2019年ドラフト総決算(7)~ドラフト10大ニュース~その1

2019年のドラフト会議もいろいろなことがありました。今年の10大ニュースの10位から6位まで。

ドラフト10大ニュース

第10位 高校生投手も150キロ時代が本格化

2019年のドラフト会議と言えば、高校BIG4という言葉が良く使われた。ドラフトの流行語大賞があれば、おそらくそれになっただろう。大船渡高校の佐々木朗希投手、星稜の奥川恭伸投手、創志学園の西純矢投手、横浜の及川雅貴投手の事を指すが、この4人の球速を見ると、佐々木:163キロ、奥川:154キロ(158キロ)、西:154キロ、及川:153キロ(左腕)となっている。高校野球もプロ野球の一流投手と同じか、それを上回る球速を記録しており、時代が本当に変わったと実感させられた。

150キロ到達者は他にも、花巻東・西舘勇陽投手(153キロ)、菰野・岡林勇希投手(153キロ)、日大三・井上広輝投手(152キロ)、津田学園・前佑囲斗投手(152キロ)、武田・谷岡楓太投手(152キロ)青森山田・堀田賢慎投手(151キロ)、上野学園・赤坂諒投手(151キロ)、智弁和歌山・池田陽佑投手(150キロ)、霞ケ浦・鈴木寛人投手(150キロ)、習志野・飯塚脩人投手(150キロ)、広陵・河野佳投手(150キロ)、東海大札幌・小林珠維投手(150キロ)がいた。また、木更津総合の根本太一投手、網走桂陽の冨水大和投手、佐久長聖の北畑玲央投手、有明の浅田将汰投手、興南の宮城大弥投手、九州国際大付・下村海翔投手は149キロを記録しており、既に150キロに到達しているかもしれない。

さらに驚くのは、一昔前は150キロを記録した選手がいようものなら、全球団のスカウトが大挙して訪れたかもしれないが、今では150キロを記録してもドラフト下位、または指名漏れになることすらある。

高校生の体格や成長の変化、科学的なトレーニングや栄養摂取など多くの要因があるだろう、間違いなく進化をしている。しかし、他にも要因がある。高校生の球速表示が一般的になり、各球場で球速が表示される。また、観戦者もスピードガンを持つ人が増えており、その情報がSNSなどで広がっていく。球速を測る機会が単純に増えたのだ。また、スピードガンも特性があり、バッターがスイングをしたり、投球を当てた時に、投球の球速とは違う表示をすることがある。良心的なテレビ中継では、バッターがスイングした時に球速が表示されない事があるが、おそらく誤計測を表示しないようになっているのだろう。また、本来ならば正しい球速を測るために、スピードガンに投球との角度を設定してあげる必要があるが、計測位置からの角度を測ったりすることも、それをインプットする事もない。スピードガンの球速はあくまで目安であり、156キロの投手が、155キロの投手より速い、といったりするのは意味がない。

そして球場で使われるスピードガンの多くは、OEMも含めてアメリカのものが使われていると思うが、利用してるスピードガンでも球速表示に傾向があったりして、球場によっては速めの数字が表示されたり、または「ガンが厳しい」と言われる球場もある。

それでも、佐々木朗希投手は163キロは置いておいても、常時150キロ超の球を投げており、奥川投手は140キロ後半の球をしっかりとコースに投げ分ける。これまでとは規格外な投手が誕生していることは間違いない。

そしてこれからのドラフト候補にも目安として、まずドラフト上位で指名されるには150キロはクリアしなければならないだろう。また、ドラフトで指名されるにも、最低でも145キロ前後はマークしておかないといけない。

2019年度-高校生投手のドラフト候補リスト

第9位 U18代表、3位決定戦にも進出できず

佐々木朗希、奥川恭伸、西純矢、石川昂弥などを擁したU18代表、韓国で行われたU18ワールドカップでは金メダルが期待されたものの、結果としては3位決定戦にも進出できず、5位となった。優勝は台湾、2位はアメリカ、3位・韓国、4位・オーストラリアとなった。台湾には雨天コールドで敗れ、アメリカには1次ラウンドで大勝をしたものの、韓国にはタイブレークの末、逆転サヨナラで敗れ、最終戦のオーストラリア戦は力を落としたまま試合にも敗れた。

奥川投手が甲子園で疲労が積み重ねられ、佐々木投手が直前の大学代表との壮行試合でマメを割ってしまうというアクシデントがあったが、特に内野手の守備のエラーが出た事がクローズアップされ、内野手7人の内、森敬斗武岡龍世韮澤雄也遠藤成坂下翔馬熊田任洋といった遊撃手6人をそろえたり、初めて4月にU18代表候補合宿を行ったが、それもあってか、夏の甲子園で活躍した履正社の井上広大選手が代表に入らなかった事など、代表選手の選考に多くの批判が寄せられた。

