2015年ドラフト総決算~大学生編その2~

2015年ドラフトニュース

2013年、関西学生野球は2年生投手が台頭する。関西学院の宇都宮健太、同志社の柏原史陽、そして立命館の桜井俊貴が、各大学を代表する投手となる。

2013年春

大学野球では多くが土日に1回戦2回戦が行われ1勝1敗の時は月曜日に3戦目が行われる。そのため1戦目に先発する投手は、各大学とも先手必勝を狙うとともに、たとえ2戦目で落としても3戦目に再び先発を任せることができるエースだ。

2012年の関西学生リーグ春の開幕戦、立命大と関西学院大の試合で立命館の先発マウンドに2年生の桜井俊貴が上る。野球の名門ではなかった公立の北須磨高校でプロから注目されていた桜井投手は、大学では全国から集まってくる選手と戦いたいと、野球の名門・立命館に進学していた。そして2年でまずはチームのエース争いを制した。そしてその実力を証明するように、延長15回を一人で投げぬき1失点に抑える。16回は4年生の余語投手が抑えるとチームはその裏にサヨナラ勝利し、チームの先勝に貢献した。桜井は1勝1敗に終わったものの、各チームのエースと投げ合い、防御率1.11の安定したピッチングを見せた。

同志社大、関西学院大でも2年生が今シーズンに2年生がエースをつかむ。序盤はリリーフとして投げ結果を残した同大・柏原投手と関学大・宇都宮投手が直接対決となった4月26日にともに1戦目の先発を任される。この試合は宇都宮が4安打7奪三振で完封し4-0で先勝する。1勝1敗で迎えた3戦目、再び両者が先発すると、宇都宮投手は3安打5奪三振で1失点と好投したが柏原投手が3安打7奪三振で完封し1-0で勝利した。両投手はこれ以降1戦目の先発を任され、宇都宮投手は6勝2敗、防御率0.93でリーグ3位、柏原投手は3勝4敗、防御率1.10でリーグ4位となる。リーグ5位だった桜井投手と並び2年生が台頭した。

東都リーグでも2年生エースが誕生する。駒澤大の2年生・今永昇太投手は140キロ後半を記録するようになると、伸びる速球で6勝2敗を挙げる。王者・亜細亜大との対戦では1戦目に山崎康晃投手と投げ合い4-3で完投勝利を挙げると、3戦目には再び山崎投手と投げ合い今度は完封をして見せた。結果としては連覇を達成した亜細亜大だったが、最後まで優勝争いをする事になる勝ち点を今永投手が奪った。また2年生がもう一人、青学大の吉田正尚は1年生の春・秋に指名打者としてベストナインに選ばれる活躍を見せていたが、今季は打率こそ.222も4本塁打を記録、チャンスに強い打撃で12打点を挙げ、外野手としてベストナインに選ばれた。

東京六大学では立教大の2年生が活躍する。投手の斎藤俊介は立教大のエースとして3勝2敗、防御率1.11を記録、遊撃手の大城滉二は打率.367でリーグ5位の成績を残す。谷田成吾、高山俊、横尾俊建、茂木栄五郎は期待打席に到達したものの2割台で、2年生野手の中で大城が抜き出た。4年生では明治大の関谷亮太が3勝1敗と成績を伸ばし、エース格として活躍していた。

日米大学野球選手権の日本代表メンバーには、明治大の坂本誠志郎と立教大・大城滉二、亜細亜大・藤岡裕大、青学大・吉田正尚の4人が選ばれる。投手では選出されたのは4年生では九共大の大瀬良大地や関谷亮太とともに日本文理大のリリーフ・田中豊樹投手が選ばれた。田中投手は150キロ前後の重い速球を投げるリリーフだった。

日米大学野球では関谷亮太がブレークする。3戦目の先発に起用された関谷は、7回途中11奪三振で2失点に抑える好投を見せると、優勝をかけた5戦目は2番手投手として4回から登板し、5イニングを2安打6奪三振1失点と好投し大会のMVPを獲得した。2年生では吉田と藤岡がライトとサードのレギュラーとして起用されたものの、結果を残すことはできずレベルの高さを感じる事ができた大会でもあった。

2013年秋

秋、東都リーグの2年生、今永、吉田、藤岡、北村は春の活躍から一転、疲労などもあり成績は下がっていた。そんな中でショートでは国学院大の柴田竜拓がベストナインに選ばれる。堅実な守備とともに打撃でも安定感を見せ始めていた。青学大の4年生・杉本裕太郎は2本塁打に打率.333でリーグ3位の結果を残しベストナインに選ばれた。

