2019年のドラフト会議で高校生は、投手20名、捕手7名、内野手17名、外野手6名の50人が指名された。ドラフト会議で指名された高校生を、ポジション別にドラフト指名順に並べた。プロにたどり着いた50人、そして共に道を走ったドラフト候補選手たちをストーリーで追う。
2019年ドラフト総決算(1)高校生の選手達~少年野球編「佐々木、奥川を生んだ出会い」
2019年ドラフト会議、高校生で指名された選手
1~2位 | 3~4位 | 5位以下 | 育成 | |
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投手 | 奥川恭伸 星稜高 佐々木朗希 大船渡 西純矢 創志学園 宮城大弥 興南高 堀田賢慎 青森山田 | 及川雅貴 横浜高 鈴木寛人 霞ヶ浦 前佑囲斗 津田学園 横山陸人 専大松戸 井上温大 前橋商 | 岡林勇希 菰野 竹内龍臣 札幌創成 玉村昇悟 丹生 井上広輝 日大三 浅田将汰 有明 | 佐藤一磨 横浜隼人 小峯新陸 鹿児島城西 谷岡颯太 武田高 中田惟斗 大阪桐蔭 村上舜 山形中央 |
捕手 | 東妻純平 智弁和歌山 | 山瀬慎之助 星稜 藤田健斗 中京学院中京 水上桂 明石商 | 持丸泰輝 旭川大高 江川侑斗 大分高 石塚綜一郎 黒沢尻工 | |
内野手 | 石川昂弥 東邦高 森敬斗 桐蔭学園 紅林弘太郎 駿河総合 黒川史陽 智弁和歌山 | 菊田拡和 常総学院 上野響平 京都国際 韮澤雄也 花咲徳栄 遠藤成 東海大相模 小林珠維 東海大札幌 川野涼多 九州学院 | 田部隼人 開星 長岡秀樹 八千代松陰 武岡龍世 八戸学院光星 | 伊藤大将 八戸学院光星 勝連大稀 興南 沢野聖悠 誉 荒木翔太 千原台 |
外野手 | 井上広大 履正社 | 武藤敦貴 都城東 | 伊藤海斗 酒田南 | 木下元秀 敦賀気比 平野大和 日章学園 鶴見凌也 常磐大高 舟越秀虎 城北高 |
先頭を走るのは
高校1年生、いよいよ待ちに待った高校野球に、続々とデビューをしていく。そして1年生が初めて立つことができる全国の舞台、夏の甲子園大会、1年生でベンチ入りをしたのは次の選手。
青森山田・平沼海斗⑱
土浦日大・中川明彦⑫、鶴見恵太⑯
花咲徳栄・韮澤雄也⑯
木更津総合・小池柊稀④
二松学舎大付・右田稜真⑰、海老原凪⑱
東海大菅生・小山翔暉⑭
横浜・及川雅貴⑪、内海貴斗⑬、吉原大稀⑮、黒須大誠⑯、小泉龍之介⑱
山梨学院・相沢利俊⑬
日本航空石川・安東凌太⑱
中京大中京・関岡隼也⑬
大垣日大・内藤圭史⑦
津田学園・藤井久大⑦、前川夏輝⑭、石川史門⑮
智弁和歌山・黒川史陽⑯、西川晋太郎⑰、東妻純平⑱
広陵・鉤流大遂⑫
下関国際・木村大輝⑪、谷本智⑬、佐本快⑯
興南・根路銘太希④、宮城大弥⑪
2017年の高校野球は早稲田実の清宮幸太郎選手、広陵の中村奨成、秀岳館の川端健斗などの怪物クラス3年生や、大阪桐蔭の根尾昂、藤原恭大などの2年生がいる中で、甲子園に出場するチームのベンチに1年生が入ることは並大抵のことではない。当然、同学年の選手はその1年生がどれだけのプレーを見せるのかに注目をする。
夏の甲子園大会、大会4日目の第2試合に、横浜の及川雅貴がベスト4に勝ち上がった秀岳館との試合で3番手で登板し、最速142キロの速球で3回を1安打3四死球も1奪三振で無失点に抑える落ち着いた投球を見せると、続く第3試合には興南の宮城大弥が智弁和歌山戦に先発し、4回0/3で3安打4四死球で6失点も、マウンドで吠える投球を見せた。
その興南では根路銘が2番セカンドでスタメン出場を果たすと、対戦した智弁和歌山では西川晋太郎がスタメンでショートを守った。そのほかに木更津総合の小池が9番セカンドでスタメン出場すると、中京大中京の関岡も途中からマスクを被った。津田学園の藤井は5番ライトで出場して初戦で5打数2安打を記録すると、大垣日大の内藤も5番レフトで出場し、初戦で4打数3安打を記録した。東海大菅生の小山もセンターでスタメン出場をする。そして智弁和歌山の黒川史陽が2回戦の大阪桐蔭戦で3番サードでスタメン出場をして全国の舞台を踏んだ。
