昨春センバツ王者の横浜(神奈川)が、昨夏の覇者・沖縄尚学(沖縄)と激突し、7―2で優勝候補同士の大一番を制した。今秋ドラフト1位候補で最速157キロ右腕の織田翔希投手(3年)が8回2/3を6安打2失点、12奪三振と好投。春夏の甲子園の球場表示で歴代最速155キロにあと1キロと迫る154キロをマークし、昨夏の優勝左腕・末吉良丞投手(3年)との「ドラフト1位候補対決」に投げ勝った。ネット裏にはNPB全12球団に加えMLBも含めた日米17球団のスカウトが集結し熱視線を送った。
“柔”の投球で王者を封じる、154キロと変化球で12奪三振
優勝候補同士が初戦から激突する組み合わせに、抽選会直後から「事実上の決勝戦」との声が聞かれた一戦。今大会最多の3万7000人が詰めかけた甲子園で、横浜のエース・織田翔希投手が139球の熱投を披露した。初回、先頭を三振に仕留めると、2番玉那覇宝生選手への初球で今大会最速タイの151キロを計測。3回2死からは3番慶留間大武選手への3球目で、今大会最速となる154キロをたたき出した。
速球に照準を絞る相手打線を手玉に取ったのは、変化球を交えた投球術だった。序盤から直球が抜けてシュート回転し、5四死球と制球に苦しんだ織田投手は、3回から変化球主体に切り替えた。キレのあるスライダー、フォーク、カーブを自在に操り、8回まで毎回の12奪三振、うち8個が変化球での奪三振だった。8回1死では102キロのスローカーブも交える遊び心も見せ、「球速よりもしっかりと空振りを変化球で取ることができた。そちらの方がうれしい」と胸を張った。全139球中20球が150キロ以上と終盤まで球威は落ちず、9回2死から後輩の小林鉄三郎投手(2年)にマウンドを譲った。
この日、女房役を務めたのは2年生捕手の脇山魁音選手だ。「点は取られましたけど、うまくリードできたと思います」と振り返り、「織田投手は別に球速を気にして投げているピッチャーじゃないので。織田投手自身のスタイルのピッチングを淡々とできた」と落ち着いた表情で話した。制球が乱れる場面でも「ある程度荒れることを想定して試合に入っているので、そこは動揺せずに配球できた」と、普段から剛腕を受ける信頼関係で強力打線を封じ込めた。
打線も末吉を攻略、6回の猛攻で突き放す
打線も昨夏の優勝左腕・末吉良丞投手を攻略した。2回、2死二塁から脇山選手の左前適時打で先制すると、9番千島大翼選手の当たりを相手左翼手が後逸する間に2点目。3回にも5番江坂佳史選手の中前適時打で加点し、末吉投手を3回3失点でマウンドから降ろした。
6回には打者10人の猛攻で試合を決めた。1死一、二塁から千島選手が左越え二塁打を放つと、主将の1番小野舜友選手が中前2点適時打、4番川上慧選手の中前適時打も続いて一挙4点。7―1と大きくリードを広げた。相手打線からは3回に慶留間選手が織田投手のこの日最速154キロを左前へ運び、「割り切ってストレート一本で打てた。直球は高めが物凄かった。見たことがないような真っすぐ」と振り返った。
NPB全12球団+MLB集結、スカウト評は「高校生ナンバーワン」
ドラフト1位候補対決とあって、ネット裏にはNPB全12球団に加え、ドジャース、ヤンキース、メッツ、パドレスなどMLB各球団のスカウトも集結。日米計17球団が視察に訪れ、阪神はスカウト陣総動員の10人態勢で視察、地元・横浜DeNAは球団社長自らが足を運ぶ異例の態勢で臨んだ。
横浜DeNA・木村洋太球団社長兼チーム統括本部長:「魅力的ですね。興味を持って見に来ています」
横浜DeNA・八馬幹典スカウト:「ストレートも変化球も高いレベルのボールを投げている。あのサイズも素晴らしいし、笑顔も素晴らしいし、高校生の中では本当にトップクラスの選手。持っているものの高さを感じます。一級品です。この大会に合わせてきたと思います。あの素材としてはまだ完成形ではなく、未完成だと思うので、この先の伸びしろはすごく楽しみ」
巨人・榑松伸介スカウトディレクター:「素晴らしい投手だというのは分かっているが、ウチのガンではMAX155出ているし、ストレートの力強さは毎回出てくるたびに上がっている。特に今日はスライダーとカーブがいい。自分でうまくリズムを作って、投球フォームも変えている。リズム感を出して、うまく投げている印象。あとは素晴らしい角度がある」
巨人・斉藤宜之スカウト:「春から比べると変化球が良くなった。特にカーブでカウントが取れるようになっている。ドラフトは1位でないと獲れない。高校生No.1です」
中日・永野チーフスカウト:「いつもよりゾーン内で勝負できていた。一番の魅力は真っすぐのスピードと角度。角度があれば変化球の落差も出る。高校生ナンバーワン」
東北楽天・沖原アマスカウトグループマネジャー:「真っすぐ、スライダー、フォークと全てがいい。余力残しでこれだけ投げられるのだから、言うことなし」
