前の試合で衝撃的な156キロを記録た高岡第一(富山)の左腕・前田侑大投手(3年)が18日、夏の高校野球選手権富山大会3回戦の富山北部戦に先発すると、この日も150キロ台のストレートを連発し、9回149球を投げて毎回の20奪三振、ノーヒットノーランを達成した。この日の最速は155キロ、富山大会でのノーヒットノーランは15年ぶり13度目の快挙で、視察したNPB8球団のスカウトも、“富山の怪物”に「上位もあるでしょう」と高く評価した。
初回から150キロ台を連発、毎回の20奪三振で締める
序盤からいきなり150キロを超える球を連発した。初回先頭の富山北部・藤田晃大内野手(3年)を1―2から152キロの直球で見逃し三振に仕留めると、初回2死から4者連続三振と乗っていく。6回まで被安打0、13奪三振と富山北部打線を封じ込め、終盤に入るとギアを上げた。7回にこの日最速の155キロをマークし、3者連続奪三振でマウンドでほえた。
制球が乱れ9四死球を数えたが、二つの四球と味方の失策が絡んだ8回2死満塁のピンチでも「もう一段階ギアを上げて、まずはゼロで抑えるという思いでした」(日刊スポーツ)と強い気持ちを保つ。富山北部3番・加藤雅也外野手(3年)との勝負では最後まで直球を選び、空振り三振に仕留めた。外野に飛ばされたのは8回1死一、二塁からの藤田晃大内野手の中直だけ。7点リードの9回2死一塁、最後も空振り三振で締めて計20三振を奪い、無安打無得点を成し遂げた。
この快挙について前田投手は、「自分ではあまり意識してなかったです。一応あまり打たれていないというのはあったんですけど、ノーヒットノーランになるとは思ってなかったです」(日刊スポーツ)とクールに振り返ると、「フォアボールが多かったので、球数のこともあるのでダメだった。変化球のストライク率が前の試合からあまり変わっていない。次の試合ではもっと意識していきたい」と反省点を述べ、ノーヒットノーランや20奪三振の喜びはあまり見せなかった。
対戦した富山北部は昨夏4強、昨秋8強の実力校で、ここまで圧倒される打線のチームではない。そのチームを相手にこの圧倒劇、そして今夏は初戦の2回戦・富山工戦から計16イニングで被安打1、34奪三振。奪三振率19・13は破格の数字だ。
NPB8球団が視察、「ドラフト上位で消える」と評価
試合前、緊張からかノックの球が手に付かない仲間を見て、前田投手は「打たせて取るより、三振の方がいいかな」と思い、三振を奪う投球をすることを決めたという。この決断による20個の三振を奪った。173センチ、72キロの体格から想像できない剛速球が配球の大半を占め、150キロ台は計26球を数えた。NPBスカウトのスピードガンでも151キロを計測しており、球場表示が極端に上振れしているわけではなかった。
バックネット裏にはDeNAの長谷川竜也編成部長らNPB8球団のスカウトが集結し、東北楽天の小孫竜二スカウトは前田投手を高く評価した。
東北楽天・小孫竜二スカウト:「高校生では、なかなか出てこないような投手だと思います。あのスピードボールは本当に魅力。春から夏にかけてさらによくなった。体も柔らかく、まだまだ伸びしろもあると思います」
また、あるスカウトは「ドラフト上位で消えるでしょう」と話し、ドラフト上位候補という認識を示した。
ベンチから見守った村本忠秀監督(61)は「これくらいやってもらわないと」と目を細めた。噂は一気に広まり、多くの観客も来場。同世代には好左腕がそろい、昨夏日本一に貢献した沖縄尚学の末吉良丞投手、聖隷クリストファー(静岡)の高部陸投手はいずれも自己最速が150キロを超える。今春の選抜で智弁学園(奈良)を準優勝に導いた杉本真滉投手もブレークした。右腕でも横浜(神奈川)の織田翔希投手や山梨学院の菰田陽生投手ら本格派がひしめく中、前田投手が世代最速左腕に躍り出て、一気に今秋ドラフト上位候補にまで浮上した。
柔軟性が土台、無名から“怪物”へ、45年ぶりの聖地目指す
中学時代は一塁手などを務め、最速は130キロに満たなかった。自宅から通学圏内の高岡第一に進学し、NTT西日本監督時代に岸田(現オリックス監督)、脇谷(元巨人)らを育てた村本忠秀監督と出会ったことが転機となった。2年秋に147キロ、今春に150キロとステップアップし、4月には高校日本代表候補の強化合宿にも選ばれた。「意識したわけではないけど、春からさらに球速が上がった」と万全の状態で最後の夏を迎えた。
2試合連続の圧倒的な投球を支える土台は、日々の積み重ねにある。「自分の中では柔軟性が一番だと思っています」(日刊スポーツ)。特別なトレーニングよりも毎日のストレッチを欠かさず続け、173センチの体からしなりを生かしたフォームで剛速球を生み出す。中学時代に前田投手を指導した富山・南星中野球部顧問兼監督の木之村駿教諭(26)は「投げることが本当に大好きな選手でした」と振り返る。中2の冬に投球を計測した際は球速が約120キロだったが「少しジャイロ気味で質のいいボールを投げていました」と当時から高い素質を感じたという。「無名だった頃を知っている子です。おごらず、多くの人に愛される選手になってほしい」とエールを送った。
45年ぶりの夏の甲子園へあと3勝。チームのために腕を振り続ける。まだ進路については示していないが、プロ志望をすれば、織田翔希投手、菰田陽生選手、末吉良丞選手の高校BIG3と並ぶ評価でドラフト会議を迎えることだろう。
【前田 侑大】 プロフィール
- 氏名:前田 侑大(まえだ・ゆうと)
- 所属:高岡第一高校(3年)
- 出身:富山県高岡市(ビッグファイトボーイズ-南星中軟式野球部)
- ポジション:投手
- 投打:左投左打
- 身長・体重:173cm、72kg
- 主な特徴や実績:小2から野球を始め、中学時代は最速130キロに満たなかったが、高岡第一で村本忠秀監督のもと急成長。2年秋からエースを務め、今春のU18日本代表候補強化合宿にも選ばれた。最速156キロの直球にスライダー、カーブ、チェンジアップを操る本格サウスポー。今夏の富山大会3回戦・富山北部戦で毎回の20奪三振によるノーヒットノーランを達成し、奪三振率19・13の破格の数字を残した。NPB8球団が視察するドラフト上位候補として、45年ぶりの夏の甲子園出場を目指す。













コメント