2016年ドラフト総決算~その6:予感~

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2015年、高校、大学、社会人のステージで、ドラフト候補たちが火花を散らす。その戦いで選手たちは輝きを放ち、2016年のドラフトには大豊作の予感が漂い始める。田中正義投手、寺島成輝投手、柳裕也投手などがどのようにしてドラフト1位指名にたどり着いたのか、2016年のドラフトストーリー。

高校の主役

高校2年生でも主役を奪う役者が出はじめる。センバツでは常総学院の鈴木昭汰、木更津総合の早川隆久、静岡の村木文哉といった2年生が次々と1回戦の先発マウンドに上る。そして鈴木は7回6安打無失点、村木は9回4安打1失点、早川も7回6安打3失点で勝ち上がり順調なスタートを切る。2回戦では鈴木が今治西に7回1/3で1安打11奪三振無失点と圧巻の投球を見せると、直接対決となった村木と早川は4-2の投げ合いを演じる。静岡の1番・鈴木将平は早川から2安打を放ちチャンスメークをする。近江も0-3と劣勢の場面で京山将弥が登板し1回をノーヒット1奪三振に抑える好投を見せた。

準々決勝では鈴木は大阪桐蔭に、村木は敦賀気比にそれぞれ敗れるものの、全国ベスト8まで勝ち上がる。大阪桐蔭は準決勝で敦賀気比に2回までに10点を奪われる。そこで登板したのが2年生の高山優希、左腕から絶妙のコントロールを見せて4回1/3を4安打無失点に抑える。勝ち上がった敦賀気比は優勝を納める。しかしエースの平沼翔太が一人で投げ切り、2年生で注目の山崎颯一郎の甲子園デビューはお預けとなった。

夏、大阪では2回戦で大阪桐蔭と履正社が対戦する波乱の組み合わせとなる。初戦に両校が誰を先発に持ってくるのか、球場に詰めかけたファンやスカウトも注目をした。大阪桐蔭は3年生エースの田中を持ってきたが、履正社は2年生の寺島成輝をぶつけてきた。前年の甲子園覇者を相手に寺島は安定したピッチングを続けたものの終盤に点差を付けられ、完投したものの1-5で敗れ、大阪桐蔭の壁に阻まれた。

神奈川では決勝戦で東海大相模と横浜のライバル校がぶつかった。東海大相模は3年生でドラ付1位候補の小笠原慎之介が登板し、横浜は2年生エースの石川達也が登板する。しかし東海大相模の実力が上回り石川が4回3失点で降板すると、2番手で登板した藤平尚真も抑えられず、2回6安打4失点で突き放された。こちらも神奈川大会の壁を実感させられる形となった。

甲子園に出場する事は本当に難しい。常総学院の鈴木、木更津総合の早川といったセンバツでこの世代の主役になりかけた選手たちも甲子園出場を逃していた。それでも東海大甲府の菊地大輝、静岡の村木や鈴木将平、敦賀気比の山崎颯一郎は春に続いて出場を決めていた。

そして新たな顔ぶれも、甲子園の球速ランキングでは、東海大相模の小笠原が152キロ、仙台育英の佐藤世那が146キロで2位となる中、同じく146キロに東海大相模の北村朋也と東海大甲府の菊地大輝が並ぶ。そして145キロに花咲徳栄のサウスポー・高橋昴也が名を連ねた。他にも静岡の村木が144キロ、同じく敦賀気比の山崎颯一郎が144キロで並んだ。

北村は3回戦で点差の開いた場面で登板し1回を1安打1奪三振無失点に、高橋はリリーフとして2回戦、3回戦に登板、3回戦の鶴岡東戦では1-0の7回途中から登板すると、2回2/3を1安打4奪三振無失点に抑える投球を見せた。