東北楽天・小孫スカウト:「高校生ナンバーワン。すべてが一級品だと思います。初回から9回までのスピードも落ちることなく、球数も多くなってもコントロールもできていましたし、素晴らしい投手だと思います」
北海道日本ハム・大渕隆スカウト部長:「まとまりがよくなってきた。とくに変化球がよく、たまに真っすぐがくる。変化球が全部低めにいって、しかも種類が多いので、高校生じゃなかなか打てない。スピードもいつでも出せるという感じで、楽しんでいる感じもある。全開で放っていないところがニクい。余力をもって、次の手、次の手を持ちながら投げている」
福岡ソフトバンク・永井編成育成本部長:「もともと投げる体力みたいなのはすごい、最近の高校生にしてはある選手だなと思っていた。ストレートの球速帯がプロの水準くらいきている」
オリックス・山口和男スカウトグループ長:「能力が高いし、まだまだ伸びると思います。伸びしろは青天井です」
阪神・吉野誠スカウト:「高校生の右投手では抜けた存在。柔軟性もある。しっかりと自分の投球ができていた。真っすぐもきているのを感じた」
埼玉西武・秋元スカウト・育成統括ディレクター:「真っすぐにも力強さがあった。もともといいのは分かっている。今日はそれを再確認できた」
広島・高山健一スカウト:「真っすぐも良いが、スライダーとフォークの打者の手元での切れが素晴らしい」
千葉ロッテ・榎康弘アマスカウトディレクター:「全ての変化球のレベルが高い。やっぱりスピードボールが魅力。柔らかいフォームで球の質も良いので、高校生ではトップクラスじゃないですか」
メッツ・ジェームズ・カン国際スカウトディレクター:「体が確実に強くなって、去年と比べて球速も球威も増した。体も強いですし、すごくエキサイティングな選手。日本の高校年代の選手ではトップの選手であることは間違いないが、特に身体能力の高さはアメリカの同世代の選手たちと引けを取らない。ストライク率が高く、全球種ある程度投げられるのも魅力。潜在能力は、高校球界でまず上位でしょう」
ロイヤルズ・大屋スカウト:「場面場面で打たせて取るっていうベテランみたいな、力が抜けたような投げ方ができるようになっている」
“平成の怪物”松坂大輔氏が絶賛、次戦の日南学園へ「もっと良い姿を」
ネット裏には横浜OBで“平成の怪物”松坂大輔氏(45)も駆けつけ、後輩の投球を絶賛した。「マウンド上でのたたずまいなど、心身の成長を強調。自身以上のスケールの大きさに太鼓判を押した」と評し、「村田監督は『大怪物に』と言っているとのことですが、自分より織田投手の方がスケールが大きいと思っています。今日の投球でも、これまでより1回りも2回りもレベルアップしたように見えました」と語った。試合後には織田投手と対面。エースは「(松坂氏には)もっと良い姿を見せたい」と誓った。
今夏、チームの合言葉は村田浩明監督(40)発案の「甲子園を楽しむ」。織田投手はその言葉通り、右翼守備でも聖地を味わった。「やっぱり楽しいな、と。甲子園のあそこまで行けて、景色も見ながら帰れたのですごく良かった」と笑みがこぼれた。昨夏はともにU18代表候補合宿で過ごした末吉投手との投げ合いも堪能し、試合後は抱擁して「ありがとう」と言葉を交わした。「自分は来てほしいと思っていた。投げ合ってみたかった。自分も学ぶところがあり、すごく楽しかった」と敬意を口にした。
沖縄尚学とは優勝した昨年の選抜2回戦で対戦し、3回途中4失点で降板した苦い記憶があった。雪辱を果たした織田投手は「またここで成長できる」と王座に視線を送る。村田監督は「負けない投手ということを追求してきた。本当によく投げてくれた。織田が笑顔でいれば選手もスタッフもスタンドも笑顔になってくれる。本当にひまわりのような人間」とエースをたたえた。次戦の2回戦は日南学園(宮崎)に決定。「チームを最後の最後まで勝たせられるような投球をしたい」。松坂大輔以来28年ぶりの夏制覇へ、横浜のエースが伝説に一歩近づいた。
【織田 翔希】 プロフィール
- 氏名:織田翔希(おだ・しょうき)
- 所属:横浜高校(3年)
- 出身:福岡県北九州市(足立クラブ→足立中軟式野球部)
- ポジション:投手
- 投打:右投右打
- 身長・体重:186cm、81kg
- 主な特徴や実績:今夏の神奈川大会で自己最速の157キロをマークした今秋ドラフト1位候補の本格派右腕。昨春センバツでは優勝に貢献した。沖縄尚学との1回戦では8回2/3を6安打2失点、12奪三振と好投し、春夏の甲子園の球場表示で歴代最速155キロにあと1キロと迫る154キロを計測。速球に照準を絞る相手打線をスライダー、フォーク、カーブで手玉に取り、昨夏の優勝左腕・末吉良丞投手との投げ合いを制した。甲子園通算7勝目は横浜の投手では歴代2位タイ。日米17球団のスカウトが視察に訪れ、「大怪物」への進化を期待される右腕が、松坂大輔以来28年ぶりの夏制覇を目指す。


























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