2019年ドラフト総決算(6)社会人野球の選手たちのドラフト

社会人野球ドラフトニュース 2019年ドラフトニュース

2019年のドラフト会議で、社会人・独立リーグの選手は、投手13名、捕手1名、内野手3名、外野手3名の20人が指名された。ドラフト会議で指名された社会人と独立リーグの選手を、ポジション別にドラフト指名順に並べた。夢を最後まで追い続けた選手たちをストーリーで追います。社会人編です。

2019年ドラフト総決算(4)大学生の主役・・・大学生編
2019年ドラフト総決算(1)高校生の選手達・・・高校生編

2019年ドラフト会議、社会人・独立リーグから指名された選手

 1~2位3~4位5位以下育成
投手河野竜生 NTT西日本
宮川哲 東芝
立野和明 東海理化
太田龍 JR東日本
浜屋将太 三菱日立PS
松岡洸希 BC・武蔵
岡野祐一郎 東芝
鈴木健矢 JX-ENEOS
瀧中瞭太 Honda鈴鹿
上間永遠 四国IL・徳島
長谷川凌汰 BC・新潟
畝 章真 四国・香川
松山真之 BC・富山
捕手  柘植世那 Honda鈴鹿 
内野手小深田大翔 大阪ガス  平間隼人 四国・徳島
樋口龍之介 BC・新潟
外野手佐藤直樹 JR西日本 岸潤一郎 四国IL・徳島加藤壮太 BC・武蔵

社会人野球からの挑戦

今年の初め、社会人の注目選手として名前が挙げられたのは、高校卒3人目の3人の投手だった。立野和明は中部大第一から東海理化に進んだ本格派右腕で、150キロを超す速球を投げ、ドラフト上位候補と評価された。河野竜生は鳴門高校時に甲子園で投げている姿を覚えている。大学ではなく社会人への道を進み、140キロ中盤の速球とコントロールの良さを評価されていた。そしてJR東日本の太田龍はれいめい高校出身、高校時は山本由伸、福岡大大濠の浜地真澄と共に九州3羽ガラスと注目された投手で、190cm近い体のあった太田がスケールでNO.1と言われていた。

まずは彼らと同学年が指名された2016年のドラフト会議を見てみる。この年の高校生は、横浜高の藤平尚真、履正社の寺島成輝、花咲徳栄の左腕・高橋昂也の3人がBIG3と呼ばれ、さらに夏の甲子園で作新学院の今井達也が150キロの球を投げて注目されていた。大学生の田中正義が目玉となる中で、藤平、寺島、今井と単独1位指名が続いたのは記憶に新しい。他にも、江陵の古谷優人、須磨翔風の才木浩人、東海大市原望洋の島孝明など高校生投手が高く評価され、九州3羽ガラスの山本由伸と浜地は4位でそれぞれ指名された。太田龍はプロ志望届を出せば、ドラフト上位指名の可能性もあると言われていた。

また、2016年のドラフトでは、近年では珍しく、プロ入りを辞退する選手がいた。履正社の山口裕次郎は、寺嶋と共に注目された左腕で、履正社は二人で近畿で無双をしていた。ドラフト会議では順位縛りを設け、それ以下であればJR東日本に進むことをプロ側にも伝えており、北海道日本ハムはドラフト6位という順位で指名をしたものの、交渉を進めて円満に入団辞退、JR東日本に進むこととなる。JR東日本は大体大浪商の西田光汰も入団をしており、太田、西田、山口というプロも羨む補強をし、当時、話題となった。

2016ドラフト指名選手

また、大学生出身の社会人選手は、2017年のドラフト会議の候補者だった。2017年のドラフト会議を見てみると、大学生では立命館大の東克樹と明治大の斉藤大将が単独1位指名を受け、中央大の鍬原拓也、岡山商大の近藤弘樹、仙台大の馬場皐輔と5人の投手がドラフト1位指名を受けた年、清宮、安田、村上、中村奨成といった高校生野手が注目された年だった。他にも高橋遥人高橋礼などが指名されたが、全体的には豊作ではないと評価された年だった。しかし、プロ野球ではまず東克樹が1年目に11勝5敗の成績を残して新人王を獲得すると、2019年には高橋礼がパリーグの新人王を獲得している。

上武大の宮川哲もプロ志望届を提出し、ドラフト会議での指名を待っていた。大学では1年生の明治神宮大会から全国の舞台を経験し、その後、毎年のように選手権、明治神宮大会で登板をする。そして大学4年時には最速147キロの速球を投げ、秋のリーグ戦では6勝0敗と結果を残し、指名は確実と見られていた。しかし、順位縛りなどもなにもなかったにもかかわらずどこからも指名されず、不可思議さを残していた。