敦賀気比はエースの平沼が花巻東に4回まで4失点し外野に退くと、山崎が甲子園初登板のマウンドに上る。山崎は2回をノーヒット4奪三振パーフェクトに抑えてスタンドもざわめく投球を見せ、チームも3点を奪って3-4と迫る。敦賀気比が逆転をするかと思われたが、7回に山崎が降板し平沼が再びマウンドに戻ると4失点し決着した。もしこのまま山崎が投げ続けていたら、チームにとっても山崎にとっても違った将来があったと、後から思い返される試合の一つとなった。

広島新庄の堀瑞輝も好投で力を見せる。初戦の霞ヶ浦戦ではドラフト候補の綾部翔と投げ合い9回で10安打を許すも2失点に抑える。、鹿児島実・綿屋樹は3番サードで登場しいきなり2安打4打点の活躍を見せると、主軸を打ち注目された。静岡の鈴木将平は初戦で姿を消したものの5打数2安打の打撃を見せ、来年のドラフトに向けてスカウトに大きな印象を残した。

大学の主役

2015年春の東京六大学は、2年生でエースとなった投手たちにやや成績の差が表れる。慶応大の加藤拓也が4勝を挙げて勝ち星を伸ばす中、明治大の柳裕也と立教大の沢田圭佑は2勝3敗に終わる。沢田は東大戦で10安打を許して4失点でノックアウトをされるなど、明らかに昨年とは違うピッチングとなっていた。リーグを制した早稲田大は石井一成が5番ショートのポジションを奪って定着し、打率.333に1本塁打を放ってチームの優勝に貢献すると、大学野球選手権でも決勝の9回に優勝を決定づける2ランホームランなど3安打4打点の活躍で、大学日本一を手にした。

それでもこの夏の主役はほかにいた。東京新リーグでは2人の右腕に注目が集まった。一人は誰あろう創価大の田中正義、もう一人は流通経済大の生田目翼、二人はこのシーズンでともに6勝0敗の成績を残す。防御率は生田目の2.65に対し、田中は0.40と上回った。しかし創価vs流通経済の対戦で二人が投げ合う事はなかった。1戦目と3戦目に先発して勝利した生田目が、2戦目に先発して勝利した田中を抑えてリーグ戦優勝を果たし、MVPに輝いた。生田目は大学野球選手権でも153キロの速球を見せ、決勝戦まで勝ち進む快進撃の立役者となる。プロのスカウトや報道陣も新たなスターの誕生にいろめきだつが、生田目は「卒業したら公務員になってのほほんと暮らしたい」と話し、それがまた話題となるのだった。

また首都大学リーグでは東海大の丸山泰資が輝いた。日体大と試合でパーフェクトを達成、150キロの速球と鋭いスライダーは大学生では打てないと言われるほどのキレ味を見せた。その首都大学リーグでは2位に桜美林大が食い込んだ。桜美林大は2014年に一部昇格を果たすと、佐々木千隼が首都大学の強豪を相手に好投を見せていた。そして佐々木はこのシーズン5勝2敗の成績で、チームの大躍進に貢献をした。東海大が優勝を納めたが、首都リーグに大変動をもたらした。

大学野球選手権には、その東海大の丸山の他にも、富士大の小野泰己、専修大の森山恵佑、神奈川大の濱口遥大、そして九産大の高良一輝も姿を見せる。高良は仙台大戦で9回2安打16奪三振の圧巻投球を見せ、この年のドラフト候補・熊原健人に完全に投げ勝った。東海大の丸山は先発はできなかったものの2回戦の九産大戦で4番手で登板し、2回ノーヒット4奪三振のピッチングを見せ、同じく4番手で登板した高良と1イニングを投げ合う。

また2回戦に勝ち上がった東農大北海道は、早稲田大の試合に右サイドスローの水野滉也をぶつけた。しかし水野は3回途中まで5安打2失点と期待に応えらえず涙を流す。この悔しさをバネに水野は急成長をする事になる。神奈川大の濱口も皇学館大戦で3安打10奪三振で完封し実力の高さを見せ、連投の大商大戦でも9回を3失点に抑えて投げ切り延長はリリーフに託して勝利する。準決勝の流通経済大戦では3番手で登板し3回を1安打無失点に抑えたが、その試合で完封勝利を挙げる生田目の姿を見つめていた。

衝撃

ユニバーシアードを戦う侍ジャパン大学代表メンバーが発表され、田中正義、柳裕也、濱口遥大、沢田圭佑、佐藤拓也が選出された。6月29日に行われたNPBの若手の選抜チームとの壮行試合は、衝撃となって全国に伝わった。

テレビ中継も行われたこの試合、大学代表は先発した濱口がプロ打線につかまり2回で7安打2失点、大学トップクラスの選手でもプロとはまだ差があるかという声も出た。しかしその声を、2番手で登板した田中正義が歓声へと変えていく。150キロの速球をズバズバ投げ込む田中に、プロの打者が手も足もでない。7者連続で三振を奪う姿はまさに痛快だった。結局予定よりも1イニング多く投げた田中は、4回をパーフェクト、打者12人から8つの三振を奪った。

この衝撃はテレビ中継で全国に伝わり、プロ野球ファンにも「来年は凄い投手がいる」と認識させる。この投球の衝撃はいつまでも消える事なく、2016年秋のドラフト会議まで続いた。

またユニアーシアードでは明治大の柳裕也が初戦の韓国戦で6回ノーヒット10奪三振、準決勝のアメリカ戦でも4回2/3を1安打8奪三振でそれぞれ無失点に抑える圧巻のピッチングを見せ、これが柳投手の自信につながり秋のブレークへとつながっていく。

衝撃は秋も続いた。田中正義は秋のリーグ戦で再び6勝0敗、先発した6試合すべてを完封し、防御率0.00でシーズンを終えた。

東京六大学では慶応大の加藤が4勝1敗、防御率1.19で最優秀投手となるが、明治大・柳裕也は5勝2敗、防御率1.95で2位に続く。立教大の沢田も2勝1敗と苦しみながらも防御率2.03で3位となり、エースの意地を見せた。

社会人の主役

社会人の主役には、東京ガスの山岡泰輔と大阪ガスの酒居知史が名乗りを上げていた。満を持して先発として投げ始めた山岡だったが、まだ安定しない投球が続く。投球の幅を広げようと、ストレートとスライダー以外の球を使ったが、それによって逆にストレートの勢いもスライダーのキレも抑えられた感じもしていた。その中で大学卒1年目のルーキー・酒居が好投を見せ注目されていた。

その二人は都市対抗の1回戦で直接対戦する事になる。東京ガスvs大阪ガスの対決でともにマウンドに上がった山岡と酒居、初回にお互いに1失点をするなど緊迫のマウンドとなる。山岡は2回にも1失点するが、7回2/3を5安打7奪三振2失点とまとめる。一方の酒居は5回で降板するが、4安打6奪三振1失点と力投した。投球内容は互角も勝ち上がった大阪ガスは、その後リリーフに回った酒居の好投もあり決勝へと進出する。そして決勝では酒居が再び先発し、6回1/3を4安打3奪三振2失点と日本生命を苦しめた。試合はその後、延長14回まで続く大熱戦となり、14回に日本生命が勝ち越す。優勝は逃したものの、大阪ガス・酒居は、山岡と肩を並べる社会人の主役となった。

大阪ガスの酒居は秋の日本選手権でも初戦で9回4安打8奪三振で完封、準々決勝でも7回4安打無失点の好投を見せ、チームをベスト4に導く。東京ガスはこの大会に出場を逃し、山岡vs酒居の戦いは翌年に持ち越しとなる。

 

社会人、そして大学で主役の顔が出そろいつつあった。そして特に田中正義は、12球団のスカウト幹部クラスが注目した。「12球団1位指名」の予感もさせ、まさに怪物に育っていった。大学生投手はほかにも主役クラスの顔が揃った。反面、高校生ではまだ主役の顔は見えておらず、2016年のドラフト会議は大学生投手を中心とした豊作という声が、聞こえ始めていた。

つづく

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