しかし、U18代表については、最近は良い結果を残せてはいない。大谷翔平、藤浪晋太郎がそろった2011年は前身の18U世界野球選手権大会だったが、結果は6位に終わり、2013年、2015年は準優勝までいったが、2017年は清宮、安田、中村奨成をそろえたもののアメリカ、韓国に敗れ3位に終わっている。また2018年は根尾、藤原、小園などが集まってU18アジア選手権で3位となり、「夏の甲子園で活躍した選手ばかりを集めている」という批判が起こった。

今年はそのリベンジとばかり、高野連も力を入れて4月に合宿を行い、その候補がある程度事前から木製バットを使った練習をしたりしていた。有力高校生が早い段階で高校トップレベルの選手がその力に触れ合う事ができ、その後、急成長をした選手もいて非常に良い取り組みだったが、代表選考についてはさらに難しくなったという印象もある。

特に強く思ったのは、ファーストの大切さと外部コーチの導入だろう。ファーストは、韮澤選手が初めてファーストミットを付けて守ったが、強肩がそろうものの、まだばらつきがある高校生内野手の球を捕球するのは難しかった。それによって内野陣が送球に気を使うようになり、動きが固くなったり、守備範囲が狭くなったりした。もちろん韮澤選手が悪いという事ではなく、ファーストは内野全体の守備力をアップさせるという事を痛感させた。清宮幸太郎選手が2015年、2017年にファーストでプレーしているが、ファーストの守備力の高い選手だった。ファーストでしっかりと経験をしている選手の選出は必要だろう。

また、U18は高野連が監督、選手などを決めて、コーチ陣も各高校の監督が務めている。ただし、確かにトーナメントの戦いにも慣れているし、他チームの分析に長けた監督もいるだろうが、国際大会を多く経験しているわけではないし、大会中に複数の投手を運用する経験はほとんどないだろう。代表の永田監督が批判をされたが、投手や野手の運用にバタつきを感じさせた。そして首脳陣の動揺は選手が敏感に察知する。不安を抱えながら試合をしていた。

高野連にこだわる必要はない。投手の運用はプロで投手コーチを務めた選手が行えばいいし、分析だって専門家がいるだろう。高校野球の監督は、どちらかというと、選手と長い時間を過ごし、選手をしっかりと見ながらその可能性を広げていくという所に優れていると思う。選手を短い時間の間で掌握し、ややドライな関係で戦っているのは、大学、社会人、プロの方が長けているかもしれない。

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第8位 都市対抗でドラフト候補振るわず

2018年は大阪ガスの近本光司選手が橋戸賞を獲得し、三菱重工広島の杉山一樹投手やJR東日本の太田龍投手が150キロ超の球をなげ驚かせた。近本選手はドラフト1位で指名され、阪神で1年目から大活躍を見せた。

しかし今年は、橋戸賞は元プロのJFE東日本・須田幸太投手、久慈賞はトヨタ自動車の大ベテラン・佐竹功年投手だった。他にも、特に野手で目立ったのは日立製作所の大塚直人選手やJFE東日本の内藤大樹などベテランが多かった印象がある。そしてJR四国の高卒1年目・水野達稀選手や岡田耕太峯本匠今川優馬のJFE東日本の1年目トリオ、NTT東日本の向山基生選手やトヨタ自動車の逢澤崚介選手といった1年目の選手の活躍が目立ち、パナソニックの片山勢三選手、日本通運・稲垣誠也選手、諸見里匠選手、大阪ガスの小深田大翔選手などの2年目はそれほど目立っていなかった。

また投手でも期待された高卒3年目トリオ・立野和明投手、JFE西日本・河野竜生投手、JR東日本・太田龍投手も、素質の良さは見せるものの社会人3年目の集大成というピッチングは見せられなかった。ドラフト会議では結果的に4人がドラフト1位指名をさてたが、野手については全体でもJR西日本・佐藤直樹、Honda鈴鹿の柘植世那捕手の3人しか指名されず、惨敗という状況だった。

社会人野球の選手は10人が指名されたのに対し、独立リーグの選手は育成指名が多かったとしても9人が指名され、人数で行けば逆転されるかもしれない。社会人野球は大企業がスポンサーとなっており、狭き門のため大学から有望な選手が入ってくるが、大学代表vsU18代表の壮行試合が行われているのに対し、社会人代表はほとんど注目をされずにいる。

ドラフトでは元々、大学生の指名者が多かった。そして高校生と社会人が同じくらいの割合で指名をされていた。しかし、高校生の能力が高くなり、また高校野球は注目度が高く、社会人野球の選手が不利な状態になってきている。日本野球連盟は相当の危機感を持つ必要があるだろう。代表チームは大学生との壮行試合を行ったりできないだろうか。また、最近は大学生と高校生の練習試合も行われている。大学チームは1,2年生の実力の近い選手が出ての対戦となるし、「学生野球」という壁があるのかもしれないが、もっと開放していく必要があるのではないか。

