春夏通じて甲子園初出場の有明(熊本)のエース左腕・斉藤遼汰郎投手(3年)が、試合前のアクシデントをはね返す緊急先発で大仕事を果たした。全国高校野球選手権大会3回戦の東日本国際大昌平(福島)戦。先発予定だった相棒の工修哉投手(3年)が試合前練習で左手を負傷したため急きょマウンドを託されると、9回109球を5安打7奪三振1失点で投げ抜いた。打線も8回に一挙4点を奪って3試合連続の逆転勝ち。4-1で「初出場対決」を制し、熊本県勢初出場での8強入りを果たした。
相棒の負傷、託された「ごめん、任せたよ」から始まった完投劇
有明はここまで、先発の工修哉投手から救援の斉藤遼汰郎投手へとつなぐ左腕リレーで熊本大会5試合と甲子園2試合の7連勝を重ねてきた。この日も工が「5番・投手兼DH」で先発予定だったが、オーダー用紙交換後の試合前練習で、別の選手が振っていたバットが左手の甲に当たって負傷。高校野球特別規則に基づき、先発投手は斉藤、「5番・DH」には若杉旭浩選手(3年)が入る先発変更となった。
今大会はいずれも4回からの5イニング登板だった斉藤投手にとって、昨秋の九州大会以来となる先発マウンド。登板前、出場がかなわず涙を浮かべた工投手から「ごめん、任せたよ」と送り出された。「工が投げられないなら、自分が完投するしかないと思った」。前の試合の5回ごろに交代を告げられていた斉藤投手は、「自分も先発したかったんでできてうれしい。完投できる能力は自分でも持っていると思うので、大丈夫かな」と、想定外の先発も勢いよくマウンドへ向かった。
初回1失点から立て直し、テンポよく0を並べ続ける
立ち上がりは苦しんだ。初回、先頭打者に左翼二塁打を浴びると、1死三塁から右前適時打を許して先制点を献上。2回にも暴投などで三塁まで走者を進められたが、ここは無失点でしのいだ。「最初は気持ちが入りすぎてコントロールが乱れた」と話し、先発の難しさを経験したが、3回以降はテンポよく投げ込み、スコアボードに0を並べ続けた。5回には右翼手・山崎暁斗選手(3年)が右翼線への鋭い当たりをダイビングキャッチする好守にも助けられ、最少失点を守り抜いた。
そして味方打線が反撃をする。0-1の8回、先頭の永田晴輝選手(3年)が意表を突くセーフティーバントで出塁すると、四球で1死一、二塁。相手が2番手に代わった直後の初球で重盗を決めて二、三塁と好機を広げた。50メートル走5秒8の俊足で3試合連続三盗を決めた永田選手は「三盗は絶対的な自信がある。今年に入って失敗はないです」と胸を張った。
2死満塁の場面で甲子園初打席となる代打の廣沢遼太朗選手(3年)が直球を左前へはじき返す逆転の2点適時打を放ち、さらに2点適時打で続いてこの回一気に4得点。ユニホームを泥だらけにして粘り強く戦う姿から「泥んこムツゴロウ打線」と呼ばれるナインが、初戦から3試合連続で逆転劇を演じた。
完投勝利、自己採点は7、8点
この日の調子を10点満点で「7か8点」と自己採点した斉藤投手は、「中盤から後半にかけて変化球も真っすぐもストライクが入りだしたのが良かった。全国レベルでも真っすぐの伸びで押せている」と手応えを語った。0-1で援護を待ちながら、「点数を取った回は必ずピンチが来ると思っているので、チャンスを与えずに0で抑えよう」と冷静に見据えていた。
チームが逆転したあとも、その裏を三者凡退で締めると、最終回も3人で斬って試合を決めた。高見一茂監督(46)は「工にもう1回このグラウンドでやってほしい。カバーできるように全員でやろう」とナインに呼びかけていたといい、初の100球超えとなった斉藤投手について「大事なところでやってくれると思っていた。頑張ったと声をかけたい」と話した。
被災地へ勇気、目標は「最終的には優勝」
初出場の熊本県勢の8強進出は1963年の九州学院以来63年ぶり。春夏を通じた初出場校の1大会3勝は、2006年の鹿児島工以来20年ぶりの快挙となった。7月28日に発生した「令和8年熊本地震」で被災した地元へ、有明ナインは3つ目の白星を届けた。
「元気を今日も与えられたかなって。次の試合も厳しい戦いになると思うけど、そこで粘り強くまた元気を与えられるように」。斉藤投手はそう力を込めた。準々決勝は18日、優勝候補の一角・健大高崎(群馬)との対戦が決まった。目標に掲げていたベスト8は達成したが、「最終的な目標は優勝。次の試合も勝てるように頑張ります」と話し、有明は旋風となる。
【斉藤 遼汰郎】 プロフィール
- 氏名:斉藤遼汰郎
- 所属:有明高校(3年)
- ポジション:投手
- 投打:左投
- 主な特徴や実績:最速146キロの直球に変化球を織り交ぜる有明のエース左腕。相棒の工修哉投手との“斉藤工”コンビによる左腕リレーでチームを甲子園初出場に導いた。3回戦の東日本国際大昌平戦では、試合前に負傷した工投手に代わって急きょ先発すると、9回109球を5安打7奪三振1失点で完投。今夏初完投で3試合連続逆転勝ちによる8強入りを牽引した。被災地に勇気を届けるべく、さらなる勝ち上がりが期待される。

















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