花巻東(岩手)の二刀流・赤間史弥外野手(3年)が、打撃に苦しんだこの夏を、甲子園では走・守で活躍し、甲子園1回戦で新田(愛媛)に勝利した。3-2の8回1死三塁で、相手守備の一瞬の隙を突く神走塁を披露して貴重な4点目をもぎ取ると、直後には2番手として登板し、足をつりながらも左翼で背走好捕を演じた。
ボールに目を切らない、隙を逃さぬ頭脳的走塁
高校1年からその体のサイズに注目され、フルスイングからの高校通算47本塁打の長打力に注目されてきた赤間史弥選手だが、50m6.2秒の足もあり、投げても140キロ後半の威力ある球を投げるアスリートだ。その赤間選手は、今夏も打撃に苦しんでいるが、甲子園では打撃と走塁で大きなプレーを見せた。
1点リードの8回、先頭で木製バットから甲高い音を響かせ、右中間へ二塁打を放って出塁した。1死三塁となり、5番の萬谷堅心投手(3年)の打球は、タッチアップには到底届かない浅い右飛。誰もが得点は難しいと見た場面だった。
だが赤間選手は前進して捕球した右翼手が、バックアップに入った二塁手へアンダーハンドで緩くトスした瞬間、猛然とスタートを切る。二塁手は本塁に背を向けており、握り替えに手間取った。守備陣が虚を突かれる間に、赤間選手は悠々と本塁へ生還した。「弱いボールで、セカンドの握り替えも少し大変になるかなと。ホームに背中を向けていたので、いけると思った」と冷静に状況を読み切っていた。公式記録は犠飛ではなく、右翼手から二塁手への送球間に得点が入った形で、萬谷投手に打点はつかなかった。
これは花巻東が日頃から積み重ねてきた練習の成果だった。岩手大会3回戦の花泉戦でも、俊足の菊池楽人内野手(3年)が同様の走塁で生還している。三塁コーチに入った橋本銀士選手(3年)は「1年生とかが守って、わざと隙をつくってもらうこともしています」と、ミスを突く走塁練習の中身を明かした。佐々木洋監督は「全力疾走は誰でもできる。浅いフライでもホームに還れるように“0・01秒にこだわれ”というのは言っている」と、先の塁を狙う意識を浸透させてきた。50メートル走6秒2の快足を誇る主役が、その教えを大舞台で体現した。
足つりながら背走好捕、二刀流で走攻守フル回転
この日の赤間選手の活躍はこのプレーだけにはとどまらなかった。生還した直後の8回からは2番手としてマウンドに上がり、1イニングを無失点に抑える好救援。しかし9回先頭に死球を与えたところで両足がつり、降板した。「両足のふくらはぎをつってしまった。走っていたときに右がつりかけていて、投げたときに左足がつった」と状態を説明した。
それでも本来の守備位置である左翼に戻ると、9回1死一塁で頭上を襲う大飛球に背走。痛みに耐えながらランニングキャッチで仕留め、抜ければ失点という場面を救った。「痛みよりボールを絶対落とさないという気持ちが強かった」と、満身創痍の全力プレーでチームを助けた。
佐々木監督は「いった瞬間、やばいなと思ったんですけども背走してよく捕ってくれました」と胸をなで下ろした。岩手大会では5試合17打数3安打と沈黙していたが、聖地で見事に復活。「今日は赤間に尽きる。すごい走塁をしてくれた。感心しました。でも、次からもう警戒されるんで使えませんね」と目を細めた。
隙のない野球で接戦制す
打線では、1年夏から4番を務める主将の古城大翔選手(3年)が木製バットを操って2安打3得点と牽引。PL学園・清原和博以来41年ぶりとなる甲子園5季連続4番が、6回に左越え二塁打を放つなど存在感を示した。佐々木監督は先発の萬谷投手が指をつるなど最後まで気の抜けない展開に「四国王者の強打のチームでしたので、いつ点数を取られるかヒヤヒヤしていた」と振り返りつつ、「やっぱりピッチャーが複数枚いてよかった」と、逆境をはねのけた投手陣の厚みを勝因に挙げた。
敗れた新田の岡田茂雄監督は、赤間選手の走塁について「打たれて取られてたらそうでもないが、あの場面で点を取られたのは相当な精神的ダメージを食らったと思いますね」と痛感。「試合巧者というか、選手主体が自立してうまく機能してるなって感じました」と、花巻東の隙のなさに舌を巻いた。「岩手から日本一」を掲げる花巻東は、2回戦で岡山学芸館と対戦する。赤間選手は「最高の準備をして、一戦必勝で自分たちの野球をしたい」と、さらなる躍動を誓った。
【赤間 史弥】 プロフィール
- 氏名:赤間史弥(あかまふみや)
- 所属:花巻東高校(3年)
- 出身:岩手県(黒石野中→盛岡北リトルシニア)
- ポジション:外野手(投手)
- 投打:左投右打
- 身長・体重:180cm、98kg
- 主な特徴や実績:1年春からベンチ入りし、2年春から4季連続で甲子園の舞台を踏む投打二刀流。最速141キロの直球を持ち、50メートル走6秒2、遠投95メートルの身体能力を誇る。高校通算47本塁打のスラッガーでありながら、隙を逃さぬ野球IQの高さも武器。1回戦の新田戦では8回に「100万回に1回」と評された頭脳的走塁で生還し、救援登板や足をつりながらの背走好捕と走攻守で躍動した。2回戦以降もチームの中心として、悲願の「岩手から日本一」に向けたさらなる活躍が期待される。

















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