他にも、社会人野球の試合では弾道計測(トラックマン等)の情報をオープンにして、プロ野球選手と比較しても上回っているなどのアピールをしても良いと思う。プロ1軍と比べても力のある選手はたくさんいると思うから、アピールできていないのはもったいない。

2019年・都市対抗野球ドラフト番付

第7位 日米大学野球で侍ジャパン大学代表が勝利

侍ジャパン大学代表は日米大学野球で4勝1敗の成績を残し優勝した。明治大の森下暢仁投手が5戦中3戦に先発、5イニングまで限定とし、中2日、中1日という間隔で先発し、1戦目は5回2安打9奪三振無失点、3戦目は5回5安打6奪三振2失点、5戦目は5回1安打2奪三振無失点と、素晴らしい投球だった。

この起用が出来たのは、強力リリーフ陣のおかげだろう。筑波大・佐藤隼輔、東海大・山崎伊織、日体大・吉田大喜、そして苫小牧駒大・伊藤大海が、先発以上の球威を見せ、スキを見せなかった。プレミア12を戦った侍ジャパントップチームもそうだったが、リリーバーの役割が非常に大きいことを感じさせた。

また野手も1番・宇草孔基(法政大)を先頭に3番・柳町達(慶応大)、4番・牧秀悟(中央大3年)から、佐藤都志也郡司裕也といった主軸への繋がりも機能し、捕手・海野隆司(東海大)、ショートの小川龍成児玉亮涼、そしてU18に続いて大学でも主将となた篠原涼と、バランスの良いチームだった。

代表は、代表経験のある東北福祉大・津森宥紀投手や東海大・小郷賢人投手、国際武道大・勝俣翔貴選手や主軸候補の佐藤輝明選手、ショート候補の杉崎成輝選手が故障などにより選考されなかったり辞退したりも相次ぎ、また1年生・森下翔太選手を選考するも日米大学野球で不調だったり、また平塚で行われる選考合宿が雨天のため、急遽・日体大のグラウンドに移って行われるなどいろいろなことがあったが、生田監督は素晴らしいチームを作った。

侍ジャパン大学日本代表メンバー(2019)
大学代表の野手を評価

第6位 U18高校代表が大学代表に引き分ける

8月26日に行われた侍ジャパンU18代表と大学代表の壮行試合は、U18代表が5-5と引き分けた。大学生の意地も見られた。

U18代表は佐々木朗希が先発し150キロ中盤の速球で打者3人から2三振を奪うピッチングを見せる。大学代表も森下が先発し1回は三者凡退、しかし2回にU18代表は、石川昂弥が2ベースヒットと盗塁でサードまで進み、大学代表の守備のミスで1点を先制した。石川は4回にも東洋大3年の村上頌樹からヒットを打ち、遠藤成のヒットから熊田任洋のタイムリーヒットで追加点を挙げた。

一方、大学代表は、佐々木の故障のために2回から登板をしていた宮城大弥を3イニング目に捉え、牧秀悟佐藤都志也のタイムリーと海野隆司のホームランで逆転をする。しかしU18は、代わった内間拓馬から石川が逆転の2点タイムリーヒットですぐさま逆転をした。

それでも大学代表は西純矢から牧が一発を放り込んで同点とする。しかし、U18は武岡龍世が大学生やメジャー予備軍でも打つのに苦労する苫小牧駒大・伊藤大海から2ベースヒットで出ると犠打でサードに送り、山瀬慎之助のスクイズで1点を勝ち越した。

だが大学代表は9回裏に大学の主将・篠原涼がタイムリーを放ち同点に追いつく。なおもサードにランナーを置いたが、U18のリリーフ・飯塚脩人が最後に三振を奪い5-5の引き分けとなった。

2018年は根尾、藤原、柿木、吉田輝星などのチームだったが3-7で敗れ、2016年は寺島、藤平、今井で挑んだものの0-5で完封された。2015年は清宮、勝俣、オコエ、平沢などのチームで2-9と力の差を見せつけられたのだが、いよいよU18が大学代表に肩を並べた。

しかし、大学代表が9回裏に追いついたのは、2015年のU18代表メンバーだった宇草、篠原、郡司の意地だった。当初は、佐々木、奥川、森下、佐藤といったドラフト候補のチェックと考えていた試合だったが、素晴らしい試合にチェックも忘れるほどだった。宇草の足vs山瀬の肩などの対戦は、プロでもなかなか見られないような、本当に一流のプレーだった。

侍ジャパンU18日本代表メンバー(2019)一覧
侍ジャパン大学日本代表メンバー(2019)

5位から1位編→2019年ドラフト総決算(8)~ドラフト10大ニュース~その2


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