健大高崎(群馬)の二刀流が真価を発揮した。「4番・DH兼先発投手」の“大谷ルール”で出場した佐藤麻恩投手(3年)が投打にチームをけん引し、天理(奈良)を1―0で下して同校初の夏の決勝進出を決めた。初回1死一、二塁から決勝の右前適時打を放ち、投げては7回1/3を2安打無失点。「ずっと“日本一になる”と言っていて、その手前まで来ている」と、22日の智弁和歌山(和歌山)との決勝を見据えた。
初回に自ら先制打、大一番で見せた投打二刀流
大一番でも勝負どころは逃さなかった。初回1死から2番の主将・石田雄星選手(3年)の四球と、3番・大岩翔斗捕手(3年)の左前安打で1死一、二塁の好機をつくると、4番の佐藤麻恩投手が甘く入った初球の直球を逃さず右前へはじき返し、1点を先制した。「打点を挙げて自分を楽にさせるっていう気持ちだった」。自らの一打で試合の主導権を握った。
マウンドでも躍動した。内外角低めにスライダー、ツーシームを投げ込む打たせて取る投球でテンポよくアウトを積み重ね、序盤3回で内野ゴロ7つと凡打の山を築いた。今大会3試合で20得点を奪ってきた天理打線を散発2安打に封じ込め、7回1/3を無失点。7回無死一塁では一塁線への小フライにスライディングキャッチで飛びつき、ピンチの芽を摘んだ。「スライダーがしっかり低めに決まって、うまく打たせてとることができた」と胸を張った。
佐藤投手は13日の2回戦・東海大甲府(山梨)戦でも先発で6回無失点、決勝打を放って1―0の勝利に貢献していた。スコア1―0の試合で2度のV打&勝利投手となったのは大会初の記録。憧れは米大リーグ、ドジャースの大谷翔平で、同じ右投げ左打ちだ。「投げる日はより気合が入る。ピッチャーをして打つのが本物の二刀流」と話し、投と打の相乗効果を試合で見せる。
史上初尽くしの継投、9回2死満塁を2年生エースが締め
佐藤投手が託した後を、豊富な投手陣がつないだ。8回途中から2年生左腕・北田莉玖投手(2年)が登板し、9回途中からは三塁を守っていた石田翔大投手(3年)がマウンドへ。1イニングに3投手を使っての完封勝ちは春夏を通じて初めての記録となった。
9回1死二塁からは1年生の狩野蓮義外野手(1年)が、天理・田畑龍二選手(3年)の右前に落ちそうな当たりにダイビングキャッチを見せ、チームを救った。「考えるより先に足が動いていて、気付いたらプレーが終わっていた」。そして、一打逆転の絶体絶命の場面で4番手に上がったのが、2年生エース・石垣聡志投手(2年)だ。最速148キロ右腕は全5球をカットボールで勝負し、空振り三振に仕留めて逃げ切った。「同点に追いつかれたら行くと言われていましたが、勝っている状態で送り出されたので、プラスの気持ちで上がりました。全球、一番自信のあるカットボールを投げました」(日刊スポーツ)と振り返った。
4投手による1―0の完封リレーも史上初なら、1大会3度の「1―0」勝利も春夏通じて甲子園史上初の快挙。天理はエース・長尾亮大投手(3年)が136球で1失点完投したが、打線が沈黙し、決勝進出を逃した。健大高崎は今大会5試合で失点わずか2、自責点1でチーム防御率0・20という鉄壁の投手陣で勝ち上がってきた。
“谷間の世代”が塗り替える歴史、夏初の頂点へ
快進撃の裏には、悔しさをバネにした3年生の意地がある。昨秋の群馬大会は準々決勝で桐生第一に敗れて8強止まり。石垣元気(現・千葉ロッテ1位)らを擁した一つ上の世代と比較され、“谷間の世代”と言われた。そこでナインは「健闘心」をスローガンに掲げて団結した。主将の石田雄星選手は9回のピンチの場面を「アウェーの雰囲気だったけど、帽子のつばの『健闘心』という文字を見て平常心に戻れた」と明かした。
青柳博文監督(54)は5試合で計2失点の投手陣に「本当にバッテリーがよく頑張ってくれた。素晴らしいバッテリーだと思います」とたたえ、「秋のチームはこうなるのかということで、自分自身も非常にびっくりしています」と成長ぶりに目を細めた。1大会3度の「1―0」勝利には「まさか1―0で勝てると思っていなかった。信じられない気持ち」と繰り返した。2024年のセンバツは制したが、夏はこれまで2014年の8強が最高成績。群馬県勢の決勝進出は、2013年に頂点に立った前橋育英以来13年ぶりとなる。
決勝の相手は、5年ぶり4度目の優勝に王手をかけた智弁和歌山だ。「実力差はかなりありますけど、うちらしく粘り強く、なるべく失点を減らして勝ちたい」と指揮官。二刀流の中心にいる佐藤投手は「史上初のところまで来ているので、新しい歴史を作って、健大高崎の名前をどんどん知られていきたい。無失点で抑えて、チャンスをものにして、絶対に勝って優勝したい」と表情を引き締めた。祖父母思いの右腕の目には、同校初の夏の日本一しか映っていない。
【佐藤 麻恩】 プロフィール
- 氏名:佐藤麻恩(さとう・まおん)
- 所属:健大高崎高校(3年)
- 出身:群馬県富岡市(富岡中出身。小1から黒岩ユニオンズで野球を始め、群馬西毛ボーイズ時代の中3時には東日本代表として世界大会に出場)
- ポジション:投手
- 投打:右投左打
- 身長・体重:173cm、81kg
- 主な特徴や実績:「4番・DH兼先発投手」の“大谷ルール”で出場する健大高崎の二刀流。低めに集めるスライダーとツーシームで打たせて取る投球が持ち味で、憧れの大谷翔平と同じ右投げ左打ち。前腕を鍛え上げた筋トレマニアとしても知られる。準決勝・天理戦では初回に決勝の右前適時打を放ち、投げては7回1/3を2安打無失点の快投。2回戦・東海大甲府戦に続き、1―0試合で2度のV打&勝利投手をマークした。今春の関東大会準々決勝では横浜のエース・織田翔希投手から本塁打を放っている。夏初の日本一を目指し、本物の二刀流としてさらなる飛躍が期待される。
















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