東京六大学でも早大の吉永は2勝4敗と結果を起こせず、迷いの中で徐々にフォームが変わっていくのが分かった。一方、大城滉二は秋もさらに成績を伸ばす。20安打放ち打率も.373を記録、リーグ3位の結果を残す。リーグ通算100安打はもちろん、通算安打記録更新の可能性がささやかれたのは最初は大城選手だった。そして明治大の上原健太も力を見せる。主にリリーフとして登板すると150キロを記録した速球を投げ込み、スカウトを驚かせた。リリーフながら規定回数に到達すると、防御率0.88で、広陵高の先輩・有原航平投手に次ぐリーグ2位の成績を収めた。

明治神宮大会は王者・亜細亜大が優勝する。1番・藤岡、2番・北村も優勝に貢献した。この大会ではほかにも活躍を見せた選手がいる。秋のリーグ戦も5勝1敗を上げた関西学院大のエース・宇都宮投手は、1回戦の中学院大戦で9回16奪三振で無失点と好投する。タイブレークとなった10回に野間峻祥選手のヒット、上西主起選手の3ランで5点を失ったが、プロのスカウトが今後追いかけるのに十分の投球を見せた。

久々の明治神宮大会出場となった大商大はエースの近藤大亮投手がエースとして活躍、1回戦では9回6安打11奪三振1失点と好投し勝利に貢献する。捕手は桂依央利、そして2年生の吉持亮汰が不動の1番に座っていた。

前年覇者はエースの小野和博が調子を落とし、代わってエースとなっていた横山弘樹が、野間峻祥の中部学院大戦に先発する。横山は3回で6安打3失点と結果を残せず大学野球での活躍を誓う。また明治大の関谷亮太も日米野球で輝きを見せたピッチングが見せられず、JR東日本での成長を誓う。

 

2014年春

大学3年生を迎える。選手はドラフト会議を翌年に控え、そろそろプロを意識し始める。しかし大学4年間は短いようで長い。

早稲田大はリーグ戦前、アメリカでのキャンプを実施すると発表した。しかし、キャンプメンバーの中に吉永健太朗の名前はなかった。調子の上がらない吉永は日本で調整を続ける。苦しみの中にいた。その東京六大学は慶応大が優勝、打率.320に4本塁打を放ちホームラン王となった谷田成吾、打率3割以上を記録した横尾が主軸を打っていた。日大三出身のほかの野手も成長を見せる。高山は打率.339を記録しリーグ7位に、法政大の畔上も打率.333を記録しリーグ8位に入る。大城、茂木、坂本も打率3割以上を記録しベスト20に入る。3年生となった野手たちは好調だった。

東都では亜細亜大がまた連覇を伸ばす。藤岡、北村の打撃成績は良くなかったものの、チームに貢献するプレーを見せると、板山祐太郎が2本塁打に打率.333を記録しリーグ5位となった。国学院大の柴田、青学大吉田も打率3割以上をキープし、チームに欠かせない存在となっている。また駒澤大の今永昇太は4勝1敗、防御率は0.87を記録しついにリーグトップの投手となった。

関西学生リーグでは3年生たちの状態に差が表れる。立命大の桜井俊貴はエースとして6勝0敗を記録、特に11試合、92回1/3に登板そていろ、イニング数で2番目の関西大・石田光宏より23イニングも多く投げていた。それでも大学野球選手権でも活躍を見せ、タフな右腕としてプロが注目する。一方、関学大の宇都宮は故障で投球イニングが減った。また同志社大・柏原も3勝3敗だったが徐々に球の勢いがなくなっていた。

大学野球選手権では慶応大、亜細亜大が初戦で敗れる波乱があり混迷となった。また富士大の多和田真三郎も好投をしたものの福岡大に0-1で敗れ初戦で姿を消す。桜井の立命館も2回戦で姿を消した。その中で新たに力を見せたのが仙台大の熊原健人と東海大の吉田侑樹だった。

この春の仙台六大学リーグはし烈だった。優勝争いで東北福祉大、東北学院大、仙台大が並び、3つどもえのプレーオフが行われ、熊原投手が2試合連続完投勝利を挙げて大学野球初出場を決めた。その仙台大は富士大を破った福岡大戦で熊原、唐仁原の投げ合いを制し勝ち上がる。続く神奈川大戦では敗れたが堂々のピッチングを見せていた。

