第108回全国高校野球選手権大会第7日の2回戦で、履正社(大阪)が享栄(愛知)を6―2で下し、2023年以来3年ぶりの初戦突破を決めた。最速148キロ右腕のエース・木村颯投手(3年)が今大会最多となる167球を投げ抜き、9回8安打2失点の完投勝利。全国3位153チームの大阪代表として、全国最多174チーム参加の愛知代表との激戦区対決を制した。
甲子園初マウンドの戸惑いを中盤で修正、要所で踏ん張る
木村颯投手は「甲子園初マウンドで見え方が違った」といい、初回に2安打を浴びて先制を許す。享栄は2死一、二塁から左前適時打で1点を先取した。
計7四死球と制球は乱れ、5回まで毎回走者を背負った。それでも「抑えないとと思って投げていました。焦りはなかったです」と強心臓ぶりを発揮する。2―1の5回2死満塁は低めのフォークで空振り三振に仕留めるなど、要所で踏ん張った。「序盤にストライクが入らなくて苦しくなってしまったんですけど、6回から立て直すことができた。変化球でストライクが取れてなくて、まっすぐばっかりになってたんで、そこで変化球のコントロールをもう1回考えてやっていきました」(日刊スポーツ)と試合中の修正が功を奏したことを明かした。中盤以降に調子を取り戻し、最速148キロの直球と低めに落ちるチェンジアップ、スプリットを軸に享栄打線に的を絞らせなかった。
それでも味方打線が木村投手を援護した。1点を追う2回に履正社は、辻竜乃介内野手(3年)の中前打と犠打で2死二塁とすると、さらに左翼線適時二塁打で同点に追い付いた。5回には勝ち越しをすると、8回にも2死二、三塁から2点適時三塁打でリードを広げた。
冬の投げ込みが実らせた167球、憧れの舞台に思い込めて
8回終了時点で球数は145。5点リードで9回を迎えても、木村投手にマウンドを譲る考えは毛頭なかった。試合後は「全然疲れてないです」「体力には自信があるので疲れずに投げられた」と、すがすがしい表情を見せた。
背番号「11」で迎えた昨秋の大阪府大会は5回戦敗退。エースナンバーを逃した悔しさから、自ら投げ込みを始めた。制球の不安定さから控え投手に甘んじていた木村投手が選んだのは「投げ込み」だった。冬場にもかかわらず、1日200球以上を週3日程度続けた。「投げる体力は投げないとつかない。僕は制球力を高めないとエースになれないと考えました」。連日の投げ込みで投球フォームが安定し、球速も2年秋時点の144キロから4キロ上昇。3年春にエースナンバーを勝ち取った。
現3年生は、聖地に一度も立ったことのない世代だった。「ずっと甲子園を諦めきれなかった。だからこそ長い冬も気持ちが切れずに練習できた」。憧れのマウンドを満喫するかのように、167球に全ての思いを込めた。多田晃監督(48)は継投も考えて他の投手にも準備をさせていたが、6回以降の復調ぶりや、8回にリードを広げたことから「最後までエースの木村でいこうと思いました」と起用の理由を明かした。
敗れた享栄の大藤敏行監督(64)も木村投手を高く評価した。「立派ですね。ピンチの場面になると本当に素晴らしいボールを投げてました。ボールが強いだけでなくて、変化球のキレがいい。ここという勝負どころで最高のピッチングをした。大事なところで力が発揮できるところが、うちとの差だったのかな」と脱帽した。
木村投手が見据えるのは、さらに上の舞台だ。「次の試合からはもっとストライク先行でやっていきたい。圧倒的日本一を取りたい」。大阪桐蔭らライバルを下して勝ち上がった甲子園で、エースは白星を積み重ねていく。
【木村 颯】 プロフィール
- 氏名:木村颯(きむら・はやと)
- 所属:履正社高校(3年)
- 出身:奈良県(登美ケ丘中では奈良ヤングでプレー)
- ポジション:投手
- 投打:右投右打
- 身長・体重:170cm、73kg
- 主な特徴や実績:2008年8月1日生まれの18歳。最速148キロの直球に、カーブ、ナックルカーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップと多彩な変化球を操る右腕。昨秋はエースナンバーを逃したが、冬場に1日200球以上の投げ込みを週3日続けて制球とフォームの再現性を高め、球速も144キロから148キロに向上して3年春にエースの座をつかんだ。第108回全国高校野球選手権2回戦の享栄戦では今大会最多となる167球を投げ抜き、9回8安打2失点の完投勝利。チームを3年ぶりの初戦突破に導いた。目標に掲げる「圧倒的日本一」へ、聖地で白星を積み重ねていく。



















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