その他にも広陵の鉤流は中村奨成の守備と6本塁打を間近に見た大会となった。花咲徳栄の韮澤も優勝を果たした3年生や2年生に混ざり、1年生で一番最初に優勝メダルを首にかけた。次は自分がと強く感じる大会となった。
東邦の石川昂弥は夏の愛知大会の前に1年生ながら注目選手として取り上げられた。しかし7月に左足甲の骨折し、甲子園には出場できなかった。地方大会で敗れた中でも創志学園の西純矢、九州学院の川野涼多、八戸学院光星の武岡龍世、大分の江川侑斗の名前が取り上げられた。日大三の井上広輝は1年生ながら145キロを記録して話題となり、秋の新チームに向かっていく。
1年秋のブレーク
3年生が抜けるタイミングで、チームの中心になる1年生が一気に増える。東邦の石川昂弥は7月の骨折の後、8月にも左手甲を骨折してしまう。しかし驚異的な回復力を見せ、9月の県大会から4番サードで出場をすると、東海大会3試合で2本塁打6打点の大活躍を見せ、チームを甲子園に導いた。その東海大会で優勝をしたのは静岡高、中日ジュニアでチームメイトだった斎藤来音が2番ライトで出場し、東邦との決勝戦を制した。他にもU15代表の不後祐将は常葉大橘を8回6安打1失点に抑え込み、実力を見せていた。夏の甲子園でもマスクを被った中京大中京の関岡も、この大会でスタメンマスクを被った。
星稜の奥川恭伸は石川大会で142キロを記録すると、北信越大会では背番号1を与えられ、北陸戦で9回7安打10奪三振で完封勝利、準決勝の富山国際大付戦では146キロを記録し、怪物の片りんを見せ始めた。その北信越大会では日本航空石川の重吉翼も1回戦の高岡商戦で9回2安打11奪三振で完封をし、奥川のライバルとした大きく姿を現した。
東北大会では酒田南の伊藤海斗が4番ライトで出場し、光南戦で4打数3安打1打点の活躍を見せる。しかし、準々決勝では日大山形戦で3打数1安打もコールド負けを喫した。日大山形の5番捕手には渡部雅也がどっしりと座っていた。黒沢尻工も3番ショートに1年生の石塚綜一郎が出場した。のちに二人は東北NO.1捕手を争う事になる。八戸学院光星の武岡龍世は、この時はまだ試合途中からショートや代打での出場だった。
花巻東の西舘勇陽がベールを脱ぐ。入学当初から身長のある体と雰囲気から大谷翔平2世と呼び声が高かったが、この大会では2回戦の角館戦で先発し6回3安打1失点の好投を見せ、準々決勝の由利工戦では9回2安打2奪三振の完封勝利を挙げた。東北からは優勝した聖光学院と共に、準優勝した花巻東がセンバツ出場権を獲得し、春の西舘のピッチングが大いに期待されるのだった。
関東では夏の覇者・花咲徳栄が関東大会に出場し、韮澤雄也が3番ショートで出場をし、3打数2安打を記録したものの、2大会連続甲子園出場には届かなかった。霞ケ浦は鈴木寛人投手が先発をする。初戦の東海大甲府戦では1回1/3で5安打4失点で降板をするも、勝てば甲子園が近づく準々決勝の中央学院戦でも先発をする。しかし2回1/3で5安打2失点し、チームは敗退をしてしまうが、鈴木投手はその後、大きく成長し、3年夏に結果を残す事になる。東京大会では日大三の井上広輝がリリーフで登板し、東京大会優勝を勝ち取った。
近畿大会では智弁和歌山の1年生が主力となる。東妻純平捕手がマスクを被り、西川晋太郎が出て3番・黒川史陽が主軸に座る。のちに150キロの速球を投げU18代表入りする池田陽佑も登板を重ね、少数精鋭の智弁和歌山らしく、秋からしっかりと1年生が力を見せ始めた。また近江も1年生が主軸となる。投手の林優樹と捕手の有馬諒のバッテリーで4強入りし、センバツ出場を勝ち取った。他にも智弁学園の坂下翔馬、京都翔英の遠藤慎也などが1年生から力を見せた。
中国大会では開星の田部隼人がショートのスタメンを守った。九州大会では甲子園で登板をした興南の宮城がリリーフに専念し、ややセーブ気味で2回戦で姿を消した。1年生では都城東の武藤敦貴 が初戦で九州学院を完封しあっと言わせると、富島の松浦佑星が1番ショートで完全にチームを引っ張る存在となり、見事に九州大会準優勝を果たしセンバツ出場を決めた。
