春夏通算4度の優勝を誇る智弁和歌山(和歌山)のエース右腕・和気匠太投手(3年)が、甲子園のマウンドで躍動し、6回を2安打無失点6奪三振の好投で社を抑えた。打線も少ないチャンスをものにし、2021年夏の全国制覇以来、出場4大会ぶり5年ぶりとなる夏の初戦突破を手繰り寄せた。
負ければワーストタイ、プライドを守り抜いた6回無失点
先発した背番号1の和気匠太投手は球を低めに集めてゴロを量産し、6イニングのうち4回を三者凡退に封じた。3回に1死一、二塁を招く場面もあったが、投ゴロ併殺で切り抜けると、その後は危なげない内容で笑みがこぼれた。「とにかくボール先行しないようにテンポ良くという中で、自分の理想に近いようなピッチングができた」と手応えを口にし、「(夏の大会としては)一番かな」と満足の投球を振り返った。
和歌山大会では3試合で24安打を浴びて6失点と言う内容で、決勝ではマウンドに上がることすらできず、甲子園に入ってからも不安を拭いきれずにいた。そんな和気投手に、4日前の7日の練習で中谷仁監督(47)から雷が落ちた。「1番をつけているやつがそんな顔して野球やるな。やる気ないなら出ろ!」。その言葉で目が覚めた。「悔しいというより、その言葉がうれしかった。吹っ切れました」。迷いが消えたエースは、甲子園出場が決まった段階から「初戦は僕で行くんやろな、俺が行くっていう覚悟は持っていた」と準備を重ねてきた思いをぶつけた。
名門を救ったピッチング
2021年に全国制覇をした智弁和歌山だが、それ以降、夏は2022、24、25年と出場3大会連続で初戦敗退と苦しんでいたが、その名門をエースが救ったが、「反骨心あります。『打ち勝つ』とばかり言われて。いつか『投げ勝つ』と言われたい。今日は投げ勝ちました!」と話し、投手の力で勝利したことで、エースとしてのプライドを示した。
中谷監督も「その流れをこの代の子たちが一生懸命断ち切ってくれて、本当に嬉しく思います」と最敬礼で応えた。
出場が叶わなかった兄の分まで
和気投手には6歳年上の兄・亮太さんがいる。尽誠学園(香川)で2020年のセンバツ出場を決めていたが、コロナ禍で大会は中止となり、夢が絶たれた。スタンドで観戦した父・英雄さん(51)は「もうかける言葉がなかったくらいで、家族も悔しかったし、弟も同じ悔しさを抱えていました」と当時を語る。甲子園出場を決めた和気投手は「出ることが出来なかった兄の分まで頑張ります」と決意を口にしていた。
くしくも6年前、甲子園の交流試合で尽誠学園と対戦したのが智弁和歌山だった。当時、客席から兄の相手校を見つめていた弟が、今度は自ら朱赤のユニホームに袖を通して聖地のマウンドに立った。前夜には兄からLINEが届いた。激励かと思いきや「お前、チェンジアップ投げるんや?」。和気投手は「あの人はツンデレなので」と、重圧をかけまいとする兄の思いやりと受け取って感謝した。因縁を背負ったマウンドで、兄の分まで腕を振った。
相棒の女房役でU-18日本代表候補・山田凜虎捕手も「今日はブルペンから過去イチというくらい球が来ていました」と話し、和気投手の投球を称えた。次戦の3回戦は敦賀気比(福井)と対戦する。5年前の先輩たちと同じ頂点を目指し、覚醒したエースが波に乗る。
【和気 匠太】 プロフィール
- 所属:智弁和歌山高校(3年)
- ポジション:投手(右腕)
- 主な特徴や実績:低めにゴロを打たせる投球でテンポよく試合をつくる本格派右腕。背番号1を背負う智弁和歌山のエースとして、第108回全国高校野球選手権大会2回戦の社戦で6回2安打6奪三振無失点の好投を披露し、チームに2021年以来5年ぶりの夏白星をもたらした。「打ち勝つ」で知られる名門で「投げ勝つ」を体現する投球術に磨きをかけ、頂点を目指す。


















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