神奈川県勢初の4季連続甲子園出場を狙う横浜が、第108回全国高校野球選手権神奈川大会準決勝で、3年前の夏に敗れた慶応を4―0で下した。今秋ドラフト1位候補右腕・織田翔希投手(3年)は、自己最速を3キロ更新する世代最速157キロをマークし、6回0/3を無安打無失点と圧倒。右ふくらはぎの違和感で無念の途中降板となったがチームを決勝進出に導き、県内38連勝を飾った。ネット裏にはNPB12球団とメジャー4球団の少なくとも16球団が集結し、怪物右腕に絶賛の声が挙がった。
常時150キロ超の異次元投球、2回に世代最速157キロでハマスタどよめく
炎天下の横浜スタジアムだったが、織田翔希投手は初回から飛ばしていく。慶応先頭の矢口翔大外野手(2年)への4球目に自己最速を2キロ更新する156キロを計測すると、初回のストレートは5球すべてが150キロ超え。矢口投手を空振り三振に仕留め、慶応の二刀流・湯本琢心投手(2年)をボテボテの投ゴロに打ち取り、最高の立ち上がりを見せた。
ギアはさらに上がった。2回2死無走者、八百板直内野手(3年)への初球に、今度は自己最速を3キロ更新する157キロを計測。左飛に打ち取った1球でも再び157キロをマークし、スタンドから大きな拍手が沸き起こった。世代最速の投球に、織田投手は「ビックリしているところもある。(球場のどよめきが)楽しいという気持ちがありました」(スポーツ報知)と冷静に振り返った。初回から3回途中まで直球は15球連続で150キロ台が続き、全48球中42球が150キロ超という異次元ぶりだった。
強烈な存在感を放つ一方でアクシデントもあった。5回の投球練習時に右足の違和感を訴え、6分間の治療を受けて続投。それでも最速155キロと球威は衰えず、連続四球を与えながらも無失点で切り抜けた。6回は3者連続三振と力を見せつけたが、7回先頭への投球中に再び異変を訴え、84球で5奪三振、無安打無失点のままマウンドを降りた。「9回投げたかったなという思いが強くある」と悔しがりつつ、降板直前も154キロを計測。直球の大半が150キロを超える投球で慶応打線をねじ伏せた。
16球団のスカウトが絶賛「1位でないと獲得できない」「高校生のレベルではない」
ネット裏には、NPB12球団とメジャー4球団の少なくとも16球団のスカウトが集結し、怪物右腕の投球に熱視線を送った。ドジャース、カージナルス、阪神など日米の球団が名を連ね、その評価は軒並み高かった。
千葉ロッテ・高橋薫編成管理部長:「いいピッチャーですよね。ゲーム勘と長い回もしっかり投げられる。もっているものが違う。高校生のレベルではない。下級生のころからずっと投げているが、(3年になって)全体的にレベルアップしている」
千葉ロッテ・中川隆治スカウト:「高い出力とコントロール。高校生ではアタマ1つ抜けています。1位でないと獲得できないでしょう。あとは何球団競合になるか、というところですね」
横浜DeNA・河原アマスカウト:「球速が毎回出ていることがすごい。出力の高さをずっとキープしていて、出たり、出なかったりというのがない。高校生のレベルではないですね」
福岡ソフトバンク・永井智浩スカウト部長:「スピードはもともと出るけど、今日は変化球、とくにスライダーが良かったです。スピードがあり、コントロールが良く、ああいうボールがあるとピッチングの完成度が上がります。ピッチングのうまさが見えて、いい投球内容でした。今年の高校生の中ではレベルが高い」
オリックス・岡崎大輔スカウト:「今日は明らかに初回からの入りが違う。プレーボールであのボールを投げられる。並の高校生じゃないですね。相当な思いをもってリミッターを外している。弓矢と一緒。後ろがしっかり取れているからあれだけの出力を出せる。素晴らしいですね」
広島・高山健一スカウト:「今日は、今まで以上にいい。先発だからなおさらだと思うけど、意識して投げている感覚を感じる。春に比べリリースもいい感じできている。エースとしてここまでの成長を凄く感じますね。素晴らしい将来生を持っていると思います」
阪神・吉野誠スカウト:「しなやかさがあり、腕の使い方が上手。再現性が高く常に150キロを超えてくる。高いレベルでアベレージも速いというのがスゴイところ。ちょっと抜けている」