優勝したの東海大だった。猿川拓朗などが抜けてエース不在と呼ばれる中での春のリーグ戦で、5勝0敗の成績を残しチームを優勝させた右腕は、大学野球選手権でも準決勝、決勝で好投して全国の頂点に立った。ハーレムベースボールウィークに出場した侍ジャパン大学代表でも吉田は、アメリカとの初戦で7回1アウトまでノーヒットノーランを継続する圧巻のピッチングを見せた。谷田成吾選手はチーム唯一のホームランを放ち、茂木、柴田、坂本、北村、畔上、吉田といった3年生中心の野手が力を見せていた。

 

2014年秋

秋になり東京六大学のライバルたちの戦いは激しさを増し、その中で輝かしい成績を残す選手が出てきた。高山俊、大城滉二、畔上翔、谷田成吾が打撃ベスト10入りする中で打率.404でリーグ2位に入ったのが早稲田大の重信慎之介、そして打率.514で首位打者となったのは同じく早稲田の茂木栄五郎だった。盗塁でも重信が7盗塁を決めたが、大城滉二が9盗塁を挙げ、ホームランでは高山、谷田、横尾が3本塁打で並んだ。そして高山俊は3年秋でリーグ通算100安打を記録し、記録更新がいよいよ現実的となっていく。

リーグ制覇をしたのは明治大、上原健太はリリーフとして調子を上げると終盤は先発として登板し、防御率0.96と最優秀防御率に輝いた。

東都では駒大の今永が突き抜ける。リーグ戦で7勝を記録しチームを優勝に導くと明治神宮大会でも先発、リリーフに好投を見せて優勝を果たす。これでケガでもない限り来年のドラフト1位は確定的と評価されるに至った。

亜大の藤岡裕大は3本塁打に打率.380で首位打者となったものの、ついに連覇を途切れてしまう。また青学大の吉田は3本塁打を放ち打率.352と個人成績はこれまでで最高で4度目のベストナインに選ばれたものの、チームは最下位となり入れ替え戦でも敗れ来春の2部降格が決まった。プロ入りに向けて大切な4年生春のシーズンを、2部でプレーしなければならなくなってしまう。

駒澤大が優勝した明治神宮大会では東農大北海道の井口和朋投手が力を見せる。同じチームの風張蓮投手、玉井大翔投手が注目される中で好投し、プロのスカウトも注目する存在となっていた。

 

ここへきて調子を上げてくる者、また調子を落とすものがあられて、大学生のドラフト戦線はサバイバルの状態となっていった。そしていよいよドラフト最終年度がスタートする。

 

2015年春

春の東京六大学リーグ戦、早稲田大の丸子と茂木の打撃が止まらない。広陵高校でスラッガーとして期待されていた丸子選手は大学ではここまで3年間で15試合の出場しかない。しかし今年就任した高橋監督は丸子に自信をつけさせると、その打撃が一気に開花する。打率.438を記録し首位打者に上り詰めた。また茂木も新たな可能性が開花する。打率は.390で秋に続きハイアベレージを記録したが、なんと5本塁打を放ちホームラン王となった。長打力の可能性を広げプロのスカウトのアピールをしていく。

しかしこの春のシーズンはプロ入りを目指す選手にとってはプレッシャーとの闘いとなる。慶大の谷田成吾は打率1割台に低迷、高山とともにリーグ通算安打記録更新の期待もかかっていた大城滉二も打率.200に終わった。またプロ入りできない場合は野球をやめる覚悟で臨んでいた法大の畔上翔も打率1割台に低迷、結局このシーズンの成績が結果的にプロ入りの可否につながってしまう。

その中で、リーグ新記録のプレッシャーもかかった高山俊は、今季も17安打を記録し秋のリーグ記録更新を確実なものとしていた。精神的な強さも見せプロのスカウトはドラフト1位間違いなしの評価をした。

東都大学では激震が走っていた。リーグを代表するエースで、ドラフト1位確実と評価されていた駒大の今永昇太が、左肩の故障によりリーグ戦前に離脱、復帰の予定が何度も報じられては消える状態で、故障の重さも測りかねる状態だった。結局春のリーグ戦での登板はなく、決まっていた侍ジャパン大学代表も辞退する。今永のピッチングを見られるのは秋のリーグ戦まで持ち越しとなる。

