2018年ドラフト総決算(6)社会人の選手達

2018年のドラフト会議、社会人野球でプレーした選手たちが、どのように今年のドラフト会議を迎えたのかのストーリーです。

大学卒2年組

社会人野球からプロ野球のドラフト会議で指名されるのは、大学を卒業して2年目以上の選手、または高校を卒業して3年目以上の選手となる。特に大学を卒業して社会人野球入りした選手は、既に23歳という年齢からのスタートとなり、徐々に年齢が高くなるとドラフト会議で指名される可能性も低くなっていく事から、特に最初の2年間が重要となる。しかし2年という時間は、社会人野球に慣れ、プロへアピールし、進路を決断していくには短い。

2016年のドラフト会議で大学生のドラフト候補だった選手たちは、それぞれ様々な判断をして社会人野球に進む。関西学院大の近本光司は大学1,2年では投手をしていたが、2年のオフに故障やチーム事情などもあり外野手に転向する決断をする。そしてその春にいきなり10盗塁を決めてベストナイン入りをした。チーム一の俊足と評判だったものの、野手転向2年ではプロへのアピールもまだまだで、自分でもプロでやれるという自信は得られず、社会人の大阪ガスに進んだ。その関西学生リーグでは、関西大の吉川峻平が成長を遂げ、4年ではチームのエースとして投げていた。力のある球とコントロールに評価を受けたものの、内に秘めた思いを胸にパナソニックに入社をした。

流通経済大の生田目翼はプロ志望届を提出していた。155キロの速球を投げ、2年の時には大学野球選手権でチームを準優勝導き、実績、能力ともに高い評価を受けた。東京新リーグではドラフトの超目玉と評価された創価大の田中正義とともに注目され、その対戦には多くのメディアも注目をしたほどだった。しかし、生田目は大学4年の春はリーグ戦で登板できず、秋は4試合に登板したものの、足の故障から復帰することは出来なかった。プロ志望届を提出したものの、2位までならプロ入りという高い順位縛りで臨み、指名を受けることはなく日本通運に進んだ。ドラフト会議では田中正義に指名が集まり、壇上で輝くライバルの姿を見ていた。

神奈川リーグでプレーした桐蔭横浜大の高橋拓巳齋藤友貴哉もプロ志望届を提出していた。高橋は左のキレのある球を投げ、ドラフト上位候補にも評され、また齋藤も140キロ後半の速球を投げ、横浜DeNAの2軍を相手に力のある投球を見せていた。しかし高橋は2位以上ならプロ入りという高い順位縛りがあり指名を受けずに日本生命に進み、齋藤は中位から下位で指名される可能性もあったが、結局指名されずにHonda入りする。またリーグでは横浜商大の左澤優も評価を受けていたが、こちらはプロ志望をせずにJX-ENEOSに進んだ。

1年目で輝きを見せたのはパナソニックの吉川だった。吉川は都市対抗の三菱自動車岡崎戦で9回を投げ5安打14三振奪三振で完投勝利を手にする。また日本通運戦では敗れたものの、6回途中まで8つの三振を奪う好投を見せていた。得意のチェンジアップとストレートのコンビネーションが必殺のパターンとなり、面白いように三振が取れるようになった。吉川は秋の日本選手権でも日立製作所から11個の三振を奪って完封し、翌年のドラフト候補として注目されるようになった。台湾で行われたウインターリーグでも三振を奪いまくった吉川だったが、年が明けた1月に、メジャーリーグのダイヤモンドバックスの関係者から声がかかるのだった。

1年目の都市対抗ではHondaの齋藤、日本通運の生田目も力を見せた。ともにリリーフとして短いイニングだったものの、150キロの速球を記録した。生田目はその球威が復活したものの、都市対抗決勝まで勝ち進んだチームで、劣勢の9回に生田目をマウンドに登り、その裏の攻撃に勢いを着けたかった。しかし生田目は制球が安定せず2つの四球が絡んで3失点、悔しさを刻み付ける形となった。

一方、秋の日本選手権では日本生命の高橋が活躍する。ともにリリーフでの登板だったが、JX-ENEOS,大阪ガス、かずさマジック戦で登板し4回前後を自責点0に抑えて3連勝を挙げた。左の社会人筆頭候補として注目される存在となった。

社会人の野手にとっては近年はドラフトで指名される選手がやや少なくなり、厳しい時代になっている。その中で東京ガスの笹川晃平は、浦和学院でU18代表に、また東洋大でも21U代表に選出され、その長打力と強肩をアビールしていた。そして東京ガスでもチームの4番を打ち力を見せていた。しかし、社会人1年目の都市対抗や日本選手権で思うような結果を残せず、2018年にすべてをかける事になる。

