浦和学院・小島和哉投手が完全試合、思いを繋ぐ夏の主役へ

高校野球ドラフトニュース 2013年ドラフトニュース

 高校野球埼玉大会、浦和学院・小島和哉投手が完全試合を達成した。最後はライトゴロでの達成となった。

 4回戦の春日部戦で8回までノーヒットノーランを継続しながら、「チームの勝利が大事」と森監督が継投を指示した。この日は8回までパーフェクトを継続したところで、森監督は小島投手に「代わるか?」と聞かれ、最初は「代えて下さい」と答えたと言う。

 しかし監督が再び問うと、「やっぱり投げさせてください」と応えたという。チームの事を考えての最初の返事だったが、森監督の意図を感じ取って自分の思いを表したのだろう。師弟愛を感じるエピソードだ。

 その思いを背負いあがった9回のマウンド、2アウトまで獲り最後となるバッター、伸びのあるストレートで詰まった打球だったが、一二塁間を抜けた。しかし最後まで諦めなかったライトがファーストに送球し、ファーストも素早く戻って送球を待ち構えていた。ライトゴロという劇的なプレーで完全試合を達成した。

 松井投手との対決を望んでいた。ともに出場した関東大会では桐光学園が先に敗れ実現しなかった。6月の九州で行われた招待試合で桐光学園・松井裕樹投手と一緒となり投球について話したという。そして夏の大会前となる7月1日には練習試合が実現、目の前で松井裕樹投手の準完全試合となる1安打完封を見せ付けられた。

 甲子園のマウンドに松井投手の姿は無い。しかし松井投手が2年生で見せた甲子園史上屈指の投球を、今度は2年生の小島和哉投手が見せる番だ。伝統、想いをつないで、夏の甲子園は歴史を重ねていく。その主役になるために、埼玉大会の残り2試合に向かう。

  最大のヤマ場は、最後の最後に待っていた。小島は一人の走者も許さずに、26個のアウトを積み重ねていた。だが、9回2死からの打球が一、二塁間を抜けていく。ああ、ダメか…。誰もが思った瞬間、前進守備を敷いていたライトの斎藤良介(3年)が、猛チャージして一塁に矢のような返球。頭から滑り込んだ打者走者は、まだ数メートルも手前。ため息と歓声が交錯する中、一塁塁審の右手が挙がった。

 埼玉大会史上23年ぶりとなる完全試合は、ライトゴロで完成される珍しい幕切れに。一塁ベースカバーに走っていた小島は、表情を少しだけ緩めただけだった。「結果的にアウトになったけど、ツメの甘さが出た。最後まで気を抜けさせないようにするための神様のイタズラですかね」。パーフェクトどころか、ノーヒットノーランすら初。にもかかわらず反省の弁ばかりが並んだ。

 伏線があった。20日の4回戦(対春日部)。8回まで無安打投球も、「個人の記録よりもチームの勝利」という森士(おさむ)監督(49)の方針で降板を命じられていた。この日も8回を投げ終えた時点で交代を打診され、「代わります」と答えた。だが、指揮官に「本当にそれでいいのか?」と聞かれ、思わず本音が口に出た。「投げさせてください!」。だから、ピシャリと終わらせたかった。

 9回2死。あと一人で完全試合という場面。大記録は、あっと驚くビッグプレーから生まれた。小島が投じた97球目、埼玉平成の代打・小高が放った打球が一、二塁間を抜けた。すると、前進守備を敷いていた右翼・斎藤が猛チャージをかけ、一塁へ送球。「ライトゴロ」にスタンドは沸いた。仲間も興奮していた。

 野球人生初の快挙。しかし、2年生エースは顔色一つ変えない。ガッツポーズもしない。埼玉大会では90年の岡崎淳二(川越商)以来23年ぶり6度目(5人目)の完全試合にも、喜ぶそぶりは見せなかった。理由を問われるとこう言った。  小島「チームが勝ち進むことが大事。次の試合もあるので、気が抜けないようにした。(最後の打者は)意識しないで、いつも通りと思って投げた」

 今春センバツでは全5試合に登板し、42回で3失点。チーム初の全国制覇に貢献した。史上8校目となる春夏甲子園連覇へ向け、迎えた今夏。20日、4回戦の春日部戦では8回までノーヒット投球を演じた。だが9回、救援陣に登板機会を与えるため、森士(おさむ)監督から交代を告げられた。「最後まで投げたい気持ちはあった。少し悔しい」と振り返った。

 再び巡ってきた大記録のチャンス。5日前とは少し違ったエースの姿がそこにはあった。8回終了時、森監督から「(先を見据えて)代わるか」と声を掛けられると、小島は「代わります」と即答した。指揮官は謙虚な姿勢に「びっくりした」という。今度は続投させ、小島も持ち味の内角直球で最後まで押した。9奪三振で快挙達成だ。

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