全日本大学野球選手権記念大会は14日、神宮球場で決勝が行われ、関西大(関西学生野球連盟)が慶応大(東京六大学野球連盟)を2―1で破り、1972年以来54年ぶり3度目の頂点に立った。関西学生リーグのチームの優勝は98年の近大以来となる。最速149キロを誇る今秋ドラフト上位候補の左腕・米沢友翔投手(4年・金沢)は、前夜に38.5度の発熱に見舞われながら志願の連投で5回2安打無失点と好投し、最高殊勲選手賞に輝いた。
発熱乗り越えた志願の連投、要所で見せた気迫の直球
米沢友翔投手は13日の準決勝・国学院大戦で5回1失点と試合を作ったが、試合後に38.5度まで発熱し、病院で点滴を受けた。本調子からはほど遠かったが、自ら小田洋一監督に「先発、行かせてください」と申し出る。決勝の朝も体調はすぐれなかったが「ここまで来たら投げるしかない」と腹をくくった。
自慢の直球は大半が140キロ前半と本来のストレートよりも良くなかった。それでも腕を鋭く振り、1回は得点圏に走者を背負いながら146キロの直球で打ち取り無失点に抑える。2回から4回までは安打を許さない投球を見せた。そして5回には1死二塁のピンチを迎えたが、慶大の巧打者・丸田湊斗選手(3年)を145キロの直球で見逃し三振に仕留めるなど2者連続三振で切り抜けた。「気合で投げました」。先発の役割を全うし、5回63球で2番手に後を託した。
レジェンドの教えと、同期との絆
米沢投手は2年夏から約1年間、肩やひじの故障で投げることすらできなかった。寄り添い続けたのが、前回優勝時のエースで、現在は関大アドバイザリースタッフを務める山口高志さん(76)。自身も現役時代に故障に苦しんだ山口さんは、多くのプロ野球選手に連絡を取り、ケアの方法を伝えてくれた。「言い方は悪いのですが、おじいちゃんみたいな存在」と話し、細かな技術よりも立ち居振る舞いを説き、口酸っぱく繰り返したのが「胸を張れ」という言葉だった。その金言をマウンド上での度胸は強くなり、全国の大舞台で頂点に立った。
歓喜の瞬間、マウンドには同学年の中原海晴投手(4年・徳島商)がいた。1点リードの9回無死一、二塁の絶体絶命の場面を3者連続空振り三振でしのいだ。真っ先に駆け寄った米沢投手は涙をこらえた。「中原もけがで苦しんでいた。一緒に練習してきた日々を思い出して、泣きそうになりました」。中原投手2年夏にトミー・ジョン手術を受け、その時にリハビリをしていた米沢投手と共に、苦しい時期を耐えてきた。ともに歩んだ努力が、最高の景色に結実した。
主将と4番のバットで先制、Wエースのリレーで逃げ切り
打線も応えた。4回1死一、二塁、8番・主将の森内大奈内野手(4年・福井工大福井)が慶大の先発右腕・水野敬太投手(3年・札幌南)の外角低めを左前へはじき返し先制。「メンバー、メンバー外関係なく4年生が先頭に立って頑張ってくれた」と仲間に感謝した。5回には4番・山本峻輔外野手(3年・延岡学園)が慶大2番手・広池浩成投手(4年・慶応)の145キロを右中間席へ運ぶソロ本塁打で貴重な追加点。前日の準決勝でサヨナラ打を放った山本投手は「昨日も最高の瞬間だったが、今日も更新できてうれしい」と喜んだ。
米沢投手の後は、来秋ドラフト候補の後輩・百合澤飛投手(3年・開星)が最速151キロの直球を軸に3回1失点でつないだ。8回に小原大和外野手の遊ゴロの間に1点を返されたが、最後は中原投手が締めて1点差を死守。Wエースを擁する投手陣が、半世紀ぶりの栄冠を手繰り寄せた。
「ドラフト1位で行く」遅咲き左腕が放った宣言
米沢投手は4年の今春、準完全試合でリーグ戦初勝利を挙げて一気にブレークした。今大会は5試合中4試合に先発し、計25回を投げて防御率0.72、26奪三振の圧倒的な内容でMVPを受賞した。試合後、山口さんから「ありがとう」と声をかけられると、「これからもお願いします」と返した。
頂点に立ち、その評価は大学ナンバーワン左腕へと上り詰めた。進路について問われると、「ドラフト1位で行くことを考えています」と力強く話した。能登半島地震に見舞われた故郷への思いを胸に腕を振ってきた左腕が、秋のドラフト会議では1位指名を受けて地元に希望を届ける。
【米沢 友翔】 プロフィール
- 氏名: 米沢友翔(よねざわ・ゆうと)
- 所属: 関西大学(4年)
- 出身: 石川県珠洲市(緑丘中の軟式野球部で投手転向、金沢高)
- ポジション: 投手
- 投打: 左投左打
- 身長・体重: 180cm、80kg
- 主な特徴や実績: 最速149キロの直球にスプリット、カーブ、スライダーを織り交ぜる左腕。2年夏からの故障を乗り越え、4年春に準完全試合でリーグ戦初勝利を挙げてブレークした。第75回全日本大学野球選手権では4試合に先発し25回を2失点、防御率0.72、3勝をマークして最高殊勲選手賞に輝き、関大の54年ぶり優勝に貢献。今秋ドラフト1位を見据え、さらなる飛躍が期待される。

















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