第108回全国高校野球選手権大会は第2日、聖隷クリストファー(静岡)の最速150キロ左腕・高部陸投手(3年)が佐野日大(栃木)と対峙した。「高校四天王」の一角に数えられる注目左腕は9回129球を投げ抜き、6安打1失点(自責0)で10奪三振と力投したが、味方打線が相手エース・鈴木有投手(3年)を打ち崩せず0―1で惜敗。2年連続の初戦突破はならなかった。試合後は号泣したが、かねて公言してきた大学進学を改めて明言し、次のステージへと前を向いた。
4回まで無安打、6回は3者連続三振の圧巻投球
高部陸投手は初回、先頭打者を直球で四球で歩かせたが、一塁けん制で誘い出して挟殺プレーで封じ、無失点で立ち上がった。その後は4回まで1人の走者も許さない完全投球。この日の球速は静岡大会で連発した自己最速タイの150キロには届かず、140キロ台前半にとどまったが、今春のU18日本代表候補強化合宿で沖縄尚学・末吉良丞投手から教わった新球のカーブを効果的に交え、緩急で佐野日大打線を翻弄した。
最初のピンチは5回だった。2死から小島颯人内野手に141キロの直球をはじき返されて初安打を許すと、荒川結衿内野手にも連打を浴び、四球も絡んで2死満塁の大ピンチを背負った。それでも主将の中村盛汰内野手を空振り三振に仕留め、左拳を握って雄たけびを上げた。続く6回はスライダーを決め球に3者連続三振。味方のまずい守備でランナーを背負ったものの、その味方に笑顔を見せてチームの雰囲気を作った。「最後は楽しく終わりたい、いい顔をして終わりたいと思って笑顔を貫こうと」(デイリースポーツ)とマウンドで口角を上げ、チームを鼓舞し続けた。
7回、味方の失策絡みの1点が決勝点に
0―0で迎えた7回、均衡が崩れた。三塁手の失策で走者を許すと、安打でつながれて2死一、二塁。ここで佐野日大の8番・高橋丞三塁手が中堅左へ放った力のない飛球を、中堅手・鈴木悠陽外野手が落球。二塁走者が生還し、この1点が決勝点となった。慣れないナイターゲームで照明が目に入ったのか、守備で生まれた隙を突かれた形だった。
それでも高部投手は仲間を責めなかった。「(打球を)前に飛ばされた時点で自分の負け。1点取られたのは自分の力不足」と、失点の責任を自らに引き受けた。その後は落ち着きを取り戻し、最後まで140キロ台後半の直球とキレのあるスライダーで佐野日大打線を封じ込めた。9回129球、6安打1失点10奪三振の素晴らしい投球を見せたものの、打線は佐野日大・鈴木投手を最後まで捉えられず、1−0で終わった。
号泣の左腕、大学経てプロへ「1年目から活躍を」
129球目に投じた直球で空振りを奪い、10個目の三振を記録した。これが高校野球最後の1球となった。攻撃は三者凡退で試合終了。相手校歌が流れる甲子園の夜空を見上げ、アルプス席に一礼すると、マウンド上で貫いてきた笑顔が崩れ、涙があふれた。「せっかく甲子園に来られた。いい顔をして終わりたい」との思いも、初戦敗退の悔しさには勝てなかった。
昨夏は同校を初の甲子園に導き、明秀学園日立(茨城)との1回戦で1失点完投。この1年で最速は150キロに到達し、横浜・織田翔希投手、沖縄尚学・末吉良丞投手、山梨学院・菰田陽生投手とともに世代の「四天王」と称される存在にまで成長した。
進路については、大会前から公言してきた大学進学を改めて明言した。「大学に行って、レベルアップをして勝てる投手になってプロに行きたい。高卒プロで行くと、そのレベルの高さに自分が負けてしまうこともあるかもしれない。大学4年間で自分を磨きレベルアップし、プロで1年目から活躍できるような投手になりたい」と力を込めた。この日、ナインは甲子園の土を袋に詰める中で、高部投手はそれをしなかった。「自分はプロになってこの甲子園に戻ってきて投げたいという気持ちがあったので」と話した。
この日の投球にはDeNAのスカウト部長を務めた吉田孝司氏も、「決して身長が高いわけではないが、高部の一番の良さは腕の振り。スピード表示はそれほど出ていなくても、打者の手元でピュッと伸びるボールなのだろう。差し込まれていた選手が多かった。今永(カブス)のようなタイプの球質だ。もったいなかったのが、左打者には外中心の配球だったこと。シュート系のボールを覚えれば、内角を突けるようになって幅が広がる。テクニックがあればプロで十分、通用する。高部はどこまで伸びるのか。今後が楽しみな投手だ」と評価した。
2年連続で甲子園に出場した高部投手、この日の投球は納得いくものではなかったと思うが、「チームが苦しくても自分が粘り強く投げるってことは、自分の中では1年間で本当に成長した部分」と胸を張った。大学での4年間では不動のエースとなり、神宮のマウンドで「圧倒できる投手」を目指す。そして4年後のドラフト会議でその名前を聞く事になるだろう。
【高部 陸】 プロフィール
- 所属:聖隷クリストファー高校(3年)
- 出身:埼玉県
- ポジション:投手
- 投打:左投
- 主な特徴や実績:最速150キロの直球にスライダー、新たに習得したカーブを織り交ぜる左本格派。2年生だった昨夏に同校を初の甲子園に導き、1回戦で1失点完投を果たした。この夏の静岡大会では全6試合に登板し、36回2/3を4失点(自責3)、防御率0.74、奪三振率11.78の卓越した数字で連覇の立役者に。横浜・織田翔希、沖縄尚学・末吉良丞、山梨学院・菰田陽生とともに世代の「高校四天王」と称される。最後の夏となった佐野日大戦では9回6安打1失点10奪三振と力投したが1点に泣いた。高卒でのプロ入りではなく大学進学を選び、「大卒1年目からプロで活躍できる投手に」と、聖地への再来を誓っている。
























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