実績:中学までは捕手だったが、高校進学時に投手へ転向。186センチの長身から最速144キロの直球と、縦に鋭く落ちるスライダー、チェンジアップ、カットボールを操る右腕。今春は四国大会を制し、愛媛大会では4試合25イニングを3失点と安定した投球を見せた。5年ぶり出場の甲子園1回戦では強豪・花巻東を相手に8回4失点と互角に渡り合った。プロ志望届提出は見送り、社会人でさらなる成長を期し、「勝てる投手になってプロとして甲子園に帰ってくる」ことを目指す。















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