2017ドラフト指名選手

2017年の社会人野球、さすがに高校卒1年目で、大学卒選手やベテランもそろう社会人野球で活躍する選手はおらず、話は2018年からスタートする。

2018年、社会人野球の開幕を告げる東京スポニチ大会で輝きを放ったのは、パナソニックの片山勢三だった。日本通運戦で2本のホームランを放つと、三菱重工名古屋戦で2試合連続となる3本目のホームランを放つ。フルスイングからの打球はパワフルさを感じさせ、この世代のスラッガー候補として注目をされるようになる。また東芝の宮川は、大学4年時の勢いそのままに、リリーフで登板し140キロ後半の速球を投げ込む。ものの違いを見せつけた。JR東日本では、大きなフォークボールを持つ西田光汰がリリーフとして信頼される投手となり、山口裕次郎は2戦目のHonda熊本戦で先発を任されるなど、期待の高さがうかがえる起用をされていた。

社会人の主役

2018年の都市対抗野球、その年のドラフトで2位指名をされる印象を与えるピッチングを見せたのが三菱重工広島の杉山一樹だったが、それに匹敵する投球を見せたのが、高卒2年目のJR東日本・太田龍だった。初戦となる西濃運輸戦に先発をし2回1/3を投げて1安打2奪三振、JR西日本戦も先発して4回2/3を2安打5奪三振無失点、しかし最も注目されたのは準決勝の大阪ガス戦、近本など勢いに乗る打線を太田は、3回途中から登板すると4回1/3を1安打4奪三振無失点に抑える。150キロに到達したストレートと大きく曲がるフォークボールを見せ、プロの舞台で輝きを見せていた山本由伸に届けというばかりのピッチングを見せた。同期の西田光汰も大きなフォークボールで好投した。

春に活躍したパナソニックの片山勢三は都市対抗でも見せる。チームは敗れたものの初戦のJR東海戦で8回に追い上げを見せるホームランを放った。また野手では遊撃手に注目が集まる。日本通運の諸見里匠は高い守備力と強い打球を見せ、大阪ガスの小深田大翔もショートでの守備を評価され、選球眼の良さに注目された。鷺宮製作所の土谷恵介も1番ショートでヒットを量産する。大阪ガスの近本が大きな輝きを見せる中で、次年度のドラフト候補も輝きを見せた。

2018年のドラフト会議が終わり、社会人野球日本選手権は、そのドラフトで指名された選手がプロ野球ファンから注目をされる舞台であり、また、来年のドラフトに向けて主役としての一歩目となる。その舞台で輝きを放ったのは東海理化の立野和明とJFE西日本の河野竜生だった。立野は日本選手機縁初戦の室蘭シャークス戦に先発すると、延長12回を投げて4安打1失点10奪三振の好投、球速は150キロを記録する。一方、河野は初戦の宮崎梅田学園戦で9回3安打13奪三振完封、そして続く日本生命戦でも9回8安打5奪三振で完封と、2試合連続完封の離れ業をやってのけた。

またこの大会は、ドラフト会議で指名漏れとなり、来年に強い想いを持つ選手のリベンジの場にもなる。Honda鈴鹿の瀧中瞭太は三菱日立パワーシステムズ戦で3番手で登板すると、2回2/3をノーヒット6奪三振という圧巻の投球を見せる。東芝の岡野祐一郎もトヨタ自動車東日本戦で常時140キロ中盤から後半を記録する投球で7回途中4安打6奪三振1失点の好投を見せ、「なんでこの投手が指名されなかったのか」とスカウトに思わせるのと同時に、翌年のドラフトに向けて力強く存在感を見せつけた。

2019年、社会人選手のドラフト

2019年になり、社会人のドラフト候補には、立野、河野、太田の名が挙がっていた。年初の各球団のスカウト会議でも3人を中心にマークしていく方針が伝えられた。

社会人野球の開幕戦、東京スポニチ大会ではドラフト候補となった選手たちの対決となった。東芝vsJFE西日本では岡野と河野が投げ合う。河野は変化球をうまく使ったピッチングにストレートも150キロを記録した。6回を投げて6安打2失点の好投を見せる。しかし上回ったのは岡野、9回を投げて6安打7奪三振完封で、ピッチングはこうやるんだと河野に見せつけるような投球だった。立野が続く。パナソニック戦で先発をすると、9回を投げて5安打13奪三振2失点で完投勝利を挙げた。これらの試合には大勢の球団のスカウトが詰めかけ、この3人の評価はグングンと上った。

またこの大会でもう一人、高校卒3年目の投手がピリッと引き締まる投球を見せていた。三菱日立パワーシステムズの浜屋将太は樟南高校から入団した。球速こそ130キロ台だが見づらいフォームとキレのあるストレートを投げ、今大会ではパナソニック戦で1回2奪三振無失点、東京ガス戦で2回1安打2奪三振無失点、東海理化戦でも1回2安打も無失点に抑える投球を見せた。準決勝の日本新薬戦では5回からロングリリーフを託されたが4回5安打5失点と苦い経験もしたが、スカウトの目にしっかりと焼き付くピッチングを見せた。