英明の黒河竜司は四国大会でダイナミックなフォームから138キロの重い速球を投げ、決勝の明徳義塾戦では8回まで無失点に抑える好投を見せた。その試合で逆転勝ちをした明徳義塾は、明治神宮大会を制したが、1年生の安田陸が5番捕手としてチームの要となる活躍を見せた。
期待を抱かせる選手たちが名乗りを上げ、初めてとなる高校野球の冬の厳しいトレーニングに、歯を食いしばって立ち向かっていった。
センバツ、2年生の競演
2018年のセンバツ高校野球は、根尾、藤原、中川、柿木らの大阪桐蔭が強さを見せつけ優勝をした。その大阪桐蔭に迫ったがの準優勝の智弁和歌山、2年生のセカンド・西川は粘り強い打撃と守備を見せ、黒川、東妻の下位打線も他校に脅威を与えた。黒川は創成館戦で貴重なホームランを放つなど4打点の活躍を見せた。東妻は同学年の池田や先輩投手をリードしていく。高嶋監督に厳しい口調で叱られながら、チームを準優勝に導いた。
今大会は他にも2年生捕手に注目が集まった。星稜の山瀬は抜群の強肩を見せつけると、3試合でマルチヒットを記録し、今大会の注目捕手となった。慶応の善波力も小柄ながら正確なスローイングを披露し、打撃でも活躍をした。近江の有馬諒もセンスの良さを見せ、3年生を圧倒した。この時点で2019年は高校生捕手の当たり年という声が沸き起こった。
そして2年生投手にも花が咲いた。日大三の井上は初戦の由利工戦で4回から登板すると、スムーズなフォームから最速147キロを記録し、根尾と並び、柿木を上回る球速を見せ、2年生で最速となった。星稜の奥川も144キロを記録する。この大会ではリリーフとして登板し、富島戦では3回途中から6回2/3を5安打5奪三振無失点、近江戦では6回途中から登板すると、9回までの4回2/3を1安打無失点に抑え、逆転勝利に貢献をした。ライバルの日本航空石川の重吉も139キロを記録した。井上、奥川はこの世代のトップを行く投手として、競争をしていくことになる。
また、この大会では東海大相模の遠藤成がリリーフで1イニングを投げ140キロを記録している。智弁和歌山の池田、英明の黒川も期待通り130キロ後半の力強い速球を投げ込んだ。花巻東の西舘は大阪桐蔭戦で3回途中で7失点し、全国の怖さを味わった。また東邦の石川は初戦の花巻東戦に4番サードで出場をしたが、4打数ノーヒットに抑えられチームも初戦敗退、全国の舞台で力を見せる事はできなかった。
他にも静岡高の斎藤は駒大苫小牧戦で2本の3ベースヒットなど4打数3安打4打点と火を噴いた。
夏へ
センバツが終わり暖かくなると、冬の厳しいトレーニングをこなした選手が、著しい成長を見せて出てくる。横浜高校の及川は春の神奈川大会4回戦で自己最速を一気に6キロ更新する149キロを記録すると、関東大会ではついに150キロの大台に乗せた。小学生・中学生でトップを走ってきたサウスポーが、いよいよ高校でもトップの座に上り詰めた。
そしてもう一人、怪物が誕生していた。大船渡の佐々木朗希はこの春に152キロを記録していた。189cmの綺麗なフォームから投げ下ろす投球は、まだ多くの人に見られていなかったが、このころからただ者ではないと声が岩手だけでなく全国に伝わってきていた。
茨城ではU15代表だった岡田幹太が143キロを記録しこちらも順調に成長を見せていた。下位打線では菊田拡和が6番ながらパンチ力を見せ、気を吐いていた。霞ケ浦の鈴木寛人は右手人差し指の骨折のため投げられなかったが、石岡一の岩本大地が147キロのバットに当たらないストレートを投げ話題となっていた。福井では丹生の玉村昇悟が140キロを記録し旋風の予感を見せる。三重では菰野の岡林勇希が147キロを記録し、兵庫では社の藤本竜輝が144キロを記録、名前が広がり始めていた。