明治大の上原健太は覚醒が期待されていたものの、先発のマウンドでは結果を残せず、ピリッとしないピッチングが続く。また大学野球選手権でも東海大の吉田侑樹が不調となり、リーグ戦では好投していた富士大の多和田真三郎も肩痛で大学野球選手権では登板を回避した。吉永をはじめ期待していた投手が不安を抱え、即戦力投手の獲得を目指していた球団のスカウトは、焦る展開へとなっていった。しかしその中でスカウトは新たな逸材を見つける。大商大の岡田明丈だった。

岡田は3年生の春までは目立った実績がなかったが、3年秋から140キロ後半の速球を見せ始めると、春はリーグ戦で6勝0敗、防御率0.40を記録する。そして夏の試合で最速も153キロを記録すると、大学野球選手権でも好投を見せた。上昇カーブを描く岡田投手にプロのスカウトは期待を寄せた。

 

ユニバーシアードに出場する侍ジャパン大学代表は、プロの若手と壮行試合を行った。この試合では青学大の吉田が4番に座ると、高橋光成からライトスタンド中段にホームランを放つ。また守備でもバックホームやダイビングキャッチなど好プレーを連発した。また侍ジャパンU18代表との試合ではプロ注目の上野翔太郎と高橋樹也から2本塁打を記録し、ドラフト1位を確実なものにした。

秋の東京六大学は春に調子を落としていた谷田が3試合連続のホームランを放つなど5本塁打を記録した。また横尾俊建も5本塁打を記録すると、畔上翔は23安打を放ち打率.404を記録してリーグ2位となった。そして高山俊はあっさりと通算安打記録を更新していく。当てる打撃となっていたのは仕方ないがリーグ3位の打率を残した。首位打者となったのは重信で7盗塁も記録し盗塁王にも輝いた。

東都ではシーズン中盤から今永昇太が復活の投球を見せるが、昨年の状態にはまだまだという状況だった。このピッチングに一抹の不安を持った球団は、高校生とともに新たな大学生投手の候補へとシフトしていく。

その候補となったのが秋も5勝を記録した大商大の岡田明丈と、立命館大の桜井俊貴投手だった。桜井投手は10月の関西大との試合で延長14回206球を投げ12奪三振1失点、球速は大台となる150キロを記録、このピッチングを見たスカウトは、ドラフト1位間違いなしの評価を下した。

 

ドラフト

ドラフト会議では指名がばらけた。埼玉西武が富士大の多和田真三郎を、横浜DeNAが駒大の今永昇太を、それぞれ故障の不安を抱えていたものの早くから狙っていた投手を指名した。またオリックスは野手の目玉・吉田正尚の1位指名を早々と公表し単独1位指名で獲得した。

広島はずっと追い続けていた上原健太を回避し、1年間で急成長した岡田明丈を指名、巨人は急激に評価が挙がった桜井俊貴を1位指名した。上原は高校生を外した北海道日本ハムが外れ外れ1位で指名をした。

大学生の目玉は高山俊だった。東京ヤクルトが1位指名を公表していたが、ドラフト当日に阪神も指名し抽選の結果、阪神が獲得する。ヤクルトは東都2部でエースの活躍をしていた東洋大・原樹理を1位指名した。

競い合ったライバルたちもプロ入りを決める。2位では大商大の吉持亮汰を筆頭に明治の坂本、早稲田の重信が、3位で立教の大城、国学院の柴田、早稲田の茂木が指名される。日大三の優勝メンバーだった横尾は北海道日本ハムが6位で指名したものの、法政の畔上翔の指名はなかった。また秋に5本塁打を放った谷田成吾の指名もなかった。

仙台大の熊原健人はドラフト1位候補に挙がり横浜DeNAの2位指名、仙台六大学で競い合った東北福祉大の佐藤優は中日が高く評価し2位で指名した。多和田を単独1位指名した西武は2位で川越誠司を指名する。東農大北海道の井口は日本ハムが3位で指名と、中央の大学生に負けないほど地方からも上位で指名されていった。

 

2011年のあの日に4年後のプロ入りを誓った日大三の優勝メンバー5人のうち、プロ入りしたのは高山俊と横尾俊建だけだった。吉永健太朗と鈴木貴弘はJR東日本でまたバッテリーを組み、悔しい指名漏れとなった畔上翔はホンダ鈴鹿で2年後を目指す。

また亜細亜大で4年間8季で6度の優勝を果たした北村祥治と藤岡裕大は、ともにトヨタ自動車でプレーする。長かった4年間の生き残り競争が終わり、また新たな場で戦いを続けていく。

2015年大学生編 ~完~

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