一方、パナソニックの片山は昨年のこの大会で見せた爆発力が影を潜め、悩みが続く1年間となってしまう。また、この大会に出場しなかったJR東日本の太田も、3年目の今年は先発してエースとしてのピッチングを期待されたが、長いイニングを投げると3イニング当たりで失点をしてしまう投球が目立った。都市対抗では長いイニングを投げようとしたが、スカウトからは腕が振れてないと評価され、悩みも3年目となってしまう。ドラフト指名を断ってJR東日本に進んだ山口裕次郎は故障をしていた。登板してもなかなかフォームがフィットせず、高校時のような強い球を見せられていなかった。2020年に復活を目指し、ゆっくりと調整を進める決断をした。

都市対抗では、ドラフト候補に挙げられた投手たちが、思うようなピッチングを見せられなかった。チームとして都市対抗出場のできなかった東海理化・立野は、トヨタ自動車の補強選手に選ばれ、初戦の三菱日立パワーシステムズ戦に先発するも4回3失点で降板する。3回戦の日本生命戦でも先発したが4回2/3で6安打3失点だった。JFE西日本の河野も初戦の日本製鉄広畑戦で8回途中2失点とさすがのピッチングだったが、3回戦の東芝戦では3回途中まで4失点し降板をしてしまう。

一方で三菱日立パワーシステムズの浜屋はトヨタ自動車戦でリリーフで登板し、1回2/3をノーヒット4奪三振の見事な投球を見せる。また東芝の宮川哲も球速は150キロを超す球をの投げ込み、JR東日本東北戦で5回途中2失点、準決勝のJFE東日本戦でも5回4安打2失点とまずまずのピッチングを見せた。

前年覇者の大阪ガスは初戦敗退、注目の小深田は5打数1安打で都市対抗の舞台から去る。パナソニックの片山も初戦3打数ノーヒット、2戦目の4打数ノーヒット、準々決勝で2安打を打ったもののホームランを打つことができず、大会後に今年はチーム残留をし、来年、プロ入りに挑戦することを決めた。

その中でJFE西日本の補強されたJR西日本の佐藤直樹は、3番で起用されると初戦に3打数2安打1打点、2戦目も4打数2安打1打点、そして3回戦も4打数2安打1打点と結果を残す。報徳学園時から50m5秒台の足と、遠投120mの強肩に注目されていた選手で、高校卒3年目の若さもありプロの評価が一気に高まるのだった。

ドラフト会議では、JFE西日本の河野と東芝の宮川が外れながら1位指名を受け、立野と太田、浜屋が2位で指名を受けた。野手では大阪ガスの小深田が東北楽天から1位指名を受けると、JR西日本の佐藤が福岡ソフトバンクの1位指名を受ける。結果的に社会人は4人が1位指名されたが、多くが高校卒3年目という若さと伸び代を評価されたものだった。

3位以降になると社会人でプレーした選手は4人だけ、野手は小深田、佐藤、Honda鈴鹿の柘植の3人だけという厳しい結果となった。

2019年、大阪ガス出身の阪神・近本がセリーグの新人記録を塗り替える安打を記録し、またセリーグの盗塁王を獲得して新人王に輝いた。社会人野球の選手はそれだけのポテンシャルを持っている。しかし、高校生の指名が多くなるプロ野球で、その高校生を若い年齢で手放してまで社会人の選手を取るという事が難しくなってきている。正直いって、社会人野手は厳しい状況にある。近本のような高い身体能力と、爆発的な活躍を見せなければ、プロからの指名は難しいといっても過言ではない。

社会人野球に入ったとしても、そのまま親会社に残れるというのは実は多くない。契約社員的な形で、野球ができなくなった時点で会社を離れる、いわゆる「プロ契約」をしている選手も多い。しかも会社の仕事をしながらの選手も多いし、野球で活躍したって年俸が上がるというものでもない。

できれば、プロよりも厳しい環境でプレーする社会人選手に、もっと注目してほしいと、心から思う2019年のドラフトだった。

社会人編(完)

2019年ドラフト会議、指名選手一覧
2019年のドラフト候補
2019年度-社会人投手のドラフト候補リスト
2019年度-社会人捕手のドラフト候補リスト
2019年度-社会人内野手のドラフト候補リスト
2019年度-社会人外野手のドラフト候補リスト

2019年ドラフト総決算(4)大学生の主役・・・大学生編
2019年ドラフト総決算(1)高校生の選手達・・・高校生編
2019年ドラフト総決算(7)~ドラフト10大ニュース~その1

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
ドラフト会議ホームページ2024 Draft home page

コメント