高校卒3年組

一方、高校卒組は2015年のドラフトが一つ目の転機となっている。九州国際大付の富山凌雅は甲子園でも登板し、力のある左腕としてプロのスカウトも注目した。しかしプロ志望届を提出したものの指名はなく、名門・トヨタ自動車に進む事になる。一方、土岐商の勝野昌慶は、高校時代に146キロの速球を投げ、県岐阜商でドラフトの超目玉として注目された高橋純平の県内でのライバルといわれた。しかし高橋の速球や力を見て自分はまだまだと感じ、しかし4年間は長く3年間でプロ入りを目指して、準地元の三菱重工名古屋に進む決断をする。ドラフト会議では高橋純平が1位でプロ入りし、プロへの思いをさらに強くした。駿河総合では大きな体から140キロ後半の速球を投げた杉山一樹が、荒削りながらもスケールの大きさを評価され隠し玉候補にも挙がっていた。しかしこちらも社会人で磨くことを決め、三菱重工広島へと進んだ。

社会人野球の3年間というのは、ちょうど良い長さなのかもしれない。1年目は社会人野球のレベルに追いつくための体力づくり、2年目に社会人の大会にデビューして足掛かりを作り、3年目に大きな実績を残してプロ入りする。ホップ、ステップ、ジャンプで計画ができる。その中で特に厳しいといわれる東海地区に身を置いた勝野は高卒1年目で都市対抗でデビューし、その力の高さを証明した。2年目は調子を落として全国の舞台で結果を残せなかったものの、その能力の高さにプロのスカウトが追い続けていた。

そして2018年、いよいよチームの主力して働く番がくる。この1年でどんな投球ができるかで、ドラフトで指名されるかどうかが決まる。

数年待った組

また社会人野球には、その次の進路というものはほぼない。プロに指名されなければ社会人野球を続け、そこでできるだけ長く活躍を続けることを目標にしていくことになるのだが、選手にとっては、いつまでプロを目指すのか、そしてあきらめた時、このまま野球を続けるのか、それとも野球を辞めるのかの決断が必要となる。特に近年は、社会人野球もプロ契約の選手が多くなり、野球部をやめた時にその会社を離れなければならない会社もあり、安定が待っているわけではない。

そんな所に、三菱日立パワーシステムズの奥村政稔、セガサミーの森脇亮介、Honda熊本の荒西祐大、JR東日本の板東湧梧がいた。

その中で奥村は、中津商業時代から力のある球を投げ、九州の名門・九州国際大へ進む。しかし大学を2年で辞めてしまう。三菱重工長崎に拾われ、球速も150キロ近くを投げたが、自分をなかなかコントロールできない状態で、ものすごい球で三振を奪いものの、5連続四球を与えるなど手が付けられないような粗さがあった。それでもその球威にプロのスカウトも注目をしており、ドラフト指名が解禁となってからも毎年名前が挙がり続けていたのだが、23歳、24歳でも声がかからずにいた。そして2016年秋、三菱重工長崎が三菱日立パワーシステムズに統合されると、45人の大所帯のチームとなり、また、地元九州に家族を置いて神奈川で一人で生活を始めた。これが大きな転機となり、2017年の都市対抗ではリリーフで2勝を挙げる。そして社会人5年目となる今年、プロ入りまたは社会人で、これからも野球を続けていくという強い覚悟を示したシーズンで、5月に行われた地元九州での大会でMVPを獲得すると、都市対抗でも1回戦で先発し7回途中まで6三振1失点の好投を見せた。この「今年は違うぞ」という雰囲気をプロのスカウトも感じ取っていた。

セガサミーの森脇亮介、Honda熊本の荒西祐大も、奥村と同じ26歳だった。森脇は塔南高校から日本大に進み東都リーグは2部ながら実績を残していた。そしてセガサミーに進むと、リリーフで150キロ級の速球を見せていた。しかし2013年にドラフト指名解禁となってから毎年ドラフト候補に挙がるものの、今年もダメかというのを繰り返す。1年間を戦って秋を迎え、指名されないという挫折を繰り返す。これほど辛いことはないだろう。それでも森脇はあきらめなかった。

そしてHonda熊本の荒西は玉名工から2011年にHonda熊本に進む。140キロ中盤の速球を投げる右腕で素質も評価されており、3年目にはプロ入りも期待されていたが、なかなか結果が残せない。九州ではJR九州や西部ガスなどのチームがあり、全国の舞台でアピールするのもなかなか難しかった。そして今年、社会人シーズン8年目を迎えていた。いくら高校卒とはいえ26歳。プロからの指名もあきらめざるを得ない年齢となり、社会人野球10年などに目が向くこともあったが、荒西もあきらめなかった。

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