横浜高のエース・織田翔希投手(3年)が、完投で4度目の甲子園切符を手にした。横浜スタジアムで行われた第108回全国高校野球選手権神奈川大会決勝で、横浜が桐光学園を11-1で圧倒。今秋ドラフト1位候補の織田投手は9回2死で自己最速タイの157キロを計測するなど6安打1失点で完投し、2年連続22度目の優勝に導いた。チームは県内公式戦39連勝とし、神奈川県勢初となる4季連続の甲子園出場を成し遂げた。この日は広島・東北楽天・千葉ロッテのスカウトが織田投手を評価した。
準決勝で右脚負傷、それでも「絶対投げたい」と直訴した志願の先発
織田翔希投手は24日の準決勝・慶応戦で右脚に違和感を訴え、無安打無失点のまま7回途中で降板していた。中1日での大一番。村田浩明監督(40)は当初、脚の状態を考慮して2年生左腕・小林鉄三郎投手の先発を一度は決めていた。
しかしエースは「自分の力でチームを勝たせたいという思いがあって志願しました」。前日、村田監督に「絶対に投げたいです」と直訴。指揮官はその思いをくみ取り、「織田が今日行きたいと。ここで織田を使わなければ、監督として今まで育ててきて、経験をさせてきて、たくさんの方々に支えられてきて。よし、織田でいこう、その代わり、いけるところまでいくぞということで、何とか投げきった。本当に織田に感謝しています」(スポーツニッポン)と話し、監督も覚悟を決めて織田投手を起用したことを話した。
初回から155キロ連発、9回2死で自己最速タイ157キロを叩き出す
初回、桐光学園の先頭・黄泰崇選手への4球目に155キロをマークすると、以降も150キロ台の直球を連発。スライダー、フォーク、カット、チェンジアップと変化球も操り、5回まで2安打無失点、4奪三振と桐光学園打線を封じ込めた。
唯一の失点は6回だった。小田倉優真選手、周東希虎選手の連打で無死一、三塁とされ、4番・小杉山健選手を二ゴロ併殺に打ち取った間に1点を返された。今大会17イニング目にして初めて許した失点。世代最強エースから奪った1点に、桐光学園スタンドはこの日一番の盛り上がりを見せた。
しかし、織田投手は試合を圧倒した。11-1で迎えた9回、織田投手はリミッターを外すと、2死から桐光学園の主砲・中澤佳大選手を迎えた打席で、2度の自己最速タイ157キロを含む直球全5球が155キロ以上を計測。一塁内野安打となったが、その際にベースカバーで左足を負傷した。村田監督は「代えるよ」と交代を打診したものの、織田投手は続投を志願。最後は153キロの直球で二ゴロに仕留め、130球目で試合を締めくくった。
号泣のエース「言葉じゃ表せないくらい幸せな時間だった」
最後のアウトを奪った瞬間、織田投手は両手を高々と突き上げて天を仰いだ。マウンドに集まったナインと抱き合い、普段はポーカーフェースのエースの目から涙があふれた。「本当に言葉じゃ表せないくらい幸せな時間だった。まずはこの目標に向かってやってきたので、すごくうれしかった」。県勢初の4季連続甲子園という偉業を成し遂げ、涙の理由を明かした。
この春、チームは崩壊寸前だった。前年王者として臨んだセンバツで初戦敗退。「本当に地獄のような日々だった」と主将・小野舜友内野手(3年)が振り返るほどの苦境を、選手たちは「気愛」という合言葉で乗り越えた。「絶対的な信頼関係」を意味するこの言葉のもと、互いを信じ合うことでチームはまとまり、春の関東大会制覇へとつなげた。織田投手自身も「信頼してもらえるような愛、味方になってもらえるような愛はすごく大事」との思いを胸に、9回を投げ抜いた。
ネット裏には日米8球団のスカウトが集結した。プロ注目の右腕は、課題と言われた精神力でもアピールし、評価をさらに高めた。
広島・高山スカウト:「今日はリラックスして投げている。(引き出しが)見えたね」
東北楽天・部坂スカウト:「以前は球が暴れることがあったけど、コントロールがよくなっている。球の質が違うし、伸びしろがある」
千葉ロッテ・榎アマスカウトグループディレクター:「力感がなくてもスピードを出せるのは天性、持っているものが違う。高校生としては抜けているし、今ドラフトとしても上位に入るトップクラスの素材でしょう」
打線も12安打11得点で援護、頂点は「全国制覇」
打線も初回に先頭の小野選手が右翼線二塁打で出塁して犠打で三塁へ進むと、池田聖摩内野手(3年)の二ゴロの間に先制のホームを踏んだ。2回には2四球と敵失、江坂佳史外野手(3年)の遊ゴロ悪送球に乗じ、2死満塁から小林大雅外野手(2年)の中前2点適時打で一挙3点。4回、6回にも加点し、大量リードの終盤も攻撃の手を緩めず、12安打で11得点を奪った。
「1点でも多く」を貪欲に追求する野球で、この日は9イニングで5犠打を成功させた。神奈川史上最多を更新する22度目の制覇。1998年の松坂大輔氏以来、28年ぶりとなる夏の甲子園制覇へ、王者・横浜の新たな夏が始まる。「喜ぶのは今日まで。全国制覇という目標に向かって全戦全力で、チームのためにどこまでも腕を振りたい」。涙の乾いた織田投手の瞳は、すでに聖地を見据えていた。
【織田 翔希】 プロフィール
- 氏名:織田翔希
- 所属:横浜高校(3年)
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 主な特徴や実績:最速157キロの直球を武器とする今秋ドラフト1位候補の右腕。北九州市立足立中時代は軟式野球部で143キロを計測して注目された。昨春センバツ、2024年の明治神宮大会、24年秋と今春の関東大会を制した実績を持つ。今春センバツでは初戦敗退を喫したが、原点回帰で殻を破り、神奈川大会決勝では準決勝で痛めた右脚を押して先発を志願。9回2死で自己最速タイの157キロを連発し、左足を負傷しながらも130球6安打1失点で完投した。スライダー、フォーク、カット、チェンジアップと多彩な変化球も操り、日米8球団のスカウトが注目する。まだ手にしていない夏の甲子園制覇を目指す。















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