岡山では創志学園の西純矢が140キロ後半をマーク、いよいよBIG4の最後の一人が名を挙げつつあった。広島では広陵・河野佳と広島新庄の桑田孝志郎が2年生の双璧として注目され始めた。九州国際大付の下村海翔は招待試合で東海大相模を6回無失点に抑えて名乗りを挙げると、熊本では有明の浅田将汰が145キロに到達し、強豪も要注意の存在となってきた。鹿児島城西の小峯新陸も189cmから140キロの速球を投げ込み、スケールの大きさに期待する声も大きくなっていた。
花咲徳栄は1番・橋本吏功と3番・韮澤雄也が4番の野村佑希につなぐ打撃を見せ、強力打線を形成した。奈良では智弁学園の塚本大夢が春の大会で6本塁打を記録して話題となった。
日大三の井上はセンバツの疲労を考慮し登板はほとんどせず、夏に向けて調整をする。星稜の奥川も石川大会決勝で日本航空石川を4安打12奪三振完封すると、北信越大会では1試合リリーフで登板するのみで夏に向けて調整をしていた。
2年生の夏・そして秋へ
2年生で迎えた2018年の夏だったが、やはり3年生は偉大だった。根尾、藤原、柿木など3年生の黄金世代を作った大阪桐蔭が全国制覇を果たし、同じく3年生の固定メンバーで戦った金足農が吉田輝星投手を中心にまとまり準優勝に輝いた。
しかしその中で2年生の投手は驚異的な投球を見せた。日大三の井上と星稜の奥川が共に2年生で150キロを記録したのだ。また、夏の千葉大会で頭角を現した木更津総合の根本太一と、創志学園の西が149キロを記録、そして日大三の広沢優が先発で登板すると、148キロを記録する驚きの投球を見せた。横浜の及川はやや安定せずも145キロを記録、他にも羽黒の篠田怜汰が144キロ、興南の宮城が143キロを記録、投手全体的には3年生より2年生の方に注目投手が多かった。
まず開幕戦で登場した星稜の奥川がその試合の8回に150キロを記録する。すると5日目に登場した横浜の及川も1イニングの登板ながら140キロを超す球を投げた。その同じ日、第3試合で登場したのは創志学園の西、創成館を相手に毎回の16奪三振を記録した。マウンド上で空に向かって雄たけびを上げる姿は、審判から注意をされたものの、それは前年の10月に亡くなった父へと響かせる声だった。続く第3試合では興南の宮城が登板する。1年時は西に負けないくらい雄たけびを上げていたが、2年目の夏の甲子園という事もあり貫禄を感じさせる投球を見せていた。その翌日、西の投球を見た木更津総合の根本が触発され149キロを記録した。そして初戦は登板をなかった日大三の井上が11日目に登板をすると150キロを記録して奥川に並んだ。
またショートでは花咲徳栄の韮澤雄也が素晴らしい守備を見せ、来年のドラフト候補として注目をされた。しかし、大阪桐蔭の根尾、報徳学園の小園にはまだ差を付けられているように見えた。
しかし、多くの2年生が輝きを放つ中で、最も印象に残ったのは近江のバッテリーだった。投手の林優樹と捕手の有馬諒のバッテリーは、準々決勝まで勝ち上がる。そして迎えた金足農戦、2-1で迎えた9回裏に林が連打と四球でノーアウト満塁のピンチを迎える。スタンドは吉田人気のために金足農の応援が圧倒する異様な雰囲気となっていた。そして相手のスクイズが成功すると同点に追いつかれ、サードがファーストに送球する間にセカンドランナーがホームに飛び込む。有馬が必死に手を伸ばしてタッチをしたが一瞬遅く、奇跡の2ランスクイズと呼ばれるプレーになった。林は茫然とマウンドの前で膝をつき、有馬はホームベース付近でしばらく起き上がれなかった。しかしこのプレーは、「必ず二人を成長させてくれる」と思えた。
華やかな夏の甲子園大会が行われる中、敗れ去った2年生は新チームの最上級生となり、最後の年に向けて動き始めていた。大船渡の佐々木朗希は岩手大会の初戦にシード校の盛岡三と対戦、8,9割の力といいながら150キロを連発する圧巻の投球で最速154キロを記録した。駿河総合の紅林弘太郎は、チームは初戦で敗れたものの186cmの遊撃手として注目されはじめ、スカウトが足を運んでいた。
続く→2019年ドラフト総決算(3)高校生たちのドラフト会議
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