１２球団のドラフト、広島は大砲を獲得できるか

広島は今年１月のスカウト会議で、「現状で脚力のある若い選手が増えてきた。投手はもちろんですけど、長打力の素質を持った選手を探していこうという形です」と、長打力を持つ選手の獲得を目標に設定した。

大砲候補を獲得できるか

1月のスカウト会議で、ドラフト上位候補に挙げた選手は、中京大中京・高橋宏斗投手、東海大・山崎伊織投手、トヨタ自動車・栗林良吏投手、近大・佐藤輝明内野手、中央大・牧秀悟内野手の5人。長打力、ホームランを常に求める選手としては、牧選手よりも近大の佐藤選手の方が近い。

佐藤選手は関西学生リーグで通算11本塁打を放つ選手で、187cm92kgの体から放たれる打球は、外野スタンドを高々と超えていく当たりも見せる。そしてこの体で50ｍ6.0秒の足を持つ所が魅力で、「ポスト鈴木誠也」というほど長打力もあり足もある選手は非常に少ないが、佐藤選手はその候補に入ってくる。

また広島は菊池選手がメジャー挑戦を断念したことで、二三遊に選手がそろっているものの、かつての江藤選手のように強打のサードとしても十分期待できる。

ただし、横浜DeNA、阪神など、大砲の獲得を目指す球団は多く、この佐藤選手にも特に阪神が注目をしており、ドラフト1位での指名競合は必死と言える。広島がこの大砲を獲得するには相当の覚悟が必要となりそうだ。

単独1位指名を狙うなら

この他の大砲候補としては、花咲徳栄の井上朋也選手、東海大相模の西川僚祐選手、明石商の来田涼斗選手、上武大の古川裕大捕手、作新学院の横山陽樹選手、そして中央大の牧秀悟選手を挙げたい。

この中でホームランに特化したタイプでいくと、東海大相模の西川僚祐選手という事になりそうで、芯の強そうな打撃で、軽く振ってレフトスタンドに放り込む姿は新井貴浩選手に近いイメージがある。ポスト清原と呼ばれるが、そこに至るにはアウトコースをライトスタンドやバックスクリーンに運べるかがポイントとなり、それが今年見せられれば、評価はもっと上がってしまうだろう。

花咲徳栄の井上朋也選手は、体を柔軟に倒しながら外角も強くヒットができる選手で、対応力の高いタイプだと言える。しかし、インコースを狙い定めて放った打球はレフトスタンドに消え、外角を狙って振りぬくと、ライトフェンスを大きく超える飛距離がある。まずまずの足もある選手でその点では佐藤選手に近いタイプかもしれない。

そして明石商の来田涼斗選手は、打撃に関しては高校生野手の中で最も高く評価する。1番を打ち中距離タイプの活躍を見せるが、バットの振り抜きが素晴らしく、将来的には4番を打てる選手だと思う。外野の守備にやや不安な面があるが、肩と足もある選手で、鈴木誠也選手に近いタイプだろう。

長打という点では上武大の古川裕大捕手、作新学院の横山陽樹選手も候補として良い。二人とも佐藤選手や井上選手程、体が太くて長打力があるように見えないが、きれいなスイングで振りぬいた打球は、しっかりとスタンドまで届く。また共に捕手、遊撃手としてもプレーができ、強肩で外野手でも守れるのは間違いない。

ただし、長打力というのはあくまで指標の一つで、主軸としてチームを勝利にもたらす選手ならば、中央大の牧秀悟選手が上げられる。広角に外野の頭を超す打球が打てて、特にランナーがいる時の打撃はすさまじい。そして日米大学野球でも4番としてホームランを打ち、Ｕ１８との壮行会でも西純矢投手からホームランを放つなど、大舞台に強い。守備はショート、セカンドを守れるが、二遊間が菊池、小園、田中で競っているとしても、サードでもそつなくできるだろう。