春夏合わせて10度目の決勝進出を果たした智弁和歌山で、5番・二塁の楠本龍生選手(3年)が、その主役となった。20日の全国高校野球選手権準決勝で、智弁和歌山は横浜(神奈川)を7-1で下し、優勝した2021年以来5年ぶり5度目の決勝進出を決めた。楠本選手は横浜の最速157キロ右腕・織田翔希投手(3年)から勝ち越しの右越え3ランを含む2安打4打点。データ班の分析を信じ切って放った一撃を「野球人生で一番完璧でした」と振り返った。
2ボールから「100%真っすぐ」、確信歩きの3ラン
0-1と1点を追う3回、先頭の荒井優聖選手(3年)、井本陽太選手(2年)の連打で無死一、二塁とすると、4番・山田凜虎捕手(3年)が左翼線への適時二塁打で同点に追いついた。なお無死二、三塁の場面で打席に入ったのが楠本龍生選手だった。
初球の151キロ直球、2球目の124キロスライダーがいずれも外角に外れてカウント2ボール。そこから楠本選手は腹をくくった。「ノーツーで真っすぐ一本に張った。自分の覚悟というか、それがしっかりできた打席かなと思います」。3球目、低めの152キロ直球を振り抜くと、打球は一直線に右翼スタンドへ突き刺さった。「球が速いのでしっかり上からたたいて。一番完璧でした。真っすぐ一本で待っていました」と笑顔で語った。
スイング後、確信した楠本選手は余韻に浸るように打球を見届け、一塁手前で右手を突き上げてゆっくりとダイヤモンドを一周した。この“確信歩き”に球場は大歓声に包まれた。中谷仁監督(47)は「あのホームランはチームとして本当に大きかった。打撃がいい選手なので、ここ一番で打ってくれると信じていました」とヒーローをたたえた。
170キロマシンとデータ班、チームで討ち取った世代最速右腕
甲子園歴代最速156キロを記録し、甲子園で過去14試合、被本塁打0だった難攻不落の右腕を沈めた一発は、チーム一丸の準備から生まれた。カウント2ボール0ストライクからは直球が来る――。「サポートメンバーが取ってくれていたデータで、ノーツーで真っすぐは100%と分かっていた」。データ班の分析を信じ切り、直球に絞って待っていた。
前日の19日には、織田投手対策として打撃マシンの球速を170キロ超に設定して打ち込んだ。1打席目は凡退したものの、目は慣れていた。「170キロぐらい速い。でも、それと同じなら打てる」。試合では「(前日の170キロと織田の球が)同じくらいに見えた。だからこそ打てた。一番良い投手だと思うので、打てたのは自信につながる」と手応えを口にした。高校通算21号は、150キロ超を捉えた決勝の3ランとなった。
昨春センバツ決勝では横浜に4-11で敗れ、その相手が織田投手だった。「圧倒的に強くて世間の目は横浜にいっていたので、それなら向かっていける。監督からもこんな戦いやすい試合はないぞと言われていました」。前評判を覆すリベンジに、智弁和歌山打線は織田投手を3回途中でKOし、一気に流れを引き寄せた。楠本選手は4-1で迎えた7回にも、2番手の左腕・小林鉄三郎投手(2年)から貴重な追加点となる中前適時打を放ち、勝利を決定づけた。
“三刀流”の背番号4、田舎のやんちゃ坊主が兄の雪辱
楠本選手は二塁守備でも好プレーを連発し、守備で評価をされていた。使っているグラブは、三塁手の黒川梨大郎選手(3年)がセンバツで使用していたものを借りたものだ。「コーチが(黒川)梨大郎のやつが使いやすいからと。それから良くなった」と秘話を明かした。
智弁和歌山に入ったのは兄への思いからだ。9学年上の兄が田辺工(和歌山)の野球部員で、高3夏に応援に行った試合は1-15の大敗。その相手が智弁和歌山だった。「俺が智弁を倒すから」。小学3年だった少年は、兄の雪辱を果たしたくて野球を始めた。宿敵はやがて憧れの存在へと変わり、両親の反対を押し切って進学した名門で、大舞台の主役に立った。
準々決勝と準決勝の2試合で32安打18得点。伝統の強力打線が復活し、5年ぶり4度目の日本一まであと1勝とした。楠本選手は「決勝で全員が活躍できるように頑張ります」と前を見据えた。
【楠本 龍生】 プロフィール
- 氏名:楠本龍生(くすもと・りゅうせい)
- 所属:智弁和歌山高校(3年)
- 出身:和歌山県田辺市(田辺第二クラブ-東陽中・みなべリトルシニア)
- ポジション:内野手(二塁手)
- 投打:右投左打
- 身長・体重:173センチ、75キロ
- 主な特徴や実績:思い切りのよいフルスイングが持ち味で、高校通算21本塁打を誇る強打の内野手。二塁守備でも名手ぶりを発揮する。今夏の甲子園準決勝では横浜の最速157キロ右腕・織田翔希投手から152キロ直球を捉える決勝3ランを放ち、2安打4打点でチームを5年ぶりの決勝へ導いた。料理好きで寮の食事作りを担う一面から「卵焼き職人」とも呼ばれる。5年ぶりの日本一奪回へ、勝負どころでの一発が期待される。













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