中日・永野吉成スカウトチーフ:「練習試合も含めて、今日は真っすぐが一番強い印象。体のサイズがあってリーチも長く、これだけ腕が振れる。身体的な優位性がある。高校生レベルでは断トツで抜けているんじゃないですか」
横浜を指導した監督(81)も「高校時代の松坂と比べると、織田の方がいいんじゃないかな。いい投手だよね。将来的にこれからもっと伸びて、プロの世界でも、松坂クラスになる可能性を秘めている」(日刊スポーツ)と、西武などで活躍した松坂大輔投手を比較対象に挙げて高く評価した。
3年前の敗戦が生んだ「織田物語」、運命の慶応戦で恩師の思いに応える
織田投手にとって、この一戦は特別な意味を持っていた。3年前の2023年、横浜は夏の神奈川大会決勝で慶応と対戦し、2点リードの9回に3ランを被弾し、逆転負けで甲子園行きを逃した。この敗戦で村田浩明監督(40)は心身を整えるため家族で九州へ旅行し、そこで福岡の日体大の先輩から「織田という好投手が北九州にいる」との連絡を受けた。当時、足立中軟式野球部の織田投手はすでに143キロを計測する存在だったが、もしあの夏の敗戦が無ければ、織田投手とは巡り会えていなかったかもしれない。
村田監督は「あそこで負けていなければ、織田と会えてなかった。だから織田に、慶応が上がってきた時には『お前で行くぞ。運命的なものだからな』と話をしていた。大事な試合を織田で勝てたのはすごく良かった」と感慨深げに語った。織田投手も「慶応さんは、自分としても特別な思いがある。本当に3年間の集大成。ここまでやってきたものを出そうという思いで投げた」と、指揮官の思いに応えた。
7回の降板の場面では、一塁手の主将・小野舜友内野手(3年)が両手で「×」マークをつくり、降板をアピールした。続投を志願する織田投手を制した小野投手は「織田の体を無理してまで投げさせて、決勝に投げられないという状況をつくるのが一番嫌だった。日本一を獲りたいという思いがあるからこそ、無理してほしくない」(スポーツニッポン)と親友を気遣った。織田投手は「自分としては“何してんだ”っていうのはあるんですけど(笑い)。小野の優しさだと思うので感謝したい」と笑顔で振り返った。
織田投手の後を継いだ2番手・小林鉄三郎投手(2年)も150キロをマークするなど力のある投球で慶応打線を封じ、3番手の池田聖摩投手(3年)が9回2死に初安打を許すまで、3投手による1安打完封リレーを完成させた。
敗れた慶応の森林貴彦監督は「155キロとか高校生が打つ球じゃない。アベレージで150以上出るでしょ。日本の中にあんな球を投げる投手は基本的にいない。NPBだけじゃなくて、メジャーのスカウトも見に来ると納得しながら見ていた」と脱帽。織田投手と対戦した湯本投手も「なかなか前に飛ばせない良いピッチャー。やっぱり伸びが他の投手と違う。真ん中と思って振ったら高め。1~2個分は伸びてくる感じ」と感嘆した。
県内38連勝で4季連続の甲子園まであと1勝。村田監督が「大谷翔平の翔、佐々木朗希の希。愛される2人のような投手になってほしい」と願う逸材は「まずは神奈川で優勝することが目標。しっかりコンディショニングを整えて、万全の状態で決勝戦に臨みたい」と静かに闘志を燃やした。26日、桐光学園との決勝で自身4度目の甲子園出場に挑む。
【織田 翔希】 プロフィール
- 氏名:織田翔希(おだ・しょうき)
- 所属:横浜高校(3年)
- 出身:福岡県北九州市(足立クラブ→足立中・軟式野球部)
- 生年月日:2008年6月3日
- ポジション:投手
- 投打:右投右打
- 身長・体重:186cm、80kg
- 主な特徴や実績:自己最速157キロの直球を武器とする今秋ドラフト1位候補の右腕。体の柔らかさとしなやかな腕の振りから、常時150キロを超える直球にキレのあるスライダーやフォーク、チェンジアップを操る。中学時代は軟式で143キロをマークし、横浜では1年春からベンチ入り。昨夏から5キロの球速アップを果たし、神奈川大会準決勝の慶応戦では6回0/3を無安打無失点、150キロ超を42球も投げ込む異次元の投球で世代最速の157キロを記録。NPB12球団とメジャー4球団の少なくとも16球団のスカウトから「1位でないと獲得できない」と評される怪物右腕として、秋のドラフト会議で最大級の注目を集める。




















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