智弁和歌山が、第108回全国高校野球選手権大会決勝で健大高崎(群馬)を4―3で下し、5年ぶり4度目の夏の日本一に導いた。「4番・捕手」山田凜虎捕手(3年)は、1点を追う8回裏に自らが死球で口火を切り、7番・川原一将内野手(3年)のスクイズで三塁から本塁へ生還して同点。相手の暴投を誘って再逆転を呼び込んだ。かつて同校の正捕手として全国制覇し、指導者としても導いた中谷仁監督(47)と並び、「監督に最高の恩返しができました」と胸を張った。
逆転許した直後、真っ先に投手のもとへ
山田凜虎捕手は、同じ捕手として活躍した中谷監督に憧れ、愛知県から智弁和歌山に入学をする。その後、中谷監督の英才教育が始まり、技術以上に心構えで影響を受けた。「打たれても投手のせいにせず、すぐに前向きな言葉をかけることは心がけてます」。その姿勢が、勝負を分けた場面で表れた。
2―1とリードして迎えた8回表、エース・和気匠太投手(3年)が逆転の2ランを浴びた。それでも山田捕手は心を折らなかった。真っ先に和気投手のもとへ駆け寄り、「まだ終わってないから、次の打者、切り替えていくぞ」と声をかけた。「後攻だし、絶対に取り返せると。自分が先頭で出ようという気持ちでした」。その言葉通り、直後の攻撃で士気を高めた。
8回裏、執念の同点生還「心臓が飛び出るくらい」
1点を追う8回裏、山田捕手は先頭打者として死球で出塁した。楠本龍生内野手(3年)が中前打で続いて無死一、二塁とすると、代打の松本虎太郎主将(3年)が犠打を決めて1死二、三塁。ここで7番・川原一将内野手(3年)が初球でスクイズを試みたがファウルとなり、この際に健大高崎の捕手が負傷して試合が一時中断した。再開後、川原内野手が再び投前へ転がすスクイズを成功させ、三塁走者の山田捕手が左手で本塁を陥れて同点。さらに相手の暴投を誘い、一気に再逆転した。「どこでもいいから転がしてくれと思っていた。同点になった瞬間は心臓が飛び出るくらいうれしかった」と話した。
3回にも左前打を放つなど攻守でチームをけん引した山田捕手は、扇の要として智弁和歌山の継投を支えた。この日は5回1失点の先発・長井心海投手(3年)から、6回に初めて救援した背番号1の和気匠太投手、8回途中から登板して1点差を守り抜いた久葉亮太投手(3年)まで、3人の投球を受け切った。和歌山大会からの全10試合で完投なし。夏の甲子園で全試合継投による優勝は史上7度目で、6投手起用は優勝校として史上最多となった。
恩師と重なる道、目指すは「ドラフト1位」
山田捕手の歩みは、くしくも中谷監督の現役時代と重なる。2年春の選抜で準優勝しながら、同年夏は甲子園初戦敗退、3年春は出場を逃した。中谷監督自身も智弁和歌山の捕手として2年春に準優勝し、3年夏に主将として同校初の全国制覇を果たした経歴を持つ。昨秋の和歌山県大会では中谷監督が配球のサインを封印し、「捕手としてすべきことをしなさい。楽はさせないぞ」と突き放した。その結果、近大新宮に敗れて今春の選抜出場を逃したが、山田捕手は野村克也氏や古田敦也氏の著書でインサイドワークを学び、この夏、5試合で6投手を導いて11失点に抑えるまでに成長した。
中谷監督は「和歌山大会からきょうの試合まで本当にたくましく成長してくれた」とたたえた。山田捕手も「(中谷監督に)ひとつ近づけたかなと思います」と控えめな笑顔を見せた。そして山田選手は、9月に台湾で開かれるU18アジア選手権の代表入りを果たし、準決勝で攻略した織田翔希投手らと共に侍ジャパンU18代表としてアジアの頂点を目指す。
そしてその先、山田捕手が思い描くのは、恩師と同じプロへの道だ。中谷監督は1998年にドラフト1位で阪神に入団している。山田選手は「4年間大学でやって、ドラフト1位でプロに行けるようにやりたい」と話し、「監督を越えるキャッチャーになるために、高校の監督の(到達した)ところまではきた。監督はドラフト1位でいっているので、そこはもちろん意識しています」と話した。
まずは日の丸を付けて戦うU18で、アジアの頂点を取る姿を見たい。そして大学で、4年後に、同じく智弁和歌山出身で今年のドラフト1位候補・渡部海捕手のように、4年後にドラフト1位候補として注目選手になることを期待したい。
【山田 凜虎】 プロフィール
- 氏名:山田凜虎(りとら)
- 所属:智弁和歌山高校(3年)
- 出身:愛知県名古屋市(ドラゴンズJr.出身。中谷監督の指導を求めて郷里を離れ和歌山へ)
- ポジション:捕手
- 主な特徴や実績:「4番・捕手」として智弁和歌山の5年ぶり4度目の夏制覇をけん引した大黒柱。憧れの中谷仁監督に学んだインサイドワークを武器に、今大会は5試合で6投手を導いて11失点に抑えるリードを見せた。決勝では8回裏に自ら死球で出塁し、スクイズで本塁へ生還して再逆転の口火を切る勝負強さも発揮。9月のU18アジア選手権では高校日本代表に選出されており、大学進学を経てドラフト1位でのプロ入